315: 【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ3 (313)
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315: 【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ3 (313)

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1 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/04/08(金) 04:36:31.50 ID:Qk6jaXPx

 ロールプレイ(=想像上のある役柄を演じる事)によりストーリーを進める一種のリレー小説です。
(スレッドタイトルにTRPGとありますが、ダイスを振る本来のテーブルトークRPGとは異なります)
文章表現にはこだわりません。台本風(台詞とト書きによるもの)も可。重要なのは臨場感……かと。
なな板時代の過去スレが存在しますが、ここは創作板。なりきるのはストーリー内のみとします。
プレイヤー(=PL)はここが全年齢対象板であることを意識してください。過度な残虐表現も控えること。

過去スレ
【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ
http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1454123717/

【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ2
http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1457645564/

【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ3



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外国語アレルギーの方に朗報!
2ちゃブで外国語を楽しく学ぼう!





144 ライアン </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/09(土) 14:46:31.46 ID:XmPvXpZ2

控えの大間では無い。
彼を取り囲むようにして張られた7つの……おそらく結界の類。淡い燐光に似た白紫の光が、静かに辺りを照らしている。
浮かび上がるは堅牢なる柱の数々、壁と天井に描かれし美しき絵紋様。

「ここは……?」

自らの発した声はしかし、地の底から湧き上がる「声」にかき消された。
一体何処から入ってきたのか、一刻も早く出ていくがいい。紛れもない、「魔物」の発する伝令の声。
魔界の入り口にでも迷い込んだのだろうと、彼は数ある短剣のひとつを掴んだ。
フサルクのひとつ、「ウルズ = uruz 」(英字のU)の文字が刻まれた剣。
それは真っ向から闘う意思の表明。

「……ふむ」
結界の向こう側。その声音は今や……人間らしき感情を伴っていた。
「……ルーンの正統よ。……取るべきは『ライド = raido 』(英字のR)の剣ではないのかね……?」

「……貴方は……賢人か!?」
一振りの剣を取り出した、ただそれだけでこの血筋を当て、おそらくは他に帯びる剣の特性を理解し得る。
賢者は一を見、百を知ると云う。
「我が名はライアン、御名をお聞かせ願いたい」

答えはない。名だたる賢者ともなると、気を許す相手にしか名乗らぬのだろう。
剣を替えようとローブを翻したその時、足元に短剣がひとつ、落ちているのに気づいた。
刀身に黒い汚れ。血の染みだろう。何気なく拾い、懐に仕舞う。

≪ ライド = raido ≫

移動と変化を象る剣が、その役目を果たした。

村の中央に位置する広場のざわめきが、さざ波となって耳に届く。
湯煙りの立つ噴水の湯面が、負傷者の血で真っ赤に染まっていた。西の空には気味の悪い赤い月が、ゆらりと沈む最中だった。

もしや……と彼は思う。
あの月が……鍵なのではと。
あのゲートとあの場所を繋ぐ……いや、そもそもこの大陸には何か……とてつもない秘密が隠されているのではないか。
各地を旅し、各国に置かれる巨大な建造物が……ひとつの結界となっていると聞いたのはいつだったか。
この闘技場と繋がるは何処なのか、それが祖国を復興する鍵とはならぬだろうか。

村を出てすぐに、師の一団と別れた。
各国の要所を訪ねるために。あの賢人の居場所が何処か……突き止めるために。

145 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/09(土) 14:57:58.23 ID:XmPvXpZ2

夕食を済ませた俺達は、思い思いの場所で休むことにした。
奥の間のベットに横たわるシオの隣りはリリスが占領。
ベリル姐さんはふらっと外に出かけ、その後をルカインがくっついて行った。――そう! 何故か居るんだよ奴が!
ま、それは置いといて、祖父ちゃんは作業場で一服。
俺は……噴水の縁に腰かけ、一人物思いにふけっていた。

久しぶりに静かな夜だった。
剣を打ち合う剣闘士達で賑わっていた広場も、今日はいつになくひっそりと静まり返っている。
噴水の水音が小さい滝みたいな水音を立てていて、それがかえって静けさを際立たせている、そんな感じ。
フクロウの鳴き声と狼の遠吠えを子守唄代わりに育った俺としては……ちょっと寂しい。物足りない。
時折水圧が上がるのか、跳ねる湯しぶきが顔にかかった。今日はいつもより熱めだ。
……そう言えば、王都に来てから一度も水を浴びてない。
要塞は近くに川が流れてて、水浴びには困らなかった。……誰もいないし……入っちゃおうかな。

革と金属製の重いベルトを外して、背中の剣を地面に置いた。この剣も、ぜんぜん使わなかったなあ。
脱いだズボンと上着を広げてみると、砂と血ですっかり汚れていた。――そうだ! これもついでに洗っちゃえ!

お湯の中で服をバチャバチャやりながら身体を泳がせていると、いきなり上から声を掛けられた。
「何やってる」
――おどろいた……居るなら居るって言ってよライアン!!

「いつから……居たの?」
「お前が脱ぎ出した時から」
うそ……もしかして……見た?
「お前……案外でかいな」
何が!? てか案外ってなに!? 父さんにしか見られたこと無いのに!!
お湯の中に顔を突っ込んで一人悶絶していると、ザブンと音がして水が揺れた。
「いい湯殿だ」
――おーい! 誰が一緒に入っていいって言った!?
俺の咎める視線などそっちのけ。頭と顔を何度も湯につけてバシャバシャやりだすライアン。
そういやライアンの裸って初めて見るけど、肩付きとか腹筋とか……とにかくすっごく鍛えられてて格好いい。
剣士って……

「なに見てる」
目だけを水から出して眺めてる俺の視線に気づいた彼が、疑惑の目を向けた。
「お前……その気があるのか?」
―――――――――――――――ぶはっ! ごぼごぼ!!!!!! 
「あわてるな。冗談だ」
……鼻に入った水が沁みる~~!! ……あんたが言うと冗談に聞こえないよ!!

苦しくなった俺はお湯から上がった。
呪文を唱える。吹き荒れる熱風が瞬く間に身体と衣服を乾かした。
「魔法って……便利だな」
ライアンもちゃっかり服を広げて俺の後ろで乾いてたり。そんな俺達、かな~り無防備だったに違いない。

―――――キャアアアアアアア!!!!!!

絹を裂くよな女の悲鳴。俺は慌てて前と後ろを隠した。
声の主はというと……両手で顔を隠して……その隙間からしっかりお約束通り見てたり。
で?
――ええっと……君、誰だっけ?

146 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/13(水) 06:23:25.27 ID:LTGL5oEW

ざっと100人は収容可能であろう……白い大理石の壁が取り囲む王の寝室に窓は無い。
4隅に立つ衛兵はすべて女だ。チラとこちらを一瞥し、剣を手にしたまま動かない。
中央に設えられた天蓋付きの寝台にそっと近づく。
薄い天幕越しに眼を凝らすと、王が身体を起こす最中(さなか)だった。
天幕越しに伝わる微かな熱気。王の熱は引いていない。今夜も……まともにお相手すべきではあるまい。

寝台脇に膝をつき加減を覗う。
変わりはない、と返すその声音に患いの陰りを微塵も感じさせず。
招きに応じ、天幕の合わせ目をそっと開く。
艶のある美しい黒髪が静かに流れ、蒼く澄んだ瞳がこちらを見た。
手に取る王の手は熱い。唇に触れる手の甲も……じっとりと汗ばんでいる。
今夜も……差し障らぬ話で夜を明かすか。
しかし……今夜こそは命を全うするようにと。ラファエルも……王を癒すが貴様の責務だと。

意を決して天幕を潜(くぐ)った。
王の首元に手を伸ばすと、熱い吐息がその口から洩れる。
シルクの夜着の前合わせをほどき、そのほっそりとした白い肩と首筋に触れる。
細い腰は手を回しただけで折れてしまいそうだ。この王が……この大国を統べ、支えているのだ。
早鐘を打つ鼓動。
褥(しとね)を共にした相手は千を超える。だが……さすがに一国の王を相手にした事はない。

――さて……

147 アルカナン国王 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/13(水) 06:26:52.41 ID:LTGL5oEW

扉を開け、その身を滑らせるように入ってきた影。懲りずにビショップが寄越したか。
ヒタリとも音を立てず、ただ衣擦れの音のみを立て近づくのは誰か、見ずとも解る。
熱に浮かされた身体を起こし、そのままの姿勢でその人影を見やる。

「我が……愛しの女王。お加減はいかがか」

‘陛下’ではなく‘女王(クイーン)’。エルフ族の……人に傅かぬ性質(たち)ゆえか。
「気に病むな。変わりはない」
左腕をのばし、彼を招く。
膝をつきこちらを見上げる両の眼が、薄明かりの中で豹のごとく青白い光を放つ。
相も変わらず……恐ろしい眼よ。だが美しい。もと騎士とは思えぬ優雅な仕草で寝台に腰をかける男。
黄金の髪に縁取られた端正な顔立ち、均整の取れた肢体に薄物のみを纏った妖艶なるその姿。まことの……エルフよな。

差し出した手の甲に、そっと口づける手慣れた仕草。
ギシリと鳴る寝台の発条(ばね)。ハラリと敷き布に落ちる長い髪。フワリと舞う緑葉の芳香。
――ついにその気になったか……? ‘女’を知りつくしたその手連、今宵こそ見届けられようか。
男とは思えぬ繊細な指が、胸元の組紐にかかる。紐が絹独特の音を立てスルリとほどけ、徐々に前の合わせが解かれていく。
その隙間に差し入れる手指が、這うように脇を通り背に抜けた。
露わとなった両の肩、首元の窪みに触れる吐息と……唇の感触が、鳥肌が立つほどに心地よい。

廊下を行き交う靴音。
この部屋から人の気配が絶えることはない。
隅に立つ衛兵も、ドア向こうからこちらを覗うビショップも、その役目を怠ることはない。
わらわに……王たる我に私生活(プライバシー)など存在しない。

「何度目だ」
夜ごと口にする悪戯な問い。大概の男は口を濁す。しかしこの男は――
「千飛び九度目かと記憶致します」
思わず口元が綻(ほころ)ぶ。出鱈目か。本当に数え、覚えているのか。
「その相手、女だけか」
我ならずとも返すであろう。何処まで数に入れているのか疑いたくもなる。
現に男の喉笛に残る赤い痣。微かに香る香(こう)の残り香。我はこの匂いを知っている。
邪教とは言われながらも密かな信者も多い……あの礼拝堂にて炊きしめる香だ。
この王城で知られるその信者とは……かの親衛隊長ただ一人。

……心地よい風と体内を駆け抜ける命の奔流が身を襲う。
かと思えば……このまま夜を明かすつもりか……? 
なかなかに要所を攻めぬこの男。この身を鉄壁の要塞にでも身立てているのではあるまいか。
いい加減に来ぬのなら……こちらから出向くが……?

148 ビショップ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/13(水) 06:30:13.70 ID:LTGL5oEW

夜が更けた。不寝番の兵士が欠伸を噛み殺している。
不意に、窓辺にて騒ぐ鴉が音を立てて飛び去った。ドア前に立つ兵士を押しやり、扉を叩く。返事はない。
良い具合にラファエルが通りかかった。……いやこのタイミングの良さ。もともと近くに居たのだろう。
胸騒ぎを覚えたのは彼も同じらしい。息を合わせ扉を押した。

開け放った扉の向こう、隅に立っていたはずの兵士はみな眠るように倒れている。
「陛下!!」
ラファエルの大いなる声量が天蓋の吊り糸を震わせた。物憂げに返事をする王の声。
胸を撫で下ろし寝台に近づく。
寝台の上には一糸纏わぬ王の姿。それを隠そうともせず天幕を横に引いた王の頬が上気している。

「済まぬが、これを運んでくれぬか」
王が目で指すその先には、これまた一糸纏わぬシャドウ。
命の限りを吸い尽くされたか……役目を果たしたその顔は安らかだ。僅かに胸が上下している。
無様とも取れる姿だが、これはこれでいつもの事。今まで差し向けた男はみな……気を失うか或いは――

ラファエルが腹を抱えて笑いだした。
その声に気づいたか、王の気に当てられ倒れていた兵士達が慌てふためいてその身を起こした。これもまたいつもの事。
「百戦錬磨のエルフをして玉砕せしめるとは流石は陛下!!」
未だ笑いを堪えながらも、ラファエルが軽々とシャドウを抱き、肩に担いだ。
流石にそのままでは気の毒だ。脱ぎ捨てられていたガウンを掛けてやる。

まずはこれで一つ。

王が手早く衣を身につけている。生命力が漲(みなぎ)る溌剌とした動作。お力が戻られた証拠だ。
「ビショップ。少し休め」
言われてみれば三日三晩寝ていない。この青い石の助力にも限度があろうことを、王は見抜いておられる。
「仰せのままに」
一礼し、ラファエルと共に部屋を出る。

「ラファエル。ヴァイス(白)のことだが……」
大股で歩くラファエルは何時になく機嫌がいい。首を巡らせ自分を見下ろす目がニッと笑う。
「ルークを攻めろ、であろう?」
「いや。ルーク(要塞)は後だ。キング(皇子)を動かす」
要領を得た、という顔で頷く親衛隊の隊長は、今度は声を上げて朗らかに笑った。
ビショップの私室の前で足を止め、扉を顎でさす。陛下の仰せどおり休めと言っているのだ。
王の身を案ずる者同士、初めて気が通じた。そんな思いが過(よぎ)る。
無骨な軍人、と今の今までまともに取り合わなかったが……この男。慕う部下も多いか……なるほど。

149 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/13(水) 06:32:00.38 ID:LTGL5oEW

「来ちゃった」

ペロっと舌を出して肩をすくめる大人びた女性。銀色の長い髪に青い瞳。……ええっと……
「エレン?」
何とか記憶を呼び覚ました俺に、エレンがガバっと抱きついた。
ちょちょちょちょちょっと!! どうしてここが!? つか俺いまハダカ!!

「ほお~~……隅に置けないな」
……いつの間にかしっかり服着たライアンが物知り顔で頷いた。
「違うよ。この人はほら……あの時の娼館で一緒に……」
「知ってる。お前の筆おろしを買って出た……お前に取っちゃ思い出の女(ひと)だろう」
「違う違う! な~んにもしてない!」
何故に俺が童テーって知ってんの!? 筆(ピー)とか女の人の前で言う……?
「やらなかったのか?」
「やってない!」
「触っただけか」
「触ってない! 誓って指一本触れてない!」
ブンブン首を横に振る俺を、まるで別の生き物でも見る目で見るライアン。

「それ。この人に対する冒涜だぞ。有り金使い果たした私の身にもなってみろ」
「知らないよそんな事! だいたい父さんが酷い目に遭ってるかも知れないってのに、そんな気になれないよ!」
「そ~かなあ。女ったらしのエルフって聞くわ。今頃若くて美しい女王様とよろしくやってるかも知れないわよ?」
「んな訳ないだろ! 軍隊の拷問ってそりゃもう酷いって……え?」
思わずエレンの顔を見た。――いつの間にか会話に参加してたその事より何より……
「エレン! どうして父さんのこと!?」
「やっぱりね。だと思ったわ」
……エレン。君……引っかけたね?
そういやこの人、俺に一服盛ったっけ。フツフツと沸く怒りを何とかこらえる。
そんな俺の二の腕をライアンが小突いた。
「お前、いい加減服着たら?」

―――――――――――――――――うわわわ忘れてた!!

150 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/15(金) 17:49:30.23 ID:WdfcAoJY

「もっと堂々としたらどうだ」
噴水の向こう側に回り込んでズボンを履きはじめた俺に、ライアンが声をかける。
「彼女はそんなもの、見慣れてるぞ。畑に群をなして立ち並ぶモロコシの穂先、くらいにしか思ってないぞ」
……なにそれ。いいからほっといてよ。
と……ん? ……あれ? 置いといた剣がない。
「お前の剣、凄いな」
「――ちょ…… 勝手に抜くなよ!」

近づこうとして足が止まった。ライアンが……剣の切っ先をこっちに向けていたからだ。
あの剣。実はそんじょそこらの剣じゃない。
一般に出回ってる――単純に型に流して作った剣とぜんぜん違う。何でもものすご~~~~く複雑な工程を……って……
説明の途中で頭が痛くなったんで最後まで聞かなかったけど。

――チャキ……! 

ライアンが腕を引いて柄を握り直した。
「気をつけろ。下手にぶっ叩けば……ここんとこにガタがくるぞ」
「……なんで?」
「柄の中で刀身が浮いてるからだ。それを支えるただ一本の釘が、緩むか折れるかしたらどうなるか、想像してみろ」
へえ……ふーん……。

風を切る音。
水平に振られた刀身が、流れ落ちる水を掠めて銀色の飛沫(しぶき)を放った。
「重心も切れ味も……俺達の剣とはまるで違う。何故ホンダは、これほどまでに扱い難いものをお前に……?」
「んー……‘形見’とか言ってたけど」
「そうか。それにしても……」

うっとりとした表情で剣の腹(正式にはシノギと言うらしい)を撫でてるライアン。
……放っておいたらヨダレ垂らして頬ずりしそう。もしかしてライアン。刃物マニア……てか……ふぇち?
でも本当に危ない人は他にいた。

「その……刀(かたな)……」

……魔女がほんとにいたらこんな声だろう。
ぞくっとして振り向いた。……エレン? 今の声、ほんとにエレン?

エレンの青い目が、ライアンの持つ剣だけを見つめていた。彼女の右手がピタリと剣を指す。
まるで金縛りにあったように動かないライアン。その手に握る柄の頭から……ポタリと落ちる血の雫(しずく)。
え?
目を凝らしても、ライアンが怪我を負ってる風はない。……その目が……空(くう)を見つめてる。
――どうしちゃったの? ライアン!

『その刃(やいば)は鏡。己の深淵を覗き見る深き淵……』
直接脳に語りかける……声? 言葉? 

『声でも言葉でもない。あたしの‘思念’』
エレン……きみ……って……

エレンがライアンの手から滑り落ちた剣を片手で受け止め、俺に差し出した。
ズシリとした手応え。……この剣、何だか前より……

『ふふ……』

青い眼がこっちを見た。人間の眼じゃなかった。

『あたしはアナタの……味方じゃない。次に遭うときは……本当の敵……』

風が吹いた。
ライアンの身体がグラリと傾く。遠くなる意識の中で、エレンの声だけがエコーのように響いていた。

151 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/15(金) 17:49:59.56 ID:WdfcAoJY

「ルーク君! ちょっと! ルーク君!!」

――――痛たたた!!! ……え? 
眼の前に紫の髪をした女性(おっぱいでっかい!)と……10歳くらいの超~可愛い女の子。
――あれ?
ヒリヒリする顔を押さえながら……ぼんやりする頭で必死に考える。んと……ルーク……って俺のこと?

「いい加減、目ぇ覚ませ!!!!!」
「ぶはっ!! 冷たっ!!!! ……何すんだよ!!!」
ガラン……とバケツを放りだし、こっちを見下ろしてるのは……金色の髪をした……青年。
……ひどいなあ。頭から服からすっかりずぶ濡れだ。
「あんた達……誰? てかここ……どこ? 」

こっちを向く三人が、あんぐりと口を開けた。女の子が両手で口を押さえて涙ぐんだ。ポロっと零れる一粒の涙。
――え? ええ!? ……俺が……泣かした!? なんで!?
「しゃあねぇな。コンクルシオで一発ど突くか」

――ちょ・こっち向けんなよ!! 何だよそれ! ブンブン唸ってんじゃん!

「やめて! ライアンまでおかしくなっちゃったのに、ルークまで・」
「待った。ぜんっぜん状況わか・」
言いかける俺の手を男が引っ張った。

付いて行った先は誰かの家の軒先。木の長椅子の上に、黒髪の男性が横になっていた。
うっすら開く目の焦点は定まっていない。ブツブツ何か呟いてるけど、何言ってるかさっぱりだ。この人が……ライアン?
「やっぱりこの師剣で……」
「ルカイン! あんたは黙ってて!!」
ルカインと呼ばれた青年が、肩をすくめて剣を納めた。剣の唸りが止む。
「ルーク。あんたの【治癒】で何とかならない?」
はあ……とため息をつく。
「何処がどうなったのか見当もつかないのに、治せるかっての」

「ルーク!」
女の子が怖い眼でこっちを睨んだ。睨んだ顔も……可愛いなあ。
「な~にヘラヘラしてんだこの役立たず!!」
「そうよ! 見損なったわ!」
「俺の従兄弟だっつーから、幾らかマシかと思ったけど……こりゃダメだな」
「――従兄弟!? あんたと俺が!?」
「その話は置いといて。とにかくライアンを何とかしなきゃ」
ルカインとかいう奴はともかく、この二人からは必死な思いがヒシヒシと伝わってきた。
良く分かんないけど……とりあえず。

俺は横たわる男の手に手を伸ばした。
パチっと軽く火花が散る。……え? 俺いま濡れてんのに、なんで静電気?
一息ついて、もう一度。
今度は……大丈夫。かと思ったら、さっき以上の衝撃が俺の脳天を貫いた。

倒れ込んだその瞬間――俺はすべてを思い出した。
ライアンが……ゆっくりと起き上がった。こちらに向けたその手の平には……五芒星の印が描かれていた。

152 ラファエル </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/16(土) 16:59:02.92 ID:a/QsLJr5

ギイィィ……

扉を開けると、古い書物の匂いが鼻をついた。
軍参謀の私室は、小窓と石板のある箇所以外はすべて……書籍の棚で占められている。

シャドウを無造作に長椅子に放る。エルフは軽く呻き、しかし目を覚ます様子はない。
その口が何事か呟いた。息を殺し……その片言を聞き取る。
(……イルマ……? 女の名か……?)
(まさかこ奴。陛下を御前に……頭では他の女を抱いていたのではあるまいな?)

嫉妬を上回る激情。高鳴る血流がドクンと脈打つ。
――許せん! 折角に我が殺意を押しとどめ、陛下の御為ならばと送ってやったものを! 

先刻に自分がつけた、未だくっきりと赤痣の残る喉笛を掴む。エルフの首は女の如く滑らかで華奢。掛け値なしに美しい。
今さらながら、帝国宮廷における噂の如何。何故かは容易に想像がついた。
女にとっては「異種族の美しい男」という存在は、好奇・興味の対象以外の何物でもあるまい。男にとっても然り。
実際この身体を目の当たりにし、正気でいられる者が……?

妙な高揚と興奮を覚え、たまらずエルフの首を抱く。

――犯し、殺す。何をためらう。戦場にてその行為を止(と)めたことは無い。
しかもこ奴はかつての仇敵。悶え苦しむその顔は……想像するだに最高の見物よ!! 
むしろ感謝するがいい!! 時と場所が許すならば、逆さに吊り打ち据えた末八つ裂きにしている処だ!!!!

シャドウの眼が見開いた。その眼に驚愕の色を宿し……一度閉じられまた開く。

「……隊長殿……!?」

サッ! と手を離す。……いやいや、慌てる必要など!! 正当なる権利の元……いやいやその前に未遂なれば!
――落ち着け! ――とりあえず外気でも! 

窓際に足を運び、引き戸を押し上げる。
月明かりがスッと差し込んだ。夜の心地よい風が、部屋の空気を澄んだものに変えていく。

「その……なんだ。陛下の御寝室にて倒れたお前を、ここまで運んだだけだ」
「お手を煩わし申し訳ありません。ご厚情に心より感謝致します」

本当に感謝しているのかいないのか。慇懃無礼とも取れる言葉を吐いたエルフに、一応一言付け加える。

「安心しろ。何もしていない」
「……は?」

……窓から差し込む月明かりが、いつにも増して明るい。開いたまま机上に置かれた書物に眼が止まる。
シャドウが目を通していたものだろう。
古い日付順に並ぶ何かの記録。議事録……? いや……黙示録か? 仰々しくルーン文字なんぞで書かれているが……

本を手に取り、開かれた頁を手で指した。

「何が書かれている?」

153 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/16(土) 17:04:30.42 ID:a/QsLJr5

背に感じた衝撃が軽い覚醒を促すも、再び意識は闇に引き戻された。

明るい茶色の髪をした少女の髪が揺れている。
イルマだ。イルマが上に乗り息を切らしている。腕を伸ばし……首に手を回して抱き寄せる。
『……んっ……』
喘ぐ口を自分の口で塞ぐ。
――ああ! この時を……それは長いこと待っていた! ――イルマ! イルマ・ヴィレン! 
――その気丈! その強き魂! すべてをいま私のものに!!
この首に回された手にも力が籠もる。女のものとは思えぬ力。――ああ! 君になら殺されても構わない! 

そんな甘い夢から覚めた自分の眼に映ったもの。
それは、王でもイルマでも、ましてマキアーチャでもローザでもフィオナでもエレンでも(以下略)でも無く、
それどころか女ですら無い……むくつけき髭面の大男だった時の衝撃は凄まじかった。
それが自分の上官、ラファエル・ド・シュトルヒルムであると気づくのに一瞬の間を要した。

「……隊長殿……!?」

何故か顔を赤らめ、上官が身を引いた。
いきなり手を離されたため、後ろ頭をひどく打ち付ける。
いたむ頭をさすりさすり身を起こすと、窓際に向かう靴音がカツカツと響いた。
振り向きざまに経緯(いきさつ)を話す上官の声がどこか上ずっている。

とりあえず型通りの礼を言うと、何もしてないと念を押された。思わず聞き返すが、返事はない。
そのぎこちない仕草に、意図せず含み笑いが漏れた。なるほどこれが……部下に慕われる理由(わけ)……か。

ヒンヤリとした風が頬に当たる。見るとラファエルが、読みかけの書に見入っていた。

「何が書かれている?」

掛けられていたガウンを羽織り直し、上官に歩み寄った。

154 ラファエル </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/16(土) 17:07:32.09 ID:a/QsLJr5

「今から105年前。大陸全土に及ぶ大戦が勃発しました。その書は神官長ご本人の手による、その後の重要な史実の記載です」
「あいつが書いた歴史書か」
「はい。神官長からは……良く目を通し、懸念があれば隊長殿に報告するようにと」
「ほう……?」
――ビショップが? この私を軽んじていると思っていたが……

内心、早まらず良かったと安堵する。

「現アルカナン女王がお生まれになった2年後、王子が誕生した事はご存知でしたか」
「無論。赤き眼を持つ不吉の子ゆえ、闇に葬られたと聞く」
「その5年後、ルシア・シューベルトが黒髪と赤い眼を持つ子供を拾い、養子とした事は……?」
「それも無論。忌み子を拾った名家の騎手、と当時は世が騒いだものだ」

フッと月明かりが消え、闇が部屋を満たした。書から目を離したシャドウが、飾りの無い石の天井を見上げる。
大きな羽ばたきの音と共に、黒い影がゆっくりと通り過ぎた。

「夜目の利くグリフォンだろう。続けろ」
頷いたシャドウが書を見ぬまま口を開いた。

「ほどなくして当主ルシアは事故で死亡。その子の所為だと忌み嫌われ……3年後、つまり8歳の時分ベスマ要塞に捨てられたと」
「……そうだったか」
「お気づきですか?」
「何がだ」

シャドウの眼がギラリと赤く光った。思わずゾクリとするが……あの赤い月を反射したのだ。脅かしてくれる。

安堵したのは束の間だった。

「王子と……その忌み子の誕生年、一致しております」

155 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/17(日) 06:43:15.03 ID:Bc1sVeN+

「では何か? その忌み子が実はアルカナンの王子だと?」
「そう仮定しても宜しいかと。赤き眼を持つ赤子などそうそう生まれるものではありません」
「だとしてだ。その王子はどうなった」

こちらをギロリと睨んだラファエルが、どっかりと長椅子に座りこむ。スプリングがギチリと耳触りな音を立てた。

「王子は……必死で剣と魔法を覚えたようです。正規軍と共に要塞を守る意思がおありでした」
「ほう?」
「しかしその3年後、80年にも及ぶ大戦が終結。要塞はその用途を問われ、さらに4年後……廃棄」

「大戦終結」のくだりで、僅かにラファエルの顔が曇る。
ラファエルの父の戦死がアルカナン撤退の引き金になったのだから当然だろう。しかも手を下したはこの自分。
またもや上官の癇に障るだろうかと顔色を覗うが、ラファエルは腕を組み黙っていた。
その上官が軽く顎をしゃくる。続けろという意味だ。

「廃棄となって数ヵ月後、地下研究棟に『賢者』を名乗る何者かが住み着いた、と記載にはあります」
「その話も聞いている。夜な夜な徘徊するアンデッドを生み出す……たかが死霊術師だろう。『賢者』などと片腹痛い」
「お言葉ですが隊長殿。その賢者は死の壁を越えた恐ろしき……そして尊き叡智の結晶に御座います」

ラファエルが明らかな憐れみの眼で自分を見ている。
だが、誰が何と言おうと……直に見(まみ)えたこの自分にしか言えぬ言葉だ。意見を曲げるつもりは無い。
開いた窓から外を眺め、誰も居ない事を確認してから引き戸を引き下ろす。

「賢者の話は後だ。とどのつまり、王子は御存命か否か」
「身罷られました。ドゥガーチ家率いる軍勢が要塞に攻め入ったその夜、何者かが放った間者の手によって」
「そう書かれているのか」
「いえ。その場に居合わせた私自身の覚えに御座います」

ラファエルが片眉をピクリと撥ねあげ……腰を上げた。
一歩、また一歩と思案気に歩きまわる上官は、もはや無骨な軍人には見えなかった。

「今夜は遅い。陛下へのご報告は明日だ」
そう言い残し部屋を出たラファエルの足音が、しばらくの間耳に届いた。

156 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/17(日) 06:49:42.02 ID:Bc1sVeN+

「ライ……アン……? その模様……どう……し……て……?」

思うように口が動かない。
星型の……五芒星の模様から眼が離せない。
また……あの耳鳴り…………じゃない。……ゼンマイ仕掛けの……時計の……音…………――――――

157 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/17(日) 06:50:16.33 ID:Bc1sVeN+

……父さん? 
そっか。今夜は魔法を教えてくれるって約束したもんね。
月が無い。空も地面も真っ黒だ。あの黒い森からフクロウの声がしてるよ。
――うわっ! これが魔法の光? ふわふわしてる。ろうそくの火と違う……すごく優しい光だ。
……ごめんなさい。
つい嬉しくて触っちゃんたんだ。消えちゃうなんて思わなかった。
うん。大丈夫だよ。
熱くも冷たくもなかったよ。魔法って不思議だね。……精霊……? 力を借りる……そうなんだ。

――誰? そこに誰か居るの?

父さん!!!!!!!

僕は何ともない。父さんこそ、いますごい音がしたけど大丈夫!?
びっくりした。
こんな夜にいきなり襲ってくる人も居るんだね。
――え?
何て叫んでたって……うーん……ハ……なんとか……って……――――――

158 ルーク
2016/07/17(日) 07:32:50.22 ID:o/VumQnd

≪ ハガラズ ≫
&amp;#160;
自分の口から出た言葉が、まるで何かの呪文のように聞こえた。
ライアンが手を降ろしてこっちを見下ろしてる。
&amp;#160;
「ライアン。あの時のあの人、ライアンだったんだね?」
&amp;#160;
彼はどこか悲しげだった。何かを追い払うように首を振ると、後ろの長椅子に座って俯いた。
「教えてよ。ライアンの事。成り行きであんたに付いてきたけど、俺、あんたがルーンの皇子って事以外なんにも知らない」
&amp;#160;
ライアンは深く息を吐いた。
しばしの沈黙。
そして彼はゆっくりと……話し始めた。初めはたどたどしく……次第に雄弁に。
いつのまにか祖父ちゃんが後ろに立っていた。
俺達は初めて聞くライアンの身の上話にじっと聞き入った。
&amp;#160;
&amp;#160;
話も終わりに近づいたころ、ふと疑問が沸いた。
ずっと……それこそ20年以上も放っておかれた要塞に、どうしていきなり王国の人たちが偵察に?
なんか不自然だ。
&amp;#160;
「どうしていきなり父さんの存在がバレちゃったの?」
「それは……」
それまで滑らかだったライアンの口調が淀んだ。
&amp;#160;
「私が……リークしたからだ」

159 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/17(日) 16:28:53.28 ID:Bc1sVeN+

≪ ハガラズ ≫

自分の口から出た言葉が、まるで何かの呪文のように聞こえた。
ライアンが手を降ろしてこっちを見下ろしてる。

「ライアン。あの時のあの人、ライアンだったんだね?」

彼はどこか悲しげだった。何かを追い払うように首を振ると、後ろの長椅子に座って俯いた。
「教えてよ。ライアンの事。成り行きであんたに付いてきたけど、俺、あんたがルーンの皇子って事以外なんにも知らない」

ライアンは深く息を吐いた。
しばしの沈黙。
そして彼はゆっくりと……話し始めた。初めはたどたどしく……次第に雄弁に。
いつのまにか祖父ちゃんが後ろに立っていた。
俺達は初めて聞くライアンの身の上話にじっと聞き入った。


話も終わりに近づいたころ、ふと疑問が沸いた。
ずっと……それこそ20年以上も放っておかれた要塞に、どうしていきなり王国の人たちが偵察に?
なんか不自然だ。

「どうしていきなり父さんの存在がバレちゃったの?」
「それは……」
それまで滑らかだったライアンの口調が淀んだ。

「私が……リークしたからだ」

160 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/19(火) 06:12:58.18 ID:Gx+kZxXi

「……冗談だろ?」
ライアンはジッと俺達を見たまま答えない。
俺を含めた5人がみんな、鍛冶場を背にしたライアンと向かい合った。

「……訳を言えよ」
「……」
「俺、嬉しかったよ。俺には言いにくいこととか、いっぱいあったと思う」

誰も口を開かない。

「言えよ!!! やっと打ち解けてくれたと思ったら!! また隠しごとかよ!!?」

ザブザブ流れる噴水の音。ヒューヒュー風を切る……飛翔音?

「おい!!!」
ルカインが指差したその先、はるか上空の黒い影。
それがばかでっかいグリフォンだと気づいたのは、その羽ばたきが地の砂ほこりを巻きあげた時だった。
家屋の窓から顔を出した人達が、その正体に気づいて中に引っ込む。

「入れ!! 早く!!」

ルカインの呼びかけに一斉に走る俺達。滅多に人を襲わないグリフォンだけど、だからって餌にされないとは限らない。
最近は好物のゴブリンが減ったせいで、人を襲う事もあるって話だ。
ライアンだけは動かない。直立不動の姿勢のまま、じっと俺だけを見ている。

大鷲と鷹が一斉に鳴くような、恐ろしく良く通る甲高い咆哮が耳をつんざいた。
声の主が真っ直ぐに急降下……――――わわわ! ちょっと!!!

「危ないルーク君!!!」
まるで勇者みたに飛び出したベリル姐さんが、俺を庇って倒れ込む。

地上すれすれでホバリングするグリフォンが羽ばたくたびに、俺と姐さんの身体がグラリと揺れる。
巻きあげられた小石や木片がビシビシと頬にぶつかる。いてて……!!
なんとか薄く目を開ける。
ライアンが……巻き上がる渦の中に立っている。その手が……ゆっくりとこっちに向けられる!
「……つっ……!!」
ベリル姐さんの呻きの原因はたぶん俺と同じ。割れるように……頭が痛い。ライアン、また俺に……なんかした!?

――――――――バサッ!!!!

突風に晒され、俺と姐さんは木の葉のように吹き飛んだ。パリン……と空の結界が割られる音。

次に顔を上げたとき、ライアンの姿はなかった。

161 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/19(火) 06:19:52.13 ID:Gx+kZxXi

「ベリル!」
ルカインが走り寄ってきた。まだ立てずにいる……俺の手を取る。いやいや、俺じゃなく姐さんの手を取ってあげなよ。
「ああ! 女がこんなに傷こしらえて……」
だーかーら!!! 俺じゃなく姐さんに!!!

「ルーク! 怪我でもしたの!!?」
外に出てきたリリスが、ここから遠く離れた地面に倒れてる俺の身体に駆け寄った。倒れてる。俺の身体。
俺の……。ええ――――――――――!!?

「ルカイン。俺……誰に見える?」
「ベリル!! お前まで!!」
ルカインがガシッと抱きついてきた。
「可哀そうに!! さっきので混乱してるんだな!? 『一時的な記憶喪失』ってやつだな!? そうだな!?」
耳元ででかい声だすなよ! つか俺いま姐さんなの!? そうなの!?
どさくさに紛れて尖らせた口を近づけてきたルカインの顔面を手で押し返す。


「ぎいやああああああああああ!!!!!!!!」
紛れもない俺の声。見るとリリスの隣に座ってこっちを指差す「俺」がいた。
「……なんで!!? なんであたしがそこにいるのおおお!!!?」

いくらか事情が呑み込めたのか。ルカインとリリスが俺と、あっちの俺とを交互に見て首を振った。
けどその状況を噛みしめてる暇は俺達には無かった。

「ルーク・ヴェルハーレン!! 城まで御同行願おう!!」

いつの間に来たんだろう。
俺達は槍と楯を持った騎士達にぐるりと囲まれていた。

162 マキアーチャ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/19(火) 17:39:26.23 ID:Gx+kZxXi

ピチャリと撥ねる水音に、ぞっとして振り向いた。薄暗い廊下が、遥か彼方に伸び……闇に溶けている。
所々に生えるヒカリゴケが、うっすらと乾いた天井や足元を照らしている。
不審に思いながらも先を急ぐ。

『姉さん……』

声がした。さっきより強い。

「何処だ!? そこに居るのか!?」

自身の声がエコーとなって耳にまとわりつく。後ろ……? 横……? 何処……何処にいる……!?

『―――――姉さん!!!!』

ビクっと身体が跳ねた。ゆっくりと……前を向く。

「イルマ……」

ほんの数歩で手が届く位置に‘彼女’は居た。
ほっそりとした小柄な身体が透けている。革のミニのワンピースを着た愛らしい少女。家を出たあの時のままだ。

『やっと……私の声に気づいてくれたね。姉さん』

「探したんだよ。あんたがあの家を出てからずっと。今、何処に居る? その姿……もう生きてはいないのか?」

少女は悲しげな顔をし……すぐに首を横に振った。

『私にもわからない。眠ってるけど……目覚めてる。身体は動かないけど……自由に何処にでも行けるの』

ああ、この子はこの世に居ないのだ。天に還れず彷徨う……幽鬼なのだ。
そう思うと、どうしようもなく嗚咽が込み上げた。二つ下の可愛い妹。幼い頃は喧嘩もしたが、仲直りも早かった。
何処に行くにも一緒だった。あの頃のように……と手を伸ばし彼女に近づくが、何故か届かない。

『姉さんに伝えたい事があるの。聞いてくれる?』

声を出せば泣いてしまう。頷くのが精いっぱいだ。
やっと会えた愛しい妹。たとえそれが生身の人間ではなくとも可愛い妹には違いない。

『ルークは無事よ。きっと帰ってくる。姉さんの愛する人と一緒に』

もしかして……と思い当たる。毎晩のようにルークの夢に現れる「光の少女」とは、実はこの子のことではないだろうか。
『きっと未来のお嫁さんだよ!』
そう言って無邪気にはしゃぐ幼いルーク。
ただ笑ってみていたが……もしそうならあの子に取って辛いさだめとなるだろう。

『戻らなきゃ。あの人を独りにしたくないの』



幸せな笑顔を残し、彼女は扉を模した壁へと消えた。
そこは開けたが最後、螺旋の段が底へと誘(いざな)う地下研究棟への扉――――――

163 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/21(木) 07:10:50.46 ID:E9AS98xC

「えぇ!? 俺、なんかしたっけ!?」

騎士達が「なに言ってんだこいつ」って顔でこっちを見た。首をかしげる奴もいる。

――やべ! 俺いま姉さんだった!

徽章が皆よりいくらか多い、格上の騎士がニヤリと笑い進み出た。
「某(それがし)は親衛隊副長のミハエル。ベリル・メンヌハ殿。貴女も同行させよと神官長殿が仰せに御座います」
副長は仰々しく一礼し、近くの騎士に眼で合図を送った。

――いててて! 「ございます~」なんて言ってる割に、扱い乱暴じゃね? 

「べリスから離れろ!!!」
群がる騎士達の向こう側。ルカインがコンクルシオを手に構えている。
すでに剣の餌食となった騎士達が、腕を押さえて呻いている。

「それを捨てろ」
副長が俺の喉に冷たい切っ先を押しあてた。
「もしそれ以上……その剣が彼等を傷つけたらどうなるか。……解るな?」
ルカインは肩で大きく息をしている。俺を見て、そしてベリル姐さんを見て、何か言おうと口を開け……ぐっと口を閉じた。
ガラン……と剣が落ちる音。
横目でそれを確認した副長が、ゆっくりと剣を降ろした。
「安心しろ。すぐに返してやる。洗いざらい吐いてくれればな」

――吐くって……何を? やっぱライアンのこと?

副長が俺の背を押しやり……思い出したようにルカインを振り返った。
「勇者の血筋、と持てはやされた貴様が落ちたものだ」

――勇者? そうなの?

その「勇者」はじっと俺達を睨んだまま立っていた。なま暖かい夜の風が、俺達の頬を撫でる。
こんな時……ライアンがよく助けてくれたよね? フサルクの剣の継承者。俺、てっきりライアンが勇者なのかと思ってたよ。


門の横で敬礼する番兵のそばを通り過ぎ、俺達二人は引きたてられていった。
王城に向かう石畳の大通りに人通りはなかった。

164 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/22(金) 17:15:33.78 ID:vvLJ2rDj

眼前に黒々と聳(そび)えるアルカナンの王城……
その迫力に足が止まる。大きな四角い建物のまわりを取り囲む高い塔が……天から俺達を見下ろしている。
「妙な気を起こすなよ……?」
後ろの騎士に背中を押される。先頭に立つミハエルが立ち止り、振り返った。
「……案ずるな。この一帯は陛下の魔力結界内。魔法など使いたくとも使えん」

……そうなんだ。
すぐ右横を歩いてるベリル姐さんと眼が合い……何処となく視線を彷徨わせ……どちらともなくため息が出た。
どっち道使えたとしてもこのザマじゃあ……と姐さんも思ったに違いない。
また歩き出して……ふと気付いた。姐さんの足運び。
モデル歩きっつーの? 歩くたんびにお尻が揺れて、お色気たっぷり。いいんだけどそれを俺の姿でやんないでよ……
そんな姐さんの咎める視線が俺に向いた。
もしかして……あはは。俺も人の事言えないね……? はい。内股で……女らしく……
「おいっ!」
足がもつれ、すっ転びそうになった俺の腕を騎士が掴んだ。うー……女って大変!

何とか女の歩き方(?)をマスターした頃、俺達は城の正門脇にたどり着いた。
示し合わせてあったのか、叩いてすぐに通用門の扉が開いた。幅の狭い門をくぐる。

「うわあ……」
そこは一面の薔薇園だった。
むせかえる薔薇の香りが、鉄の匂いと汗に塗(まみ)れた俺達一行を典雅に出迎えた。
幾重にも別れた園庭の小道を迷いもなく進んでいく俺達は……さながら巣に戻るアリの行列。
騎士達の鎧の先端が茂る葉に触れるたびに、パラパラと夜露が跳ねる。
さすがはあの綺麗な女王の城だなあ……。お城の中はきっともっと凄く……豪華で綺麗だろうなあ……

そんな俺はすぐに現実に引き戻された。地下の通路に続く暗い入り口が見えたからだ。
とたんにさっきのミハエルの言葉が蘇った。

――『すぐに返してやる。洗いざらい吐いてくれればな』

『洗いざらい』……って……やっぱ拷問とかされるのかな。
しゃべっちゃおうかな。ライアン、何で父さんの事チクッたのか教えてくれなかったし。
そうだよ! そうすりゃ万事解決! 明日には村に戻れるかも!――ただ……

俺、ライアンの過去を聞いちゃったんだよなあ。
あいつには2度も助けてもらったし……いろいろ大事なこと教えてもらったし。
……もしかして黙って逃げたのも、俺と姐さんにこんな事したのも……どうしようもない理由があったのかも。

165 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/22(金) 17:19:16.12 ID:vvLJ2rDj

階段を降り切ったその先は思った通りの牢獄だった。

まっすぐ続く道の両脇に、延々と続く格子の檻。
俺達に気づいて、立ち上がった人間の手が何本も格子から突き出ている。
壁に繋がれ、身体を痙攣させて呻く老人。
騎士に唾を吐きかける女。
俺を見て……からかうように口笛を鳴らす若い男衆。
そう言えば……とさりげなく金髪のエルフが居ないか確認する。
――父さん。
思えば父さんを探しにアルカナンに来たんだっけ。今の今まで忘れてた訳じゃない。ただ色んな事があり過ぎて……

突然あがる恐ろしい叫び声。見ると、吊るされた半裸の男に鞭を当てる拷問官の姿が目に入った。
くるりとこっちに向けたその顔が……囚人の返り血でまだらに染まっている。

――うわ……。しゃべんないと……俺もああなる訳?

しばらく歩いているうちに、鉄格子で区切られた広い区画に突き当たった。
竜の子供でも閉じ込めておくようなでかい檻だ。正面の格子戸を開けたミハエルが、俺と姐さんを乱暴に押し入れた。
「男の方は吊るせ。女は……縛って転がしておけ」

――ええ!? まだ言わないって決まったわけでもないのに!?

さっきの血だらけの男の姿が目に浮かび、俺は身震いした。こいつら、もしかして鬱憤晴らしにやってない?
騎士達が命じられた仕事を淡々とこなす間、ミハエルは俺を見てネチっとしたいやらしい笑いを浮かべている。
――やっぱそうだよ! あいつ、何か楽しそうだもん!!
俺の視線に気づいたミハエルが、フンと鼻を鳴らした。
「じき陛下がおいでになる。それまで頭の中をきっちり整理しておくのだな」



随分長いこと待った気がする。
後ろ手に縛られた手首から先の感覚がない。足もだ。姐さんの方を見上げると……あっちはもっと辛そうだった。
ぎゅっと瞑った目。結んだ口元。前髪が張り付く額に次々に浮かぶ玉の汗が、頬を伝って顎から滴り落ちている。
ごめん、姐さん。俺と関わったばっかりに……

166 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/22(金) 17:24:06.67 ID:vvLJ2rDj

ふと薔薇の香りがした。

よく見ると、来た道と反対側の壁に、人一人通れるくらいの通路がある。上へと続く階段だ。
そこからヒタヒタと降りてくる人の気配。
ふわりと妖精のように姿を現したのは……女王だ! 今朝、会場で客の視線を集めていた美しい女王!
騎士達が一斉にひざまずく。
さらにもう二人。一人はあの時女王の隣にいた少年。白い錫杖を右手に掲げ、格調高い白の神官服を着ている。
もう一人は奴だ。ラファエルだ。いまはあの派手な鎧をつけていない。

「ほう? 其方がシャドウの息子。ルーク――「要塞」とはまた……洒落た名を付けられたものよ」
ガチャリと格子の扉を開け、女王が中に入ってきた。すぐにラファエルと少年も後に続く。

「ビショップ。この女はもと部下であろう。其方の失態でもあるのだぞ?」
名を呼ばれた白い少年が、深々と頭を下げた。その顔はまるで鉄の仮面だ。何考えてるかまったく解らない。
「さて……」
女王が廊下に立つミハエルに視線を送る。
「何処まで聞き出せた」
「――はっ!? いえ!! 陛下のご到着をお待ちしておりました故……」
しどろもどろに言い訳するミハエル。米神に滲む汗。あらら……意外と彼、小心者?

「そうか」
ゆっくりと身を返した女王から……じわりと「気」が滲み出た。心の臓が締め付けられ……身がすくむ。

――そっか。ミハエルの気が小さいんじゃない。女王が凄いんだ。よく言うもんね。綺麗な薔薇にはトゲがあるって。
その王が横たわる俺の方を見た。凄い眼だった。奥が深すぎて……吸い込まれそう……
ビショップが俺の背後に回り込み、身体を起こして座らせた。
「ベリルとやら。皇子は今何処にいる」

――あのそれ……俺の方が聞きたいんですけど……

「ベリル。王は過去の素行、裏切りすべて反古にすると仰せだ」 なんてビショップが囁く。

――さては姐さん、過去いろいろやらかしたね? 協力してあげたいけど、ほんと何も知らないからなあ……

俺が答えに窮していると、突然ラファエルが腰の鞭を手に取り振りあげた。
石の床が鞭を受け、腹に響く音を立てる。床の一部がえぐり取られ、壁に当たってビシリと散った。
「答えねば……次は男を打つ」
ハッとして姐さんを見た。騎士が数人取り囲み、その上着を引き裂いている。
……お……俺の一張羅……なんて気にしてる場合じゃない! あの鞭、下手すりゃ首が飛んじゃうよ!
どうする? どうしたらいい? こんな時、父さんだったら? ライアンだったら……?
ラファエルが手にする鞭が、床の上で蛇のようにのたうっている。あの鞭、父さんのに似てるけど……まさか……

「待って」
俺の口が勝手に動いていた。そこにいる全員がこっちを見る。
「父さんを、シャドウ・ヴェルハーレンを返してくれたら教える! でなきゃ死んでも答えるもんか!」

こっちを見ていた全員が呆気に取られた顔をした。  ――――――しまった!! いま俺じゃなかったの忘れてた!!

167 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/22(金) 17:27:08.25 ID:vvLJ2rDj

一方のシャドウは私室にて読書に耽っていた。

厚ぼったい羊皮紙の頁をパラリとめくる。かなりの年数を経た書のようだが、ほとんど傷みがない。

『遥か昔。この大陸は魔族が支配していた。
オーク、ゴブリン、トロール、魔狼、それら「闇の種族」を従える魔族の王は、12枚の黒き翼を持つ赤眼の魔王。
人間やドワーフ、魔法種族のエルフすら、その威力に屈し、日々労働し、時に挺身を余儀なくされた』

誰もが幼少時、聞き入ったであろうおとぎ話だ。誰が記したか、この書はその詳細をルーン語にて綴っている。

『ある日、エルフの大神官が予言した。いつか勇者が現れ、大賢者と共に魔王を封じるであろう』

魔王と勇者と大賢者。
この手の英雄譚(サーガ)には、必ずと言っていいほど三者がセットで登場する。話の都合上、切っても切れない関係にあるのだ。
シャドウは今、1つの確信をもとに書を読み進めている。
この本に書かれている事柄はすべて……事実なのだと。
勇者とは一体誰か。大賢者とは何者か。魔王は何処に、どのようにして封印されたか。
すべてがこの書に記されている。しかも、非常に詳しく、曖昧な表現も無しにだ。
久方に探究心を刺激され、奥深くへと読み進む。机上には関連図書が山のように積み上げられていく。

『アルカナ歴○○○年(約2,000年前)。オークランドにて密かに魔道に通じ、その道を極めた者が現れた。
彼は自ら人との交わりを絶ち、ただひたすらに己の探究心に従った結果、不死の身を持つ賢者となった。
その姿はもはや人間ではなく、むしろ闇の眷属に等しく。
そんな彼に魔王が囁いた。自分と手を組み、「闇の賢者」となるよう説得した。
人の心を持つ賢者はこれを退けた。魔王を封じるため、賢者の石にて勇者を生み出し……ついに魔王を地下深くに封印した』

その先を読むシャドウの目が大きく見開かれた。
書には、勇者が魔王を封印した……その場所を具体的に示していた。すなわち……ベスマ地区と。
そしてさらなる最後の一文。

『2,000年に及ぶ「時」が封印を解き……魔王は人の子として蘇るであろう』


軽いノックの音がした。
振り向きざまにぶつかった書籍の塔がぐらりと傾き、バサバサと崩れ落ちた。
急ぎ止めようと支えるも間に合わず、衝撃で書籍の棚からも本が滑り落ちる。
数十を超える本の山の下敷きとなり、ようやく顔を出した時……アルカナ騎士団の副団長――ガブリエラと眼が合った。

「失礼致しましたわ。何度も扉を叩いたのですが」
「何事だ」
「陛下が、急ぎ地下の牢獄へ出向くようにと」

――地下? 北の塔だけでなく、地下にも牢があったのか。

理由(わけ)は聞かず、すぐに騎士達の案内に従った。
薔薇の園庭をのぞむテラスの……その一角に、地下へと続く通路はあった。
「先にお降りを。殿(しんがり)はわたくしが」

遥か下に続く螺旋の階段が、得体の知れぬ闇に呑まれている。まるで、あの地下回廊に続く道のようだと思う。
異臭漂う気の流れをその身に受けつつ、暗い階段を駆け降りた。

168 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/24(日) 09:09:13.54 ID:Nbalhk2P

「シャドウを連れてこい」
じっと俺を見据えたまま女王が指示する。
ポカンと口を開けていた騎士のうち数人が、慌てて階段を駆け上がっていく。

「眼を……逸らすな」
女王は手の平を俺に向けた。そこに描かれていたのは……双つの首を持ち上げる竜の紋。
「陛下? 賢者の魔紋が消え・」
俺の肩をつかんでいたビショップが何か言いかけたけど、王が睨むとすぐに黙りこんだ。
ゆっくりと近づく竜の紋。
グラリと揺れる視界。

――同じだ! 頭の中を探られるこの感じ! さっきライアンがやったのとまったく同じだ!!

「なるほど」
女王がスッと眼を細めた。
「ルーンの皇子め。周到なことだ」
「陛下……?」
「この二人、魂を互いに換えられている。我が力にて記憶を探られぬようにな」
ゆらりと立ちあがる王に、ラファエルが向き直った。どういう意味か全然解らないって顔だ。

「詳しき説明は……あ奴がしてくれよう?」
王の視線の先、あの階段を速足で駆け下りて来る……この……体重を感じさせない軽やかな足音には聞きおぼえがあった。

「ルーク!!!?」

――やっぱり父さん! え? その格好……? 

父さんが着ていたのは囚人服でもなんでもなかった。
黒の魔導師服。胸にはアンフィスバエナの刺繍。これって剣闘会の時女王をエスコートしてた魔導師の!?
よくよく見れば、額の魔紋がアンフィスバエナに変わってる!?

「来たかシャドウ」
確認した王の眼が艶めかしく光る。――うそでしょ!? 俺、父さんが寝返る訳ないって……

「父さん!!!!? どうして!!!!?」

169 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/24(日) 09:13:09.96 ID:Nbalhk2P

螺旋の階段をしばらく降りただろうか。
ちょっとした踊り場、そこに小さな鉄の扉があるのに気づいた。錆びついた……子ども一人通れるか否かといった大きさだ。
扉には食事を出し入れするための小窓がある。まるで小さな牢だ。
耳を澄ますと、何者かが敷き藁を踏み歩きまわる音がする。それに混じる微かな声。
『出して……お願い……』
うら若い女の声だ。
「参謀殿! お急ぎを!」
ガブリエラに急かされ再び足を運ぶが……後ろ髪を引かれる思いで振り返った。
一瞬だが確かに見た。
扉の小窓から……細く白い手が這い出るのを。長い爪がドアを引っ掻き、カリリと音を立てるのを。
「参謀殿!!」
気にかけている暇はない。急ぎその声に従った。


地下の監獄にはすでに大勢の騎士達が詰めかけていた。
よもやルーンの皇子が捕えられたかと歩を進め、目を疑った。
牢の中、天井から吊るされていたのは……

「ルーク!!!?」

おそらくこの王城に来て初めて上げた大声に、我ながら驚く。
――落ち着け。皇子と共に試合に出ていたのだ。こうなる事は予想していたではないか。
見れば、上着を剥ぎ取られている以外、特に何もされていない。
ラファエルが手首を軽く捻り、鞭の先を蛇のようにくねらせている。……まだ脅しの段階のようだ。

「来たかシャドウ」
そう言葉を発する陛下の前には、珍しい紫の髪を振り乱す……まずまず美しい女性がビショップに支えられ座っていた。
――名は確か……ベリル・メンヌハ。
腕ききの錬金術師と登録台帳に記載されていた……あの女だ。試合にてルークを良く助けていた記憶が新しい。
そのベリルの眼が大きく見開かれている。真っ直ぐにこちらを見……先ほどの自分が発した声に負けぬ大声で叫んだ。

「父さん!!!!? どうして!!!!?」

――――――――――――――――――――――父さん!?

ベリル・メンヌハ23歳。
23、いや4年前と言えば、大戦終結、皇子ライアンの世話役を仰せつかったあたりだ。
大勢の戦死者を出したが故、未亡人となった貴族の奥方達が毎日のように私室に押しかけた。数人同時に相手をした夜も。
その中に紫の髪をした女性が……3人居たな? 誰だ? 誰の子だ? いやその前にちゃんと手は打って…………

「シャドウ。何を考え込んでいる」
「……は?」
「……は? ではない。ルーンの皇子の仕業にてこの二人、魂を入れ替えられている」
「……そういう事でしたか」
「なにが『そういう事』なのだ」
「「――はっ!? いえ!! その……」

そういう事かとあらためてベリル・いやルークを見ると、これまた物凄い眼で睨む息子。
「ルーク、落ち着け。これには深い訳が……」

170 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/25(月) 06:57:41.54 ID:R4qJSORz

「理由(わけ)? 父さん言ってたよね。賢者を絶対に裏切らないって。いいよ。ちゃんとした訳があるなら聞いてやるよ」
「ルーク……」

言い淀む父さんがなに考えてるのか、何となく解った。
女ったらしで、宮廷では女と見れば手ぇ出しまくっててって言うエレンの言葉はたぶん本当なんだ。
さっきの、「女王とよろしくやってた」のも本当。つまりは女王の魅力に負けたってこと。
――なんで解るかって? そりゃわかるよ親子だもん。
父さんってさ。隠し事したりヤマしい事考える時、右の耳先がピクってなるよね。知ってた?

「……見損なったよ」
父さんは……何か言いたそうに口を開けたけど……しゃべらない。いやいや、言い訳でも何でもしてくれよ。
俺を納得させてくれよ!! ずっと理想の父さんだと思ってた! それも裏切るのかよ!!!
「母さんに何て言えばいいんだよ! 『父さんは女王様と仲良くなっちゃったから置いてきた』って!?」

立ち上がろうとした俺を、ビショップが後ろからタックルするみたいにして止めた。
胃のあたりが締め付けられて一瞬おえってなった。胸のあたりに妙な違和感。でも気にしてる場合じゃない。

父さんはそれこそ悲痛な面持ちで俺から眼を逸らし……その視線が彷徨い……俺の胸元でピタリと止まった。
――へぇー。こんな時に胸の谷間なんか見るんだ。確かに姐さん、でっかいけどさ、だからって・
「ルーク……」
――姐さんは口挟まないでくれる? これは俺と父さんの・
「胸、見えてる」
「……え?」
「胸、出てるってば!!」
――――――ちょ・うそーー!!さっきビショップがタックルしたせい!!?

「姐さん! 何でもっと早く言わないんだよ!!」
「だってぇー……なんだか言えないフンイキだったんだもん」
「だいたい姐さんも悪いよ!! こんなすぐポロっと行きそうな服着るから!!!」
「いいじゃない! ……胸はあたしの武器でもあるんだから!!」

父さんが……その場に居た全員が……気色悪そ~~な顔して天井から吊るされてる姐さん(身体は俺)を見た。
――姐さん。その口調……何とかならない?

「陛下のお力で何とかならんのですか!?」
姐さんの口調のことじゃない。俺と姐さんを元に戻せないかって言ってるんだ。ラファエルの問いに、女王がかぶりを振る。
「わらわはあのような衣服を身に付けたことが無い故、元に戻すは困難・」
「あ、いえ。服のことではなく」
「……あ? ああ」
――スッと立ちあがった女王。いま一瞬だけ赤くなった。ちょっと、可愛い?

「シャドウ、頼む」
牢を出る女王と入れ替わるようにして父さんが中に入ってきた。俺の前に膝をついて……
「安心しろルーク。すぐに戻してやる」
――さっすが父さん! いつもの訳分かんないやっつけ呪文で何とかしてくれるんだね?
何て胸を躍らせてたら、何の躊躇もなく胸を鷲掴みにしてグイグイ胸を胸当て(?)に押し込めた。
――いや……そっち?

171 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/26(火) 17:38:52.40 ID:C1/L0l9u

……その眼。
やはりこの葛藤を見抜いているな? 解っている。我が嘘が通じぬことは。
エルフの血を引く者の耳は大概……驚きに応じパタつき、恐怖に慄けば背後に伏せ、機嫌良き時ピンと立つ。
つくづく思う。エルフという種族は……人間社会にて生活を送るに難儀な生き物だと。
してお前の言わんとする事もわかる。すべてこの私の浅慮が招いたこと。
「大丈夫だ」などとその場しのぎの言葉を残し、お前を要塞に任せはしたが……まさか追ってくるとは!
何とかなると自分でも思っていた。最悪死ねば何とかなると。
それが……城に連行されたあの時。この美しい王にならこの身を委ねてもいいと……少しも思わなかったと言えば嘘になる。
そうだ! 王の傀儡と化したはこの私自身の望みでもあったのだ! 亡き帝王を忘れ! 偉大なる賢者を裏切り!
そしてお前の思いまで踏みにじった! 
私に父親である資格はない。だが父親をやめる事も出来ない。せめて…………せめてその胸だけは仕舞ってやろう。


ルークの後ろにいるビショップが鋭い眼でこちらを凝視している。
「シャドウ、戻せそうか?」
無論、ラファエルは胸のことを聞いているのでは無い。
彼の手が時折軽くしなり、そのたびに鞭がピシピシと床を叩いている。まるで……イラつく猫の尾のように。

少々落胆気味の息子の顔を両手で挟み、その額に自分の額を触れ合わせた。
――眼に浮かぶ……イメージ。
ルークの魂(こん)と……ベリルの魄(はく)とが断片に分かれモザイクの如く同居している。
異なる種の魂魄(こんぱく)。
この状態ならば、たとえ女王の能力を以てしても記憶は奪えまい。それはそれでいいのだが……
こうしている間にも、断片は更なる断片のモザイクへと姿を変えている。
……いずれはモザイクは坩堝(るつぼ)となるだろう。急がねば分離は不可能となる。
額を離す直前に、息子の頭に言葉(メッセージ)を一言。果たして訊いてくれるか否か。


牢の外から王の声がかかる。
ゆっくりと立ち上がり……滑るようにビショップの背後に回った。不審に思ったか、ビショップが右手に握る錫杖を握り直す。
「おそらくは皇子本人の手に依らずして直すは不可能かと」
「……皇子の行く先に当たりはあるか」
「御座います」
「それは……何処だ」
「それは……答えかねます」


場の空気が張り詰めた。
ラファエルが鞭を捨て魔剣を抜くその一瞬前。奪ったビショップの錫杖を、ラファエルの喉元に突きつけた。
足元では縛られた両手の間にビショップの首を挟み込むルーク。
ビショップがもがくが上手い具合に固められ、体格の差も相まって逃れられず。観念したのかじき動かなくなった。

172 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/26(火) 17:41:15.20 ID:C1/L0l9u

額に触れる父さんの額。首筋をくすぐる金色の髪。新緑の……いつもの父さんの匂いがした。
ずいぶんと長いことそうしていたと思う。きっと父さんには何かが見えているんだろう。
これ……治るのかなあ。

『私が動いたら動け』

唐突に響く声。父さんが両手を離して立ち上がる。……え? ……いまの……?

「どうだシャドウ」
女王が父さんに聞いてる。「診断結果」ってやつだろう。
父さんの答えは……うん。やっぱりね。ライアンがもし見つからなかったら……一生このまんま。
……どうしよう。息子がいきなり娘になって帰ってきたら、母さん、ショックで卒倒するかも。
いっそ「父さんの娘です!」ってのは……いやいや無し無し!! そっちのがショックだよ!!
――もう!! ライアンの馬鹿!! 高慢ちき!! 秘密主義!!

ここに居ない「もとチームメイト」の悪口を思いっきり心の中で叫んでたら、何だか落ち着いてきた。
そう言えばさっきの……動いたら動けって……どういう意味だろう。
女王がライアンの行き先を父さんに聞いてるけど……そんなの父さんに解るわけないじゃん。会ったの10年前って話だ。

それを父さん。「御座います」だなんて、ハッタリハッタリ! さっきから右耳ピクついてるし! 
なんて答えるつもりだろう。適当に答えて……追手に違うってバレたら今度こそ殺されちゃうよ? どうすんの?

「それは……」   ――――それは?

「答えかねます」

いきなりさっきの「動け」の意味に気づいた。父さんは無意味なやり取りをする人じゃない。
身体が勝手に動いていた。
鞭の柄が床に当たる音、剣の柄に手がかけられる音、錫杖がギリリと軋む音、3つの音が同時にした。
締め上げるビショップの首の骨が軋み、引きつった苦しげな声が吐息に混じる。
見上げると、父さんがラファエルの首に杖を突きつけている。ラファエルの手は柄にかかったままだ。

やった! 形勢逆転! これでやっとここから逃げられる! 

でも………どうやって? 魔法も使えないのに?

173 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/26(火) 17:43:56.93 ID:C1/L0l9u

突きつけた杖を動かさぬまま、ラファエルの手放した鞭を拾う。
捕われた際に奪われた我が愛用の鞭。鹿の脳組織にて丹念になめした滑らかな手触りは、鹿革以外には味わえぬ感がある。

「隊長殿。どうぞ女王(クイーン)のおそばへ」

眉と眉の間に深い皺を刻むラファエル。その視線が物言わぬビショップの上に落ちる。
「どうしました隊長殿? 神官長より……王の命が大事では?」
「ラファエル。シャドウが言うとおりにせよ」
「……しかし……!」
「ビショップは……命を惜しむ男ではない」
冷たい言葉ではあるが、王の顔は苦渋に満ちていた。選択を誤れば、もう一人の忠臣をも失うのだから当然だろう。
じりりと後退して牢を出たラファエルが、王を庇うようにして立った。


「……何が……望みだ?」
女王の声にはいつもの張りが無い。
「魔力結界の解除を。ほんの数秒で構いませぬ故」
「なっ!!?」
ラファエルが驚きの声を上げ、騎士達のどよめきがそれに続いた。

「…… ……なりませぬ陛下……!! あの結界は……我らが……大陸の……」
苦しげに声を絞り出すビショップに、女王は月光の如き微笑みを返した。
「案ずるな。数秒ならば『持つであろう』」
その言葉にハッと眼を見開いたラファエルが、脱兎のごとく駈けだした。つい先ほど自分が駈け下りてきた階段を駆け上がる。
「わ……わたくしなどお捨ておきを!! 皇子と! そして賢者の石を!!」
しかし王は首を横に振り……両手を横に広げはじめた。両手の平に描かれた竜が蒼く輝きだす。

ふっと身体が浮く感覚。急ぎ呪文を唱える。
「莫迦な……複数の【転移】など……不可・」
不可能と言いかけたビショップに驚愕の色が浮かぶ。
おそらくは見たのだろう。この額の竜が、賢者の魔紋に取って替わるのを。魔紋が青く輝き、同じ輝きが部屋全体を包むのを。


――景色が動いた。


鉄と血の入り混じる異臭は、新緑が囲む森の匂いへと変わった。
時折熟れる木イチゴの甘酸っぱい香りが風に乗って運ばれてくる。葉ずれの音も、遠くに聞こえる滝の轟音も、すべてが懐かしい。
最初に身を起こしたのはルークだった。
縛られていた両手の縄を解いてやると、眼を瞬かせて首をぶんぶん振っている。夢か現(うつつ)か試しているのか?
ベリルの縄も解いてやると、「うーん」と呻いて……しかしまだぼんやりしている。

「ここは?」
森を初めて見る幼子の如く辺りを見回す息子。
「要塞の屋上より……東方に見えていた青い山々を覚えているか?」
ルークが手首をさすりつつコクリと頷く。

「ここはエルフの守る蒼の山脈(エレド・ブラウ)。私の故郷だ」

174 ビショップ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/27(水) 07:02:41.38 ID:ZFeTD+IL

――失態だ……!! 
皇子を攻めると決めた時、何故に即実行しなかったか!
先に白の番人でも仕向けていれば、少なくとも逃亡は防げたはず!

もうひとつ! シャドウが王に要求を突き付けた時、舌を噛み自決すべきだった! 
結界の解除など……2,000年もの間一瞬たりとも許されず……許すべくも無い愚行中の愚行!
この命を尊ぶなどと……陛下ともあろう方が……いや、やはりそれを読めぬこの身の責!


息子達の縄をほどくシャドウ。その足元に転がる錫杖にそっと手を伸ばす。

――――――ヒュッ!!!

風を切る何かが自分の胴体を締め上げた。鞭だ。ラファエルが手放したシャドウの得物。
瞬間、身体が宙を舞い叩きつけられた。幸い地面は苔で覆われ柔らかだった。でなければ失神していたに違いない。
すかさず呪文を唱えるも、詠唱途中で口に硬い何かが差し込まれ、それは喉の奥を突いた。おそらくは……錫杖の柄。

「動かぬが身のためかと。神官長殿?」

騒ぎに驚いたか。ベリルとルークがおぼつかぬ足取りで近づいてきた。
が、手出し無用とばかりにシャドウが首を振ってこちらを見た。月を映し光る眼が人に懐かぬリンクスのようだ。

「二、三、お聞きしたい。YESなら瞬きを二つ、NOなら一つ。宜しいな?」
有無を言わさぬ問いだ。何もせず睨み返していると、鞭が容赦なく締め上げてきた。生木の折れる鈍い音。

「折れた骨の先端が肺腑を抉ればどうなるかお分かりだろう。だがいまは死ねぬ。王の無事を確認するまでは」

口が利ければおそらく笑っていたに違いない。
じわりと相手を揺さぶり苛(さいな)むこの手管。拷問官であればさぞかし有能だろう。
――瞬きを……二つ。
頷いたシャドウが、杖の柄を倒し、顔を横に向かせた。喉に溜まっていた血混じりの唾液がゆっくりと流れ出る。

「‘グレイブ’の事、報告は受けられたか?」

少し間を置き……瞬きを二度返す。
実際、ラファエルからグレイヴの事を聞かされた時は陛下も自分も驚いた。
身まかられていたのは幸いだったが、一体何者が生まれた王子を助けたか? 
どうあっても死なぬ赤子を……あの時地下深くに埋葬した。……いったい誰が……掘り起こした?

「その後の記述。今から17年前に再び出生した赤眼の子。すなわち女王の第一子を地下深くに埋葬した。確かか?」
――瞬きは……ひとつ。NOだ。それを確認したシャドウの眼が見開いた。
「では埋葬せず……幽閉でも?」
――YES。
「よもや……その幽閉の場とは……あの地下牢に通ずる階段途中……小さき扉の牢か?」
――この男……そこまで……!?
「赤眼の王女がその牢に幽閉されている! そうなのか!?」
肋骨と二の腕の骨とが悲鳴を上げた。

――YESだ! YES YES YES YES YES YES YES YES YES YES YES!!!!

「瞬きは二度でいい」
シャドウの顔に安堵の色はない。当然だ。そうと知っていたら魔力結界の解除など頼まなかっただろう。
杖の柄が引き抜かれ、鞭がゆるむ。

「急ぎ城に帰るがいい。……間に合わぬかも知れぬが」

シャドウが示す座標をもとに、【転移】のスペルを唱えた。受け取った錫杖がいつもに増して重く感じた。

175 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/28(木) 06:39:03.89 ID:aAqMh/bX

「父さん!」

父さんは答えない。
さっきまでビショップが居たあたりの苔を鞭でピシピシ叩きながら、何事か考え込んでいる。耳がピクついたり伏せったり。
――もしかして、とんでもなくヤバい事になってる? グレイヴ? 赤眼の王女? 幽閉? 

「ルーク! うしろ!!」
姐さんの声。咄嗟に振り向いたけど間に合わなかった。右肩に一撃を受け、俺は斜面を転がった。

「ゴブリン!!?」
一見ちょっと大きめの毛の無い猿。こん棒を振り回しキイキイわめく集団が、じりじりとその輪を狭めてきた。
――2ダースくらいかなあ。……え? 木の上にも?
……あはは……5ダースは居そう。

父さんが鞭で何匹か弾き飛ばしてるのが見える。でも次々に上から下から飛びかかるゴブリン達に手を焼いている。
姐さんは……奪い取った2本のこん棒を上に横に振りまわして……
たしかゴブリンってあんま人襲わないんじゃ? 川で魚とったり木の実食べてるはずなのに……どうして?

一匹一匹はたいした事ない。けれど群れて来るこいつ等はかなり手ごわかった。
叩きつけた木の棒がぽっきり折れた。
振り下ろされたこん棒を両手で掴み、奪・・・・う~~こいつら握力つよ!! 離せって!!
結構鍛えてる姐さんだけど、やっぱり女は女だ。握力は負ける。
後ろの奴らが肩に飛び乗ってきて……うわっ! いて!! 噛みつくな!!

剣を持っていれば少しは違ってたんだろう。
試しに唱えたスペルは全部不発。やっぱ自分の身体じゃなきゃダメみたい。今回、俺と姐さんはまったくの役立たず。
頼りになるはずの父さんは……何故かまったく魔法を使わない。

……そっか。使わないんじゃない。使えないんだ。
【集団転移】がどれほども魔力を消費するか、一度父さんに聞いたことがあったっけ。
自分一人だと【火炎球】と同じくらい。
他一人を巻き込むと……その二乗。二人だと三乗。三人だと……
うっわ! 今気づいたけど、父さんはその魔力を引きだすのに賢者の魔紋を使ってた。
って事は父さん。立ってるのもやっとなんじゃ……

案の定、父さんがグラリとよろめいて膝をついた。肩で大きく息をしている。
姐さんは……どこ? もしかしてあのゴブリンの山の中に居たりする? 
数匹が飛びかかってきて仰向けに倒された。首筋に突きたてられる尖った牙。

ふと……すぐ横に女の子が立っていた。明るい茶色の髪を肩で結んだ俺と同じくらいの歳の女の子。
夢に良く見たあの子だとすぐに解った。
この話をするたびに父さんも母さんも笑ってたけど、この子は間違いなく運命の人だよ?
優しいし、落ち込んだ時は励ましてくれるし、すごく……可愛いし。

今わかった。君は天使だったんだ。俺を……迎えに来てくれたんだね? 
ゴブリン達が彼女を見て何かわめいてる。――え? もしかして、彼等にも見えてるの?

「イルマ!!?」

父さんが叫んだ声は、鷹と鷲が一斉に鳴く巨大な咆哮に掻き消された。

176 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/29(金) 20:42:13.95 ID:PhDE+DJT

――――ギャッ!!  ギャギャッ!ギャッ!!

ゴブリン達が警戒の叫び声を上げ、方々に散った。
月明かりが微かに差し込むだけの真っ暗な森の中。
見上げてもその姿は見えないけど……あの鳴き声! あの羽音! ライアンが乗ってったグリフォンに間違いない!
――グリフォンは他にもいるよ? 
なんて突っ込む人居るかもだけど、俺、微妙~な音とか匂いの特徴掴むの得意だし、覚えたら絶対に忘れない!

「ライアーーーーン!!!!」

ありったけの声で叫んだ。
声が届いたんだろう。あの独特な咆哮が再び地を揺るがした。
でも……降りてこない。密集した木が邪魔……なのかな? しばらく旋回して……ちょっと! ……おーい……!

「あーあ……」
ペタンと尻もちを付く。
せっかく……「これ」を治してもらえると思ったんだけどな……。

「ルーク!!」
父さんが息を切らして駆け寄ってきた。と思ったら辺りをうろうろして……どうかした?
「さっきここに娘が居ただろう」
――そうそう! グリフォンの登場でうっかり忘れる所だったけど、いたいた! 俺の運命の子!
「……どっか行っちゃったみたい」
「まさか……いや……『彼女』がここに居るはずが……」
父さんの耳がすごい速さでピリピリしてる。こんな父さん初めてだ。
「『居るはずが』って? 彼女の事、知ってるの?」
「ああ。彼女こそ19年前、要塞にて帝国の軍勢を退けた三勇士の一人。名をイルマ・ヴィレン。賢者が守る……眠り姫だ」

三勇士の話なら知ってる。賢者、イルマ、クレイトンおじさんの3人の武勇伝。
どんないきさつで彼女が眠り姫になっちゃったのかって話はそれこそ耳にタコが出来るほど聞いた。
父さんが彼女に惚れちゃったのが原因だとか、いろいろ。

……うん。落ち着いて考えよう。
俺の運命の子。未来のお嫁さん。ずっとそう……信じてた。逢えるかどうかも解らないけど、いつか逢えたらって……
彼女が……イルマ? イルマは父さんの想い人で……って事は、俺と父さんって恋敵……って事でえーと……
あ、でも父さんは母さんともう結婚してるし、俺が取っちゃっても……いやいや、確か彼女、賢者の事好きだって……





「……ルーク?」
眼の前で手をパタパタ振ってる父さんに気づいたのは、かなり時間が経ってからだった。
いつの間にか姐さんがこっちを向いて座ってた。
「ルーク。聞きにくいのだが……まさか……お前…………」
「……そうだよ。彼女だよ。俺の夢に現れる……女の子」
父さんは何も言わない。事情を知らないはずの姐さんでさえ、何か察したのかギュッと膝をかかえる。

「父さん」
「……ん?」
「俺、失恋したみたい」

177 ビショップ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/07/31(日) 05:23:10.30 ID:JCDtfVat

地下牢一帯を埋め尽くす死体。「血の海」という言葉はこのために用意されたものに違いない。
人間か否かの別もつかぬほど細かに千切れ、引き裂かれた肉片が床、壁、天井に張り付いている。
――これが……魔王の性。
結界が解かれた一瞬の隙を逃さず復活したは明白。
――陛下は? ラファエルは? 騎士達は? 剣や鎧の欠片が見当たらぬ所を見れば……うまく地上に逃れたか?

階段を駆け上がり、たどり着いた城のテラス。そこから見える美しい薔薇園。
大理石の廊下、要所に立つ衛兵、忙しなく行き交う侍従達。――おかしい。以前と何も……変わらぬようだが……

意図せず足が早まった。
なりふり構わず全力で疾走する神官長に驚いた文官達が、驚いて道を開ける。

「陛下!!!」

開け放った謁見の間。
緋色の絨毯がいつにも増して眼に染みた。その両脇に立ち並ぶ騎士達。王座側にはガブリエラとミハエルの姿が見える。
王座には……ゆったりと膝を組み、腰かける、美しい王の姿も。流れる黒髪、しなやかな肢体は現女王そのもの。
「待ちかねたぞビショップ」
口調も、涼しげな微笑もいつもと変わらぬ陛下のようだが……。

モーゼの十戒さながらに騎士達が成す回廊を進み、王座近くにて膝をつく。
夜露で濡れた白い長衣は、翻ることなく重く垂れた。
フワリと腰を浮かせ、檀上より降りる王。ゆったり軽やかな足取りはやはり陛下。
そう言えば……と左右を見回す。

「陛下。ラファエルは何処へ?」

王の顔に浮かぶゾクリとする笑み。
突如、蒼い眼は血を湛える赤色へと変化し、汚れ無き純白の衣が、闇の色へと変わった。
向けられた手の平に描かれしは、黒い大円の周囲を九つの小円が囲む「九曜紋」。かの魔王が好んで用いたとされる紋。

「貴方は……第一王位……」

王の指が額に触れる。意識に入り込む瘴気の渦。

――させるものか……

何事か呟く自分の口。紡ぐは【破邪】の神聖魔法呪文。
「ほう? その体(てい)の抵抗……流石は「ビショップ」よな?」
王の手指が額に潜り、そのまま頭を差し貫いた。完成間近の詠唱は途切れた。

「その青い石、貰い受ける」

左手に何かが触れた。
「案ずるな。其方の「陛下」とラファエルもじき後を追おう」

――なんと!? 陛下は生きている? ラファエルも?

暗い闇と静寂が空を満たす。凍える身体。これが……死か。
――が……最後の第一王位いの言葉。まだ望みはある。次なる「ビショップ」が必ずや――――



【ビショップ死亡】

178 赤眼の王 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/02(火) 06:34:08.33 ID:xsR02T7I

――僧正(ビショップ)は消したぞ賢者よ

我が復活に備えし‘五要’のひとつ。ビショップに子は無い。継ぐ者を探し出すは難かろう?


名前:リュシフェール(魔王、闇色の王、赤眼の王、12枚羽根の堕天使など、数々の異名あり)
年齢: 2万歳以上
性別:どちらでもない
身長:170
体重:0
質量:50
種族:天使
職業:魔王
性格:気長、わりと遊び感覚
長所:やる時はやる
短所:支配欲が強い
特技:遺伝子操作
武器:翼
防具:翼
所持品:数種の魔法石
容姿の特徴・風貌:実体がなく、見る者によって異なる容貌・形態を取る(ビショップにはエスメラインに見えた)。
赤い眼が特徴。完全体は背に6対の翼を持つ。
簡単なキャラ解説:地上の生き物達を「平和的に」治めるため降臨した天使の一人。‘魔王’は人間側が勝手につけた通り名。

179 赤眼の王 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/02(火) 06:47:52.11 ID:xsR02T7I

「冷たく光る蒼い石。エターナルストーン。なるほど、不思議と安らぐ。癒しの石と呼ばれし所以か……?」

一人呟く赤眼の王。
謁見の間に響きわたる王の声に反応する者は居ない。騎士達はまるで意思を持たぬ人形だ。その眼は虚空を見つめている。
しかし王は満足気に頷き、青い石を額に「容れた」。まるで青い――第三の眼のように。

「蒼き石よ。我が糧となれ」 

ゆらりと青い炎が王を包み、王の背に一対の黒い翼が生えた。
バサリと翼を動かす。
緋の絨毯が大きく波打ち、小柄なビショップの亡骸がゆらりと揺らぐ。
手にしていた錫杖が硬い石床に落ち、カラカラと乾いた音をたてて転がった。先端のルビーがキラリと光る。

――美しい石には力が宿る。この赤い石も糧となろうか?
そう思い錫杖を拾った王の腕を、落雷の衝撃が襲った。
錫杖を手放したその手から、うっすらと立ち上る黒煙。

「ふふふふ……」
含む笑いは、次第にさも可笑しいと言った甲高い笑いとなった。
数度、その翼で空を薙いだ王がフワリと舞い、檀上の玉座に降り立った。

「羊の如く従順。かと思えば、密かに知識と力を蓄え……我が滅びを画策する儚くも逞しい人間ども」

「嘆け! そして喜ぶがいい! 我が君臨せし……残酷かつ平和なる世の再来を!!」

180 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/02(火) 17:26:19.00 ID:xsR02T7I

「ルーク」
しばらく黙って俺を見ていた父さんが、俺の肩にそっと手を置いた。
「……女は他にも沢山いるぞ?」
――なんか父さんが言うと、在り来たりの言葉が違う意味に聞こえるんだけど。

「女ってば『押し』に弱いのよ? 取っちゃえばいいじゃん!」
――姐さんも人ごとだと思って。なにその無責任な発言。押しまくってたルカインを蹴った人が言う?

でも俺は気づいてしまった。
二人とも俺より長く生きてる。実らない恋だってたくさんあったと思う。
そんな人たちが、たぶんすごく考えて……俺のために言葉を選んでくれて……要は言葉そのものの意味じゃなく……
……
……どうしたんだろ俺。なんだか……胸が張り裂けそうだ。

「泣くなルーク」
――んなこと言われても……これ、止まんないんだからしょうがない。
「今夜は一緒に眠ってやる」
ぎゅっと俺を抱きしめた父さんの言葉に、つい噴き出した。
「ガキじゃねぇし。父さんが『眠らない』ってのも知ってるし。つか俺、こんなだよ? 何もしない自信ある?」
大きめのメロンかな? ってくらいのでかい胸が二つ、抱擁の威力にも負けずにその張りを保っていた。胸筋鍛えてますね~
「莫迦言うな。お前と知っててその気になるか」
なんて言ってるけど、その耳の動きでバレバレだから! いまちょっと腰引いたでしょ!

「うーん……傍から見れば絵になるんだけどな~」
姐さんが俺達見てニコニコしてる。
「勿体ない話よね。早く元に戻って……こ~んな綺麗な人のお相手してみたいわあ……」
――姐さん姐さん! 父さんの前で男好きをアピールしないでっ! 襲われたいの!?



「その話。混ぜてもらっても構わないか?」

いきなり背後からした聞き覚えのある声に、俺と姐さんが飛び上がった。
苔の絨毯からニョッキリ突き出た岩の上に腰かける黒髪の男。服も、腰や背中に差した剣も、別れたあの時のまんまだ。

「ライアン!!」
「いつからそこに!?」
ストンと身軽に着地したライアンが真面目くさった顔で一言。
「……失恋したかも、のあたりから」

――ライアン、あんたって人は……

「遅いご到着ですね? 皇子殿?」
父さんが厳しい顔をしてライアンに向き直った。足早に彼に近づいて……――え? なに? 
――まさか父さん!? 怒ってる!? 俺をこんなにされたから!?
「父さん! 待っ・」

でも俺の予想はあっさり裏切られた。
「久しいなヴェル」
「お懐かしい。最後にお会いしたのは10年前でしたか」
二人は固く手を握り合うと、しっかりと抱き合った。
……ヴェル? 
実は父さんの本当の名前はヴェルハルレン。「ヴェル」なんて愛称で呼ぶのは……ごくごく近しい人だけ。
母さんと……あと確かルーンの皇帝もそう呼んでたって聞いたことがある。

――ふーん。……なんだか……気に入らない。

181 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/02(火) 17:30:08.97 ID:xsR02T7I

「随分と逞しくおなりだ」
「あなたは何故か……老けたようだ」

……ずいぶん嬉しそうだね、父さん。

「良くここに来れたな」
「皇子こそ。あの時の約束を覚えておいでとは……」
――なんだよなんだよ。俺に黙って打ち合わせとかしてたの? つかあんたら。いつまで手ぇ握ってんの?

つい二人の仲に水を差したくなった俺は、さり気に二人の間に割って入った。

「父さん。『あの時の約束』って何さ」
「ん? ああ……」
父さんが、初めて俺に気づいたって顔でこっちを見た。
「20年も前になるか。もし何かあったら……ここで落ち合おうと約束した事があってな」
「何かって……なに?」
「具体的に決めたわけじゃない。不測の事態に備えただけだ」

――へえー。じゃああんた達、阿吽の呼吸? 暗黙の了解でここに来たってこと?

「相変わらず考えてる事が顔に出るな」
ライアンが俺の肩に手を置いた。カチンと来た俺はそれを乱暴にはね退ける。
片方の眉をピクっと撥ねあげて、ため息をつくライアン。
「まだまだガキだな。私に言わせれば……ヴェルの事を『父』と呼べるお前の方がよほど羨ましい」

――そう言えばライアン言ってたね。要塞の門前に居た俺達親子を見て、嫉妬から思わず攻撃しちゃったって。

「……ごめん」
「そんな所も相変わらずだ。とりあえず……すまん。お前をこんなにしてしまって」

――そうだった!

「早く戻してよライアン!」
「んもう! 待ちくたびれたわよ!」
姐さんと俺とに詰め寄られ、流石にライアンがたじろぐ様子を見せた。
「まあ待て。せっかく女になったんだ。勿体ないと思わないか?」
「は?」
ライアンがニヤリと笑って人差し指を立ててみせる。
「戻す前に一発やらせろ。これを機に童貞捨てるのも悪く・」


同時に決まった俺達二人の顔面蹴りがライアンを永久に黙らせた。

182 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/02(火) 17:32:59.38 ID:xsR02T7I

「やったー!! やっぱ自分の体が一番いいね!」
「あはははっ! 魔法も使えるし、最高!!!」

病気になって初めて健康のありがたみを知る……って誰かが言ってたけど、ほんと、そうだね!!
――へっ……くしょん!!!

「……ルーク君、風邪ひいた?」
「……じゃないと思う。俺、半身裸って慣れてなくて……っくしゅん!!」
夏なのに夜風さむっ!! この森の木のせいかなあ……

「おそらくは……地を覆いだした瘴気のせいだ」
父さんの言葉にライアンが頷いた。
「奴の復活には私も気付いた。おそらく王都は……魔王の支配下だろう」
「魔王? さっき幽閉されてたとか言ってた……『赤眼の王女』と関係ある?」
ライアンがくるりと振り向いて俺を見た。その顔にくっきり残る俺と姐さんの靴跡。
「そう。その王女は魔王の化身だったって訳だ。女王が解除した結界の……一瞬の隙をついて復活した」 

「……そうなんだ」
「驚かないのか」
「え? だって、驚いたからって魔王倒せるわけじゃないしっ……くしゅん!!!」
ズズっと鼻をすする俺の肩に、父さんがマントを脱いでかけてくれた。うーん。ちょっと…似合わないかも。

ライアンと父さんがゆっくりと顔を見合わせた。
「やはり……倒さねばならない……か」
「うむ。我等の明るい未来のためにも」
しばらくブツブツ呟いてた二人が、がしっと俺の肩を捕まえた。――え? なになに? どうしたの?

「ルーク! お前が魔王を倒せ!!」
「安心しろ! 私も協力してやる!」
「え?」
「ええーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」


俺の声、もしかしてあのグリフォンの咆哮よりでかかったかも。

183 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/04(木) 13:29:18.99 ID:qH+xYZ3Z

大きな声に驚いたんだろう。木にとまってた鳥が一斉に木から飛び立った。
ざわりと揺れる木々。落ちた木の葉がヒラヒラと舞い踊る。

「……なんで……俺?」
父さんとライアンが黙って俺を見ている。少し離れたとこからベリル姐さんが様子を覗っている。
「世の中にはさ、俺なんかより強くて凄い人、いっぱいいるじゃん。ライアンとか、それこそ、ルカインなんか・」
「ルーク。落ち着いて聞いてくれ」
「……うん」
「お前は『勇者』なのだ」
「……は?」

あははは……

気付いたら笑ってた。
そりゃまあ……父さんには一通り教わったよ? 魔法も、弓も、生き残るための方法も。でも実戦のジも知らない俺だよ?
なに? 勇者? 俺が? 初めての冒険が……勇者になって魔王退治?
「ライアンもそう思ってる?」
「……」
「俺、勇者ってガラ? いいよ。ズバっと言ってくれていいから」
ライアンが困ったように眼を閉じて……見開いた。
「剣は二流。ともすれば三流。魔法はそれなりだが特筆すべき点なし。ついでに言えば危なげでそそっかしい」

……前より評価下がってるのは置いといて……そうだよ。それが俺だよ。

「じゃあどうしてライアンまで俺にそんなの求めんだよ」
ライアンは……何も言わずに唇を噛みしめている。どうしたの? やたら深刻な顔して……なんなの? 本気?
「なんでライアンじゃダメなの!? 責任取りたくないとか!? またいざとなったら逃げるため!?」

いきなり父さんに平手打ちを食らった。
「皇子に謝れ」
「なんだよ! 間違った事言ったかよ!」
言い返した俺を、父さんは返す手で何度も打った。でも痛いとは思わなかった。
「……言う事聞かなきゃ力ずくってわけ? 俺、そこまでガキじゃねえ!!!!!」
「ルーク!! 聞け!!!」
「痛って!! 離せって!!」
「勇者には『勇者の資質』という物があるのだ! 強けりゃいいというものではない! さらに言えば、誰かが勝手に決める物でもない!」
「……え?」

父さんが腕の力を緩めた。その手が少し震えている。俺はそっと父さんの手を離した。
「……どういうこと?」
「お前は2千年前、魔王を封印したアウストラ・ヴィレン・デュセリウムの血を継ぐ者。正統なる勇者の継承者だ」
「……うそでしょ?」
「本当だ」
「……冗談だよね?」
「これが冗談を言ってる顔に見えるか」
「いや……父さんって、いつも真顔で冗談言うから……」

突然鳴き出したフクロウの声に、父さんの耳がピクリと反応した。
いつのまにか、月が西に傾いていた。戻ってきた鳥の羽音と、鹿の鳴き声とが木霊する。
なにかを懐かしむかのように眼を上に向け、父さんが口を開いた。
「真の勇者は……本能的にそれが‘魔王’であると見抜き、排除する。たとえそれが……親切で優し気な好青年であったとしても」
「何の事? 誰のこと言ってるの?」
「イルマだ。彼女は要塞にいたグレイヴという名の青年を、おそらくは自分でも訳も解らず攻撃した」

184 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/04(木) 17:28:36.33 ID:qH+xYZ3Z

「おそらくはグレイヴも魔王の化身。端で見ていた時は訳は解らなかったが、いま思えば納得だ」
「待って。イルマが……勇者?」
「そうだ」
「いつ解ったの? 彼女が勇者だって」
「アルカナンの文献から確信を得たことだ。しかし……そうか。私が彼女に惹かれたのも……そういう事なの……か……?」
ちょ・父さん。いきなりそこ一人で悩む……? ……ん? ……んんー? 待ってよ! つまり……

「父さん!」
しゃがみこんで頬づえをついていた父さんが、ビクッと身体を震わせて俺を見た。
「あのさ、彼女も勇者の血統ってことは……俺とイルマ、血ぃ繋がってるってこと!?」
「イルマは母さん――マキアーチャの妹だ。言ってなかったか」
「……い……妹……?」

俺は苔の絨毯に腰をおろして、そのまま大の字になった。
「ルーク……?」
「ちっきしょおおおおーーーー!!!」

またもや鳥が慌てて飛び立つ音。ライアンと姐さんが目をパチクリしてる。
「あーあ!!!! 初めっから叶わぬ恋だったんじゃーん!!!!」
父さんが哀しげな眼をして……フッと笑った。
「ルーク。初恋など実らぬ方がいいのだ」

……父さん。なにか良くない思い出でも?
俺は口を開きかけて……ふと……音に気付いた。父さんも耳をそばだてている。――なんだろう。敵?

――足音だ。
姐さんもその気配に気付いたのか、その方角を向いて立ちあがった。ライアンが腰の剣を抜く。

足音……と言っても人間のじゃない。キュッキュッっという……柔らかい苔と土を踏みしめる音。
初めは小さい点にしか見えなかったそれが、次第にはっきりした形を取りはじめた。
足の関節が鳴る音と、筋肉がブルッと震える音。カチャカチャ銜身(はみ)を噛む音。馬だ。4頭いる。
その背に跨っているのは――長く淡い色の髪をなびかせた……

「エルフ?」
姐さんの声に父さんが頷く。良かった。エルフなら……敵じゃないよね? 父さんの故郷って事は、知り合いだったり?
ライアンも、抜いた剣を注意深く鞘に戻している。

俺達から数ヤード離れたところで、馬の主達は足を止めた。
先頭に立つのは輝く美しい銀の髪をしたエルフ。綺麗な顔してるけど……眉太めだし……男……かな?
そのエルフが、しなやかな動作で馬から降りた。
まるで体重を感じさせない……地面に降りる時も足音がまるでない……ほんと……森の妖精。
他のエルフ達は降りない。冷たい眼で俺達を見下ろしている。なんか……威圧感……ハンパないんですけど……

父さんが一歩進み出た。うやうやしげに右手を胸に当て、深く一礼する。
「ご無沙汰しております。長老」

185 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/04(木) 17:34:27.12 ID:qH+xYZ3Z

「長老」と呼ばれたエルフは、感情の無い眼でしばらく俺とライアンと姐さんを順繰りに眺めてた。
なんだか……全部見透かされてるような……変な気分。
最後に鋭い目つきで父さんを睨みつけ……

「よくも……よくも災いの種を撒いてくれたな! ヴェルハルレン!」

仰天したのなんのって!
でも一番驚いたのはたぶん父さんだ。フラリとその場に座り込んだ父さんが、両手を地面について頭を下げた。
「もはやご存じとは!! まこと……申し開きの言葉も御座いません!!」
言いながら額を地面にこすりつけ始めた。

これ、俺的にすごいショック。
ついさっき父親面して俺の事引っぱたいてた父さんが平身低頭って……その……ギャップが……
でもこれがきっと……エルフの社会なんだ。「長老」を頂点にした完全な縦社会。
今回の魔王の復活、父さんだけのせいじゃない。むしろ俺のせい。
そう思ったら、俺も父さんの隣で土下座してた。

「すんません! 俺が悪いんです!! 俺が父さ・父の忠告無視して要塞を出なかったらこんな事には……!!」
そしたらライアンまでが……

「私もお詫び申し上げる。ルークを無駄に引っ張り回さねば、このような事態にはならなかった筈ゆえ」
「あの……何だか良くわかんないけど……ごめんなさい」

――あのーー、ライアンと姐さんは謝る必要なくない? 長老の部下でも何でもないんだし。つか姐さんマジ関係ない。



誰かが噴き出す音。続いてクックッと笑いだしたのは……長老!?
「はっはっは!! すまんすまん! つい驚かしたくなってな!!」

――え? ……あの……もしかして……怒ってない?

「さあさあ立ってくれヴェルも、他の客人も! いやいや、ついこ奴に対する昔の恨みが……」

――父さん。昔昔に何やってくれちゃったんですか!
でも良かった。罰としてマッパ逆さ吊り町内一周(殺されるよりイヤ!)とかやられたらどうしようかと思った。
見ると、他のエルフ達もニコニコしてる。ライアンと姐さんはジトーっとした眼でエルフ達を見てるけど、愛嬌愛嬌!
そう思ってホッとしたら、かなりの音量で腹の虫が鳴った。ずっと起きてたからなあ……

「これは気が利かなんだ! 積もる話は後にして、まずは腹ごしらえと致そう!」
「君達、私達の馬にお乗りなさい!」
「若い君は私の後ろにどうぞ!」

やたらテンションの高い長老とエルフ達の手で、彼等の馬に相乗りさせられた俺達。
馬が……ちょっと迷惑そうに歩きだした。

186 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/04(木) 17:35:39.93 ID:qH+xYZ3Z

名前:ミアプラキドス(Miaplacidus)
年齢: 2,120(外見は18歳前後)
性別: 男
身長: 181
体重: 70
種族:エルフ
職業:司教
性格:責任感が強く自尊心が高いが、実はかなり気さく
長所:物知り
短所:使える術は遠視と一部の水魔法のみであり、攻撃系の呪文はまったく持たない
特技:観想術
武器:なし
防具:なし
所持品:手の平サイズの7つの水晶球
容姿の特徴・風貌:長く伸ばしたプラチナブロンドにエメラルドの瞳、枝葉の冠、草色の上着に長衣、白い肩掛け式マント。
簡単なキャラ解説:エルフ族の長老であり、エルフ評議会の会長。魔族が支配していた大陸の暗黒時代を知る人物の一人。
            大陸東方に位置する山脈(エレド・ブラウ)に城塞都市を作り、中央に建造されたエルフの神殿に住む。
            大陸全土の監視役。7つの水晶球を介し、常に各国へ連絡・警告を発信している。

187 </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/04(木) 17:57:43.68 ID:kAF4b02O

流れぶった切りですみません。
魔王側で参戦希望ですが、いかがでしょうか?

188 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/04(木) 18:21:24.14 ID:qH+xYZ3Z

歓迎します!
とりあえずプロフと導入をお願いします!

189 </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/04(木) 19:22:06.48 ID:kAF4b02O

ありがとうございます。
では、よろしくお願いします。

190 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/04(木) 19:22:52.51 ID:kAF4b02O

名前:フェリリル・ガルルグルン
年齢: 外見17歳
性別: 女
身長: 167cm
体重: 56kg
スリーサイズ:84-63-89
種族:魔族(魔狼属)
職業:魔将軍(黒狼戦姫)
性格:誇り高く、正々堂々とした戦いを好む。猪突猛進型
長所:身内には優しい
短所:猜疑心が強い、受けた屈辱は忘れない
特技:獣(猪など)の高速解体、馬鹿力
武器:右手の鉈『ロムルス』と左手の短槍『レムス』
防具:魔狼の毛皮、部分鎧
所持品:八大魔将のひとりを示す魔紋のメダイ
容姿の特徴・風貌:
ややつり目がちな翠色の双眸、幼さの抜けきっていない顔立ち、八重歯
腰まである銀色の長い髪、ふさふさの大きな尻尾、しなやかな体躯(胸は控えめ)
兜代わりの黒い魔狼の頭部と毛皮、棘のついた禍々しい肩当てと腰鎧、チューブトップ
ローレグ気味のショーツ、サイハイソックス、ショートブーツ

簡単なキャラ解説:
かつて魔王が率いた八大軍団のひとつ『魔狼兵団』の軍団長にして族長の娘。
老齢で第一線を退いた父の代理として、魔王の矛となるべく参戦した。
2000年前の戦いで立てた父の手柄話を子守唄に聞いて育ち、自らも父のような英雄になるべく初陣に挑む。

191 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/04(木) 19:27:28.06 ID:kAF4b02O

王都アルカナン、王城内にある謁見の間。
そこに至る通廊を、異形の軍団が我が物顔で闊歩する。
それは、通常この王城内を警備している騎士や兵士たちではない。まして、侍女や文官たちでもない。
――そもそも、ヒトではない。
狼。それも、牛ほどもあろうかという巨大な体躯をした狼の群れだ。
中には人間のようなシルエットの者もいるが、それもやはり狼――狼頭人身の魔物、いわゆる人狼である。
二百頭ばかりもいようかという狼たち。むろん、これらは単なる狼ではない。
毛皮に地獄の瘴気を纏い、鋭く生え揃った牙は終末の訪れと共に世界を噛み砕くと言われる、魔狼の群れであった。

そして、その魔狼たちの最前列に在って獣たちを率いる、ひとりの少女。
少女は長い銀髪と同色の大きな尻尾を揺らしながら謁見の間の前までやってくると、扉の前に狼たちを控えさせた。
人狼のひとりにここで待つよう命じると、一瞬だけ緊張した面持ちをして、謁見の間へと入る。

「――魔王陛下におかれましては、ご機嫌麗しゅう」

少女は堂々たる足取りで謁見の間の絨毯を踏みしめると、魔王の座す玉座のやや前方で恭しく跪いた。

「拝顔の栄に浴せしこと、光栄の極みに存じます。我が名は黒狼戦姫フェリリル――かつて陛下の幕下に属しておりました、覇狼将軍リガトスの娘にてございます」
「此度の陛下御復活は我ら魔族2000年の悲願、まことに祝着至極。つきましては陛下の御為、陛下の矛となり盾とならんが為、罷り越しましたる次第」
「本来であれば、リガトスが拝謁賜らねばならぬところ……、リガトスは老齢にて、かつてのような槍働きは困難でございますれば――」
「不肖このフェリリルが、リガトスの代行として馳せ参じましたる次第にございます。父に勝る働きをお約束致しますゆえ、何卒、わたくしめに地上侵攻の一番槍をお命じ下さいますよう――」

そう言って、首から提げていた鎖を外し、両手で魔王へと捧げる。
鎖についているのは、九曜を象ったメダイ。魔王を中心として八つの軍団をそれぞれ統べる、軍団長の証。
かつて魔王に従った、覇狼将軍の正式な代理であるということの証左。




――遥か昔。この大陸は魔族が支配していた。
オーク、ゴブリン、トロール、魔狼、それら「闇の種族」を従える魔族の王は、12枚の黒き翼を持つ赤眼の魔王。
人間やドワーフ、魔法種族のエルフすら、その威力に屈し、日々労働し、時に挺身を余儀なくされた――

子供の頃、誰もが聞いた御伽噺。
作り物だとぱかり思われていたそれは、何もかもが真実。
そして――

それを証明するべく、今。
御伽噺のひとつが、動き始めた。

192 赤眼の王 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/06(土) 07:09:54.06 ID:J90sRQN2

――――クワァ! クワッ……

何処から入ってきたのか。
漆黒の羽根をバタつかせる鴉が一羽、玉座の手もたれにて遊ばせていた手指にとまった。
我が指を掴むその足先に温みはない。……各地より情報をもたらす闇鴉(やみがらす)。
絨毯脇に控える騎士達の眼がその姿を捉え、わずかに視線を向ける。

――クルルル……
小さなルビーの眼がキョロリと動き、甘え声を出す嘴の隙間から赤い舌がチロリと覗く。
鳥が眼と口にて訴えるは……
「……あ奴が……? 我が瘴気とこの意を汲むとは……しかし久方ぶりよ」
鴉を再び空へと放つ。ハラリと舞う闇色の羽根。
ネズミ一匹入る隙なき謁見の間をしばらく飛びまわり、闇の使い魔は何処かへと姿を消した。

≪――早速に馳せるは其元か。……嬉しいぞ……! ≫

扉向こうに足を止める者に念を投ずる。同時に開く謁見の扉。

>――魔王陛下におかれましては、ご機嫌麗しゅう

臆せずこちらへと歩を進めるは……まだ年若い異形の娘。
遥か昔、共に闘い倒れた筈の盟友リガトス。娘の眼は彼奴の眼に生き写し、瘴気も等しく。
その口上も、礼を尊ぶ彼奴そのもの。
娘が掲げし九曜のメダイも、我が与えしものに相違ない。疑うべくもない、が――その‘力’や如何に?

「娘よ。リガトスが雄姿、今一度見たく思うが……もはや叶わぬと見える」

玉座より腰を上げ、畳む翼を左右に広げた。
色彩豊かな謁見の間がまたたく間に闇に呑まれ……天井に赤く光るは巨大な九曜紋。
娘のメダイが呼応し唸り、赤い光を放つ。
「其元が父から聞いていよう?――五要(ごよう)のひとつ、『勇者』」
「『賢者』が作りし『勇者』は他の三つの要(かなめ)を容易く揃え、再び我を封印せんと動くであろう」
「覇狼将軍フェリリルよ。即刻にアルカヌス闘技場へと向かえ。忌々しき『勇者』の血を絶やすが良い」


――まずは……勇者の芽を摘むが先決。
家畜どもは我等に取っての貴重なる糧。糧に……先導は要らぬ。

193 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/06(土) 07:10:46.75 ID:J90sRQN2

薄暗い森の道を、けたたましく鳴く鳥や獣が横切っては逃げていく。
ギラっと光る彼等の眼。振り向くエルフ達の眼も同じように光ってる。
そういや俺も、クレイトンおじさんに「気味悪い」って言われたこと、あったっけ。

けっこう歩いたと思う。
東の空から差す赤い陽が森の木を赤く染める頃、ようやく大きな門にたどり着いた。
門と言っても王都の城門みたいな門じゃない。
木の枝がいくつも曲がりくねって、自然に門の形になっちゃったような……それでいて綺麗な模様になってる……そんな門。
パット見、言われなきゃ気付かない扉だ。門兵はいない。

「友よ! 我等を受け入れ給え!」

長老がエルフ語で叫んだ。軋む音をたてて開く門。門の向こうは……うわあ…………


朝日が差し込んだその街は、俺達の言う街とは違ってた。まず「地面」がない。
太い幹の所々に、白い漆喰で固められた壁が大きな襞(ひだ)を作っている。
屋根付きの休憩所みたいな場所が木のあちこちにあって、エルフ達が笑いながら談笑しているのが見える。
エルフは眠らない。
きっと一晩中……会話を楽しんだり星を眺めて過ごすんだろうな。

ライアンと姐さんが、たぶん欠伸をこらえてるんだろう。口に手を当てて涙目になってる。
ふあ……俺も……ちょっと眠いかな。
父さんは眼を輝かせて……ほんと懐かしそうに木や家を見上げては感嘆の声を漏らしていた。

長老が馬から降りたんで、俺達もそれにならった。エルフ達が駆け寄ってきて、馬をどこかに連れてった。
俺達が歩いてるのは天然の木の幹が連なって出来た……道路と呼ぶにはあまりにも立体的で危なっかしい道。
歩くというより、飛び移るようにして移動しなきゃなんない。
こんな道通ったことない俺は、あっちこっち珍しい建物に気を取られてはバランス崩して……おっと!!
夜露で濡れた枝で足が滑る。危うく下に落ちそうになった俺の腕を父さんが掴んだ。
「ルーク、ちゃんと下も見て歩け」
……そんな事言われたの10年ぶりかなあ。
ライアンと姐さんはわりかし上手く歩いてる。エルフ達なんかヒョイヒョイっと……言っちゃなんだけど猿みたい。
ふと長老が立ち止ってこっちを睨んだ。
まさか……まさか今俺が「猿」って思ったの……聞こえた!? うそ!!

「ルーク。あまり大声で考えるな。長老はお心の広い方だが……エルフを汚す言葉だけは……」
父さんが親指で喉下を横に切る動作をした。
――やっぱそうなんだ……。こわっ! ――いやあのっ! 俺お猿さん大好きなんですけどっ! 仕草とか可愛いし!
長老がまたまた振り向いて……今度はニコリと笑った。……つ……疲れる……。


「そこの人間」

――え? それってまさか……俺のこと?

194 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/06(土) 07:11:35.66 ID:J90sRQN2

声のした方を見上げると、高い木の幹にエルフが一人腰をかけていた。
緑を基調にしたピッタリとした衣服が、エルフらしい体型を際立たせている。
そういや俺、こんな近くでエルフの女の人見たことない。俺に向かって何か丸いものを放って寄越す。
赤い、見たことない木の実だ。――なに? これ食えって?
エルフが眼を細めて頷いたんで、一口齧ってみる。

――酸っぱ!!!

眼をつむって……いやいや、もうやっとの思いで飲み込んだ。
溢れる唾を飲み込んで……あ、でもこれ、後味がいい。眼が覚めて……しかも身体が軽くなったみたい!

そんな俺をじっと見ていた彼女。ストンと俺のまん前に飛び降りた。
「その実を初めて口にして吐き出さないなんて、やるね、あんた達」
彼女の悪戯な目がニッと笑う。俺と同じ青い眼だ。黄金の髪が風になびいて……天使がホントに居たらこんなかなあ……
「ベラトリクス!」
長老の呼ぶ声に彼女が身を翻す。枝葉の間を飛び移って行ってしまった彼女の姿を、しばらく追う。
――あたっ!
「なんだ。惚れたか彼女に」
「ライアン! 脇腹いきなり突っつくの止めない?」

見るとライアンも同じ実を頬張っていた。向こうの枝に腰かけた姐さんが、男のエルフと話しこんでいるのが見える。
別に広場でも何でもない、太い枝ばかりが張った大きな茂み。あちこちにエルフが腰かけて、珍しそうに俺達を見てる。
もしかしてここ、エルフの宴会場……みたいな場所なんだろうか。
下は……真っ暗で光が届かない……うん。見ないでおく。

真ん中あたりに長老が座ってる。隣に父さん。とさっきの……ベラトリクスって呼ばれてた女の子。
長老が父さんの肩に腕をまわして、囁いたり頬に何度もキスしたり……やたら親しげってか……出来てんじゃねえの? って感じ。
と思えばベラトリクスともベタベタして……。父さんが節操ないの解ってたけど、ちょっとやり過ぎじゃね?

「小僧。お前いくつだ? 名前は? 」
いきなり声を掛けてきたのはライアンより背の高い男のエルフ。
高圧的な物言いだけど、ライアンで慣れてる俺はそんなに悪い感じはしなかった。
「ルーク。17」
「フォーマルハウト。221」
わざとぶっきら棒に答えた俺に、おんなじように返す彼。――ああ、エルフって……こういう人達なんだ。
「お前、純血じゃないな。くせ毛だし、色も濃い」
彼が手を伸ばして俺の髪に触れ……そのまま肩に手を回して、頬に唇をくっつけた。
びっくりして身体を離した。見ると、ライアンも別のエルフと同じようにキスを交わしてる。
いやいや、こんな挨拶は人間同士でも普通だよ。やった事あるよ。
でもさ、こんな……父さんより綺麗な人達と良く平気で出来るよね。流石は……ライアン。

そんなどうでもいいような事で感心していた俺。
剣闘士村に居るはずのシオやリリス達の事をすっかり忘れてた。
王都は魔王の支配下。
祖父ちゃんもルカインも、俺と同じ勇者の血を持っていて、そのせいで命を狙われるかも知れないってことも――


「ルーク! こっちへ!」――父さん? なに?

195 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/06(土) 07:12:51.73 ID:J90sRQN2

懐かしい。ここを出た30年前のあの時と少しも変わっていない。
門の近くに作られた大きな馬屋も、星のように散りばめられた美しい東屋も。
ルークの奴め。慣れぬ道に苦戦しているな? じき慣れる。我らが誇るエルフの神殿まで……しばし。

神殿の遥か上空の一角で長老が足を止める。すでに大勢のエルフ達が我等の到着を待っていた。
古に禁断の実と呼ばれた事もある、赤い実をもぎ取る。小ぶりで硬く、滑らかな手触り。味覚を刺激する鮮烈な酸味。

「ヴェル。あれがお前の息子か」
「ルークと名付けました。未熟なれど、真っ直ぐな心根にて」
「なによりだ。『勇者』の資質。まさか我が孫に過酷なる荷を背負わせることになろうとは……」
澄んだエメラルドの眼に浮かぶ苦渋。
「……その額の印。不老不死のその身に限りある寿命をもたらそう。その覚悟は?」
「我が父、ミアプラキドス。これも天が使命。我が命を散らすも本望と」


鳥の囀りにも似たエルフ達のささやき声。
エルフ流の挨拶に驚いているのか、しどろもどろな息子。あれに伝えたくは無かった。お前が勇者だなどと。

「父よ。この下の神殿は、魔王を封印せし五要の結界のひとつ、と聞き及びました」
優美な眉と耳が物憂げに震える。
「それを何処で?」
「アルカナンの蔵書にて。ベスマを中心とし、各地に建造された封印の石を納めし場だと」
「左様。今現在は聖アルカヌス、ルーン帝国王城、ナバウル王城、ドワーフの神殿がその場となっておる」
「ならば……ルークとその連れにも知らせましょう。今宵の月がそれら結界の場を繋ぐ鍵となることも」



「ルーク! こっちへ!」

その天真なる顔が曇らねば良いのだが……

196 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/06(土) 12:39:09.30 ID:ksEb74yw

2000年前の戦いにおいて、魔王は八つの軍団から成る闇の軍勢を率いていた。
八つの軍団の頂点には、八人の軍団長。いずれも一騎当千の魔将軍ぞろいである。
しかし、地上を完全に掌握していた闇の軍勢は勇者によって首魁である魔王が討たれると同時に瓦解。
組織としての形を維持できなくなり、散り散りになった。

しかし、闇の軍勢は滅び去った訳ではなかった。
ある軍団は峻険な山脈の頂へ。ある軍団は広大な地下迷宮の奥へ。ある軍団は海底へ――
それぞれ落ちのびては雌伏の時を過ごし、いずれ訪れるであろう魔王復活のために牙を研いでいたのである。
魔狼兵団も例外でなく、人里から遠く離れた森に縄張を築き、そこで長い時を過ごしていた。
そして。今やっと、2000年前の復讐を果たすべき時期が到来したのだ。

「老いさらばえた姿を陛下にお見せするのは忍びない、と父は申しておりました」
「また、自分はかつての戦いにて陛下をお護りできなかった不忠者。合わせる顔などない、とも」
「よって――わたくしめが代理を。父の成し得なかったことは、このフェリリルが見事。成し遂げてご覧に入れましょう」

フェリリルは深々と頭を下げた。

>「覇狼将軍フェリリルよ。即刻にアルカヌス闘技場へと向かえ。忌々しき『勇者』の血を絶やすが良い」

魔王の命令に、ぞくり、と肌が粟立つ。
恐怖ではない。それは――歓喜。
黒狼戦姫フェリリルではなく、覇狼将軍フェリリル。その呼び名は、魔王が自分を正式に父の後継と見做したことの証。
その栄誉に対する歓喜の震えだった。

「有難き幸せ。覇狼将軍フェリリル、速やかに御意に沿いまする。――されば我が王、御前を辞すことをお許し下さい」

すくと立ち上がると、凛然たる様子で踵を返す。王の前を辞すと、フェリリルは謁見の間を出た。
と、魔狼たちを控えさせていた回廊で、何者かと行き会う。
それもまた、人間ではない。ひとりは、闇の中から浮かび上がってきたかのような漆黒の魔導師。
ひとり――いや一匹というべきだろうか?銀灰色の毛並みをした、3メートルほどの堂々たる体躯のオーク。
そして、角度によっては深紫色のようにも見える、禍々しい意匠の黒甲冑を纏った騎士。
フェリリルはその姿を視界に収めると、口角を僅かに歪めて笑った。

「無影将軍、百鬼将軍、皇竜将軍か……。遅かったな?残念だが卿らの出番はないぞ」
「この覇狼将軍が、陛下に一番槍を仰せつかったのでな……。わたしが武勲を立てるのを、指でも銜えて見ているがいい」

嘲りの眼差しで三人を一瞥すると、フェリリルは身の内から湧き出る興奮を抑えきれない様子で城を出た。

197 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/06(土) 12:49:47.52 ID:ksEb74yw

フェリリルは一軍を率いると、命令通り王城近くの聖アルカナン闘技場へと向かった。
現在引き連れている魔狼は200程だが、魔狼兵団の本拠地である南西部の迷いの森には、さらに多くの魔狼が棲息している。
あくまで、今回連れてきたのは軍団の一部に過ぎない。――が、闘技場を制圧するには充分であろう。
完全に成熟した魔狼の個体は野生下においては虎さえも喰い殺し、並の冒険者など一蹴する強さを有している。
中級以上の冒険者がパーティーを組み、総力を結集してやっと倒せるか否か、といったところであろうか。
人間レベルでは、いくら腕の立つ者であろうと独力で抗うのは不可能に近い。

「ここが聖アルカヌス闘技場か……。強い力を感じるな。人間どもにしては、だが」

引き締まった細い腰に左手を添え、フェリリルは闘技場を見上げた。
だが、今はこちらのコロッセオに用はない。用があるのは、闘技場の近くにある円形の街――
剣闘士村。

剣闘士村の大きな門の前にやってくると、二人の門兵がすぐに誰何してきた。が、答える義理などはない。
フェリリルが軽く顎をしゃくると同時、二頭の巨大な魔狼が門兵へと襲い掛かる。
門兵の悲鳴を背後に聞きながら、フェリリルは悠々と剣闘士村の門をくぐった。
フェリリルに倣い、魔狼たちも門をくぐって村内へと入る。

「行きはよいよい、帰りはこわい……か。なんとも我々に都合のいい仕組みだな、これで――」
「ここからは誰も出られない。この村は今この瞬間から、我々の手に落ちたわけだ」

にい……と八重歯を覗かせ、凶暴な笑みを浮かべながら、フェリリルは呟いた。

「――往け。適当に暴れてこい」

魔狼のうち、十頭ほどに指示を与える。即座に咆哮をあげ、魔狼たちが街の中に放たれた。
それまでいつも通りの日常を謳歌していた街の中が、瞬く間に阿鼻と叫喚の坩堝と化す。
魔物とは無縁の剣闘士村の中に、突然虎より巨大な狼が十頭も現れ、手当たり次第に暴れ始めたのだから無理もない。

男たちの怒声。女どもの悲鳴。子供の鳴き声。
それらを聞きながら、フェリリルは腕組みする。と同時に配下の人狼たちに村内の人間たちを広場へ集めるよう命じる。

「刃向かう者は殺していい。だが無抵抗の者、老人、女子供はなるべく傷つけるな」
「我らは知恵なき禽獣にあらず。魔王麾下の八大軍団が一翼、誇り高き魔狼兵団なのだから」

これが百鬼将軍の統べるゴブリン、オーク、オーガ等亜人の軍団であったなら、無差別の殺戮劇が繰り広げられていたことだろう。
だが、覇狼将軍はそれをよしとしない。ただ、魔王に命じられたことのみを完遂しようとしている。

198 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/06(土) 12:56:19.64 ID:ksEb74yw

「惰弱な人間ども。ただ安穏と平和を貪る、愚昧なる者どもよ――」
「我は魔王麾下にあって魔狼兵団を預かる者、覇狼将軍フェリリル!この街は我ら魔王軍が完全に制圧した!」
「無駄な抵抗はただ、自らの命を投げ捨てる愚行と知れ。我が要望に応えるならば、手荒な真似をしようとは思わぬ」

街の中央、広場の湯殿の前に立つと、フェリリルは朗々たる声音で言い放った。

「この場に、忌々しき勇者の血を引く者がいると魔王陛下が仰せだ。我と思わん者はこれへ」
「隠すと為にならぬ。なお密告もうけつけるぞ。この者は勇者の縁者だ、と心当たりのある者がいれば、わたしに言え」
「そうすれば、有益な情報を齎した者から優先的に命を助けてやる。だが、もし誰も名乗り出ぬ場合は――」
「一刻に10人のペースで、ランダムにここにいる者を殺す。どうせ街の外へは出られぬのだ、逃走は無意味と知れ」

厳然たる死刑宣告。剣闘士村の人々は慄いた。

「クク……。気に入らぬか?ならば、刃向かってもいいぞ。ここは腕に覚えのある者どもが集まる街なのであろう?」
「このわたしを倒せると。そう思う者がいるならば、前に出るがいい。相手をしてやる」
「むろん、一対一だ。配下どもに手出しはさせぬ……どうだ?この小娘を地べたに引きずり倒さんと思う者はおらぬのか?」

挑戦的な眼差しで、ぐるりと周囲をねめつける。
フェリリルは肩当てと腰鎧以外はまともな防具をつけていない。チューブトップとショーツだけで、あとは裸身が剥き出しだ。
身体つきも人間基準ではそれなりに鍛えているように見えるが、筋骨隆々というわけでもない。
むしろ、女性らしい体格と言うべきだろう。身長も筋肉量も、フェリリルを上回る剣闘士はいくらでもいる。

「どうした?剣闘士ども。力で全てを手に入れるのが、貴様らの流儀ではないのか?」
「ならば、わたしを捻じ伏せて自らの自由と正義を掴み取ってみせろ!勇者の血を引く者を守ってみるがいい!」
「出来るものならな――ハハハッ!アッハハハハハハハハッ!」

フェリリルの哄笑が、広場に響く。
魔狼兵団によって掌握された剣闘士村の中を、重苦しい沈黙が垂れ込めた。

199 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/07(日) 06:49:51.75 ID:Lv5FO4MB

「……子が宿っておる」
思いもかけない長老の言葉に、俺は飲んでた水を吹いた。まともに顔に受けたライアンが、ヒクヒクっと瞼を動かしている。
「ごめんライアン! だってこの人、姐さんの顔見ていきなり・」


父さんに呼ばれて長老の周りに集まった俺達。
他のエルフ抜きで……なんて言って、最下層のエルフの神殿に連れられて……
昔、魔王がどうやって封印されたかとか、五つの結界が何処で、納められてた筈の封印の石が今は無いだとか、
実はここの石も誰かに盗まれたとか延々と難しい話が続いて……ようやく水が運ばれてきて一息入れた、
そんな時の――長老の言葉。
長老もなんか……ぶしつけっていうか無遠慮っていうか……KY?
男好きを絵に描いたような姐さんがまあ……誰かの子を身ごもってたとしても俺は驚かない。
人の人生だし? 責める気だってさらさらない。
でもいきなり「お前妊娠してるぞ?」ってそりゃあんまりじゃね? 少しは遠慮ってか……

「ルーク」
ピタ! っと俺の顔に眼を止めた長老。思わず背筋が伸びる。
「はい! 何ですか長老!」
深~いエメラルドの眼。怖いほど澄みきった眼。そんな眼をギラリと光らせた長老が近づいてきて……うわっ! 殴られる!?

ポン。

――え? 
俺の頭に軽く手を乗せた長老が愉快そうに笑う。
「お前の意見はもっともだ。だが決して私は……KYではないぞ?」
「――あははっ……やっぱ聞こえました?」
「責めてはいない。ルーク。其方に子は居まい?」
こりゃまた無遠慮な……はいはい。どうせ童貞ですよ。さすが、何でもお見通し。
「ルーク!」
「良い! ヴェル!」
俺を窘(たしな)めた父さんが、あべこべに窘められて引き下がる。

「これはとても重要なことだ。このベリルに宿るは……勇者の血ゆえ」
「なにっ!?」
「姐さん!? いつの間に!?」
俺とライアンに詰め寄られ、姐さんは「あははは」と笑った。
「良く分かんないけど、昨日の夜ルカインと……」

――姐さん、あんな事言っててホントはルカインのこと……? ……女って良く解んねぇ。

「評議長」
ライアンは長老のこと、評議長って呼ぶことにしたらしい。大陸すべてのエルフを統べる評議会の会長だから、だそうだ。
「いくらなんでも……早すぎなのでは?」
だよね。昨日の今日で、見立て早すぎ。
「父上」
父さんは父さんで、身内内ではこう呼ぶ。そう! この人! 実は俺のもう一人の祖父ちゃん!
ホンダの祖父ちゃんなら気軽にそう呼べるけど、なんて呼んだら……? おじいさま? じいちゃま? ジジ上なんて言葉ないし……
だいたいこの人。下手すりゃ俺より若く見える。
「長老で良い。ルークよ」
――そうなの?
「我が子は父と呼ぶも良いが、孫達はみなそう呼ぶ。その方が気楽だそうだ」
――確かに! 気ぃ使わないのが一番いいよ!
俺と長老が会話(?)してるのをじっと待っていた父さんだけど、口を出すのを諦めたみたい。何を言おうとしたんだろう。

「勇者の母ベリルよ。其方はこの神殿にとどまるが良い」
「え?」
「魔王とその配下が動き出した。勇者の血を絶やしてはならん」

200 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/07(日) 06:53:24.07 ID:Lv5FO4MB

広場での騒ぎが耳に届いたのだろう。軽く呻き、ベットから身を起こしたのはシオ・ビクタス。
ルカインが放つスタン・モードの師剣で気を失い、今の今まで昏睡状態だった彼だ。
身体がまだ思うように動かず、再びベットに倒れ込む。
「シオ!? 気がついたの!?」
ベット脇でうたた寝していたリリスが跳び起き、シオの上に屈みこんだ。
「気分はどう?」
「ここは……? みんなは……?」

泣きじゃくるリリスが事の次第を話す。――が、ひと際大きく響いた何者かの声。
窓の外に眼を向けたシオの眼が大きく見開く。それは剣士達の雄叫びではなく、まして戦勝の祝杯を上げる声でもない。

>この場に、忌々しき勇者の血を引く者がいると魔王陛下が仰せだ。我と思わん者はこれへ

若い女の……しかし獣じみた息の混じる声。「人狼」の声を何度も耳にしたシオは、すぐにその正体を知った。
「どういう事だ? 『魔王』が蘇ったとでも?」
「ま、そういう事かな」
問いに答えたのはルカインだった。暗い奥の間から姿を見せた彼は銀の軽鎧に身を包み、コンクルシオを腰に下げている。
「しばらく寝てりゃあ良かったな。抵抗さえしなきゃ殺さねってよ。なあ? 爺様」
「ああ」
ルカインの後ろに立っていたのはホンダだ。ルカインと同じ銀の鎧を纏い、右手には大振りのグラディウスを握っている。

「ホンダ殿!? ルカインも何故鎧など!?」
「聞いたろ? 勇者の血は名乗り出ろって」
「私も共に――」
立ち上がりかけたシオは口をつぐんだ。リリスがそっと腕にしがみついたからだ。
「当分ここに居な。そのうち日が差すこともあるさ」

扉を開けて出ていく二人を歯がゆい思いで見送り……ふと思い出す。
2年前のあの日――師がルカインの剣を受け深傷を負ったその時。うわ言のように呟いた言葉。
「結界」「封印の石」「師剣」
今まで気にも留めなかったこの言葉が、何故かいま意味のある言葉となって蘇った。
密かに奪われた力ある石が、姿を変え魔器として存在する。そんな言葉を耳にしたのはいつだったか。
あの師剣、まさか――

201 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/07(日) 06:56:34.42 ID:Lv5FO4MB

>どうした?剣闘士ども。力で全てを手に入れるのが、貴様らの流儀ではないのか?
>ならば、わたしを捻じ伏せて自らの自由と正義を掴み取ってみせろ!勇者の血を引く者を守ってみるがいい!
>出来るものならな――ハハハッ!アッハハハハハハハハッ!


勧告による重い沈黙を破ったのは、昼の対戦にて生き残ったグラディエーターだ。
「勇者を出せ……!? ふざけんな!!」
「居たって口割る奴ぁいねぇぜ! なあ!?」
手傷を負う者や憔悴の色濃い者も居るが、もとより戦う事をたつきの道とした戦士達。
一人の声に次々と賛同し、次第に誰もが声を大にして叫んでいる。
無論誰もが知っていた。勇者の血を引く者。大陸中で知らぬ者など居ない。
最前列の戦士達が剣を抜き、一斉に飛びかかろうとしたその時、何者かが人の波を掻き分け……進み出た。
この辺りでは珍しい金の髪を靡かせる青年と、禿げあがった頭に立派な黒髭を蓄えた中年の男。肩と胸、腰を覆う銀の鎧。

「ルカイン!? てめぇ……!!」
「何でさっさと逃げねぇんだ!? 勇者は俺らの希望だろうがよ!」
手首に赤い輪を嵌めた男が叫ぶ。トンっと剣を肩に置いたルカインが、両足を肩幅ほどに開いて立った。
「『勇者様』が仲間見殺しとか。ありえねぇ」
抜いた剣の鞘を横に放るルカイン。その肩を、ホンダが掴む。
「お前は将来ある身、まずわしが」
「あっ! 俺が負けるとでも思ってる?」
「……ルカイン!」
「……頼むよ爺様。あんたが死んだら誰がここで剣作んだよ?」

ぐっと肩を掴む手に力を入れ……ホンダが後ろへと下がった。
――俺が死んだら……みんなを頼むぜ。ただじゃあ……やられねぇがな。
ゆっくりと腕を伸ばし、切っ先を魔狼の娘に向ける。
「お望み通り、出て来てやったぜお嬢さん。将軍? そのなりで? 差しで勝負? ――はっ! 御大層なこった!」

不吉なる気を察知したか。師剣の刀身が金属的な唸りを上げている。
「ま、魔王の犬にしちゃあ上出来? 頭ん中の脳みそも、ゴブリンよりは御大層ってわけ? イヌだけに?」

ルカインの言葉が聞こえているのかいないのか。眉ひとつ動かさぬ魔狼の娘。
――ちっ! 挑発には乗らねぇってか。見かけ通りじゃ……無い。覇狼将軍フェリリル。その名前、覚えとくぜ。
剣の鳴りが唸りを増す。

「行くぜ……子犬ちゃん」
言うが早いか、剣先から重い衝撃派が放たれた。続き娘に迫るルカイン。当たると同時に決める気だ。

「――受けてみやがれっ! 左か! 右か! 見切った奴は誰も居ねえ!!」

202 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/07(日) 10:32:06.64 ID:I7AqIVtL

気色ばむ剣闘士たち。無遠慮に向けられるその敵意、怒気を微風のように受け流しながら、フェリリルが笑う。

「ほう。束になってかかってくるか?それでも構わぬぞ……手間が省ける。その方が貴様らに有利よな、配慮が足らなんだ」
「一対一とは、あくまで貴様ら剣闘士の誇りを尊重してのこと。しかし、群れで来ると言うのならそれも善し」
「とはいえ……貴様らに勝ちの目などないことには変わらぬがな」

にい、と八重歯を覗かせる。まさに一触即発といった雰囲気の中、

>「『勇者様』が仲間見殺しとか。ありえねぇ」

人波を掻き分け、金髪の青年と禿頭の中年が進み出る。
フェリリルは片目を眇めた。

>「お望み通り、出て来てやったぜお嬢さん。将軍? そのなりで? 差しで勝負? ――はっ! 御大層なこった!」
>「ま、魔王の犬にしちゃあ上出来? 頭ん中の脳みそも、ゴブリンよりは御大層ってわけ? イヌだけに?」

青年――ルカインが嘲るように言う。挑発であるのは明らかだ。
フェリリルは口許に浮かべていた笑みを消し、腕組みしたままその言葉を聞き流す。
青年から感じるのは、光の気配。成る程、魔王に確認を取るまでもない。『これ』だ。
さっさと姿を現してくれたのは都合がいい。弱い者を殺害するのは、魔狼の長の矜持に反する。
とはいえこの自称『勇者』も、自分にとっては弱者に変わりないのだが――。

青年が構える。だが、フェリリルは構えない。尊大に腕組みしたまま、背の得物も抜かない。

>「行くぜ……子犬ちゃん」

言うが早いか、ルカインの師剣コンクルシオから衝撃波が放たれる。ゴウッ!と音を立てて迫る、飛ぶ斬撃。
しかし。

「――――かッ!!!!」

衝撃波が直撃する寸前、フェリリルは大きく双眸を見開き、一声短く吼えた。
その瞬間、フェリリルを中心に発生した不可視の衝撃が同心円状に爆発する。バギィンッ!と甲高い音を立て、衝撃波が砕け散る。
迫るルカイン。衝撃波と同時に繰り出される斬撃は、彼の言う通り今まで多くの敵を屠ってきたのだろう。
必殺の剣撃を前に、フェリリルは僅かに笑みを深めると、

「不敗の剣技か。面白いな――しかし、よ」

腕組みを解き、僅かに目を細める。

「たった今から、不敗でなくなる」

203 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/07(日) 10:38:35.40 ID:I7AqIVtL

ガギィィィッ!!
硬いもの同士が激突する、甲高い音が響き渡る。
ルカインの剣は、フェリリルの右へ。右利きの者にとって、右側への攻撃とは受けづらいものである。
だが、それはあくまで相手が右利きであった場合だ。

「見切る必要などない。両方防げばよいのだからな」

フェリリルが笑う。繰り出された師剣の一撃は、いつの間にか抜いた鉈によって食い止められていた。
右手に肉厚の鉈。左手に柄の長さが70センチほどの短槍。
双方ともに、地獄の獄炎と冷気によって鍛えられた魔性の武具である。
仮にルカインが左側へ斬り込んでいたとしても、それは短槍によって受け止められていただろう。

「……児戯にも等しい、くだらぬ技よ。これが自慢の必殺剣か?勇者どの」
「だとすれば、音に聞こえた勇者とやらもたかが知れるというもの。魔王陛下に挑んだところで、億分の一の勝機もなかろうが――」
「これも御命である。貴様の命、覇狼将軍フェリリルが貰い受ける……この世の名残に、魔狼のおらびを聴け!!」

ガィンッ!と鉈を振って剣を弾き返すと、フェリリルは大きな尻尾を揺らして軽く間合いを取った。
にぃぃ……と闘争の喜悦を露にした笑みを浮かべ、ルカインを見る。

「さて、貴様の攻撃は防いだ。ならば、ならばよ――次はこちらの番、だな!」

狂的な笑みを満面に湛えたまま、フェリリルが迅る。
瞬間的にルカインへと間合いを詰めると、左手に持った短槍を目にも止まらぬ速度で突き出した。

「ウララララララララララララララララララララ――――――ッ!!!」

冷気を迸らせる穂先が幾重にも見える、光速の刺突。それがルカインの全身を狙う。
かと思えば、瞬間的に攻撃をスイッチして右手の鉈による重い一撃。鎧ごと骨をも両断する一撃が、ルカインの身体を掠める。
速度と手数を重視した短槍と、一撃の破壊力に重きを置いた鉈。
硬軟と剛柔とを織り交ぜた闘法が、ルカインを息つく暇もなく攻め立てる。
生身の人間ならば、こんな戦い方をしていてはすぐに息が上がってしまうだろう。
だが、フェリリルは人間ではない。
魔族の強靭な筋力に裏打ちされた膂力と、瞬発力。そして潤沢な持久力が、フェリリルの一見滅茶苦茶な闘法を支えている。
そして、フェリリルにはもうひとつ。

「アッハハハハハハッ!どうした勇者!わたしを犬と愚弄した、先程の威勢はどうした!」
「やはり、人間の勇者など取るに足らぬ!さっさと貴様の首級を挙げ、陛下の御前に献上してくれるわ!」

ルカインがフェリリルの振り下ろした鉈を受け止める。そのまま、ふたりは鍔迫り合いにもつれ込む。
フェリリルがルカインの至近で大きく口を開く。『かあッ!!!』と、再度の短い咆哮。
ルカインの身体が、まるで布切れのように後方へ吹き飛ぶ――。

『死の咆哮(モータル・ハウリング)』。上位の魔狼は己の咆哮に魔力を宿し、咆哮と共にそれを放射することができる。
あるときは衝撃に、またあるときは障壁に変わる、攻防自在の声。それがある限り、フェリリルが倒れることはない。

「貴様は人間の中でも、突出した剣士なのであろうな。太刀筋からも、それがよくわかる……貴様は強い」
「されど、されどよ――それはあくまで人間の強さ。人間としての強さの範疇を超えてはおらぬ」
「我ら魔族とは、根本的にものが違う……ということよ!」

傲然とそう言い放ち、短槍の穂先を突き出す。

「さあ――。死ぬ準備はいいか?」

204 ルカイン </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/08(月) 06:22:39.38 ID:nIVMOkRM

>ガギィィィッ!!

――なにいっ! 受けたっ!?
右方より袈裟がけに振り下ろした剣が、何彼の武具にてガッチリと受け止められている。
――鉈か!? ……そんで左には槍!? 
左右どっちも……っていいように見えてそうじゃねぇ。片手だぜ? 
今までにも居たには居たが、トロルかオーガか、とにかく山みてぇなガタイの奴ばかりだ。
奴らでもまともに受けりゃあ腕ごと粉々。
それを易々! しかもこの余裕の笑み! 伊達に将軍(ジェネラル)の名をしょってねぇってか!

即座に弾かれ、将軍の間合い近くに着地。すかさず入る槍での応酬。
目視は不可。音速をも超えるかと思われる速さの突きだ。かわし、いなすが精一杯。
――うそだろ!? 攻めに転じる隙がねえっ! ……と思えば……
――――ザンッ!!!
思いがけぬ方角より入る鉈の一撃。
空が両断され、ヒヤリとした何かが耳元を掠める。その側に意識を向けていなければ、衝撃で鼓膜が破れていただろう。
斬られた金の髪が束になり、キラキラと宙を舞う。舞う髪をすべて射落とすかの如く繰り出される突き。
そして一撃。そして刺突。
――こいつっ! なんてぇスタミナだ! 
――特に右! 疲労でスピードが落ちかかる……その直前に左! 瞬く間の回復! 上手い事スイッチしやがる!

≪ガキッ!≫

――くっそ受け止めちまったっ! 

相手は諸手。早く押し返さねば右の突きが来る。
警戒し左に回り込むも意外、娘は槍を持ったままの右手を鉈の柄にかけ、ギリギリと迫った。
鉈は鍛えられし金属。対して師剣は磨かれし石。金と石とがこすれ、散る火花。匂い立つ異臭。

「ひとつ、聞いていいか?」
「魔王ってのはどんなんだ? やっぱ角があってでっけぇカニみてぇな手足なのか?」
「蝙蝠みてぇな羽根に熊みてぇな鉤爪。ぞっとすんなぁ……おい」

――押し合う力、そのものは互角。
相手の乗せる体重を上手く使えりゃ隙を作れる……などと思う矢先。
眼前に開かれた口。連なる尖った乱杭歯と血のように赤い口中が、見えたと思った瞬間身体が大きく飛んでいた。

群衆の頭上を飛び越え、二階建ての石壁に激突。ガラガラと崩れ落ちる割石と共に落下した。

205 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/08(月) 06:24:44.70 ID:nIVMOkRM

「ルカイン!」

建物近くに控えていたホンダが駆け寄った。鎧の胸部が大きくへこみ、圧迫している。急ぎ鎧の繋ぎを解いてやる。
「すまねぇ。爺様」
口端から一筋の血を流し、ルカインが起き上がる。肋骨が数本やられている。
「そのなりじゃ戦うのは無理じゃろ。やはりわしが・」

向かい来る娘の気配。急ぎ師剣を祖父に手渡す。

「たのむ爺様。この剣は『封印の石』のなれの果てだ」
「な……何と言った……!?」
「アルシャインのおっさんによりゃあ……聖アルカヌスから石が奪われた数日後、突如現れた師剣。自我を持つ石の剣だと」
「……ルカイン……」
「俺が時間を稼ぐ。もとの場所に返してやってくれ。地下を通りゃあすぐだろ?」



>さあ――。死ぬ準備はいいか?

固唾をのむ群衆が道をあけた。……魔狼の娘がこちらを見ている。向けられた槍の穂先。
「少しは……休ませてくれ将軍さんよぉ……」
傷む胸を庇いつつ立ち上がる。その手に武器はない。

「アルシャインって知ってっか? 10年前、あそこの闘技場で優勝かっさらったって伝説の剣士」
「そいつにだって負けたことがねぇ……そんな俺が初めて敵わなかった戦士があんたってわけ」
「力、スピード、スタミナ、どれもこれも完敗。流石は将軍。是非その将軍様のご慈悲にすがりてぇところだ」

ふらふらと娘に近づき、その前に膝まづく。
「ま、早い話。見逃してくれ」

じっとルカインの言葉に耳を傾けていた群衆が、にわかに色めき立った。
「血迷ってんじゃねぞコラ!」
「てめぇなんぞ勇者でも何でもねぇ!!」

罵る男達が我先にとルカインに掴みかかった。

206 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/08(月) 06:25:53.62 ID:nIVMOkRM

――赤い九曜の光が天井から差す謁見の間。

フェリリルが退出したあと、さらに三名の将軍が同時に拝謁を終え、扉へと引き返す……その途中。
緋の絨毯を踏む漆黒の魔導師がおやと首を傾げた。
立ち並ぶ騎士の向こう、絨毯より外れた冷たい床に転がるひとつの死体。
誰もが気にせぬ人間の死体。抵抗せぬ者には寛容だが、さもなくば容赦せぬ魔王の仕業か。
仰向けに倒れ、閉じた眼から血を流す15,6の少年。仕立ての良い白の神官服に、白い錫杖。おそらくはここの筆頭神官。
無論、死体に覚えはない。が、その脇の転がる錫杖。その先に嵌められた赤い石……この波動……よもや……?

「如何した無影の」
魔王が見咎め、声を掛けた。
「陛下。何故エルフ族が守る封印の石がここに?」
「……その経緯は知らぬが……我はそれに触れることが出来ぬ。其元が預かるか?」
先を行く将軍二人が只ならぬ形相にて振り返る。
「有難きお役目。是非に拝命いたします」

無造作にその柄を掴み取る。唸る波動を感じるが、特段どうということもない。
王が頷いている。
足を止めている二人を促し、扉へと向かう。

「ミアプラキドス。我が相手はお前のようだが……ククッ……不足はないぞ」
無影の将の呟きは、同格の将の険を一層濃いものとした。

207 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/08(月) 19:21:24.02 ID:0PeNEJcV

勝負はついた。
多少は腕に覚えのある剣士だったようだが、所詮は人間。圧倒的な身体能力を有する魔族に敵うべくもない。
フェリリルはルカインへとどめを刺すべく、一歩を踏み出そうとした。

「弱者をいたぶる趣味はない。一息に楽にしてやろう」

そう言い放った瞬間、何のつもりか無手のルカインがこちらへと近付いてくる。と思えば跪き、

>「ま、早い話。見逃してくれ」

などと言い出した。
恥も外聞もない命乞いに、戦いを見守っていた剣闘士たちが気色ばむ。
今まではルカインを応援していた者たちが、今やすっかり手のひらを返し、勇者を名乗った男へ罵声を浴びせている。
跪いていたルカインは、あっという間に剣闘士たちによって取り押さえられ、地面に顔を押しつけられた。
そんな人間同士の醜い遣り取りを、フェリリルは得物を両手に提げたままでじっと見つめていたが、

「フッ……、フハハハハハッ、アッハハハハハハハハハッ!!」

突然、声も憚らずに笑い始めた。

「本当に、人間という生き物は間抜け揃いだな。呆れてものも言えぬとはこのことよ!」
「そんな猿芝居でこの覇狼将軍を欺けると思っている勇者も、まんまと勇者の猿芝居に騙される貴様らもな……!」
「自らの誇りを捨て、卑怯者の謗りを受けても、他人のため時間を稼ごうという肚か。大した決意よな、勇者どの?」
「あの剣はどうした?あの衝撃波を飛ばす石の剣――あれはただの剣ではなかろう?凄まじい力を感じたぞ」
「戦士にとって、武具は命。それを手放したということは、命を手放したということ。つまり――」
「勇者よ。貴様はもう死ぬ、ということだ。とっくに覚悟はできているのであろう?」

ゆっくりと、フェリリルは右手の鉈を振り上げた。

「惜しいな。貴様がわたしの外見に惑わされず、最初から本気で来ていたならば。もう少しいい勝負ができたやもしれぬのに」
「とはいえ……わたしにはまだまだ奥の手がある。貴様がどう足掻いたとて、勝ち目などありはせぬがな」
「そして。勇者の血を絶やすのは我が意思でなく、魔王陛下の思し召しである。わたしの一存で助命はできぬ」
「さあ、もう善かろう。あとは冥府より、魔族が地上を蹂躙するさまを見届けるがいい」
「――さらば、だ」

そう言って僅かな憐憫を双眸に宿すと、フェリリルはルカインの首めがけて鉈を振り下ろした。

208 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/08(月) 19:27:25.74 ID:0PeNEJcV

「さて。この場所にはもうひとり、勇者の血を引く者がいたはずだ。勇者と共にいた、髭面の男。どこへ行った?」
「この街は自由に入ることはできても、出ることはかなわぬ。だというのに気配がない、ということは――」

フェリリルはそっと目を閉じた。

「ち……!抜け道か!勇者め、ひとりを逃がすために我が身を犠牲にしたというのか……!」

意識を集中し、気配を追う。――微弱な光の気がひとつ、ここから遠ざかってゆくのがわかる。
豁然と目を見開くと、フェリリルはすぐに残る勇者の血筋――ホンダを追跡しようとした。
しかし。

「おっと!そう簡単に後を追わせるとでも思ってるのか?」
「俺たちは剣闘士だ。手をこまねいているだけってのぁ、剣闘士のプライドが許さねえんだよ!」
「今度は俺たちと遊ぼうぜ、お嬢ちゃん!」

フェリリルの行く手を、手に手に武器を持った十数人の剣闘士たちが遮る。
それは先程ルカインのことを罵倒し、その身体を押さえつけていた者たちだ。
ルカインがホンダを、そしてここにいる者たちを救おうと芝居を打ったにも拘らず、それに気付かなかった者たち。
すべてが終わった今になって、やっと自分たちの犯した過ちに気付くとは。なんと愚かな者たちなのだろう?
――だが、その愚かさこそが偽らざる人間の性であろう。
剣闘士たちの様子に、フェリリルはニイ……と口の端を吊り上げて笑った。

「ほう。抵抗せねば殺さぬと温情をかけてやったにも拘らず、敢えて我が前に立ちはだかろうと言うのか?」
「それは。蛮勇か?功名心か?それとも――勇者に対する贖罪か?」
「いずれにしても、その意気や善し。決して勝てぬと分かっていながら、なおも抗わんとする貴様らの愚かさに敬意を表し――」
「みな、骨も残さず啖ってやろう。――遣れ」

得物を背に納め、フェリリルが右手を軽く振る。
その途端、フェリリルの背後に控えていた二十頭ばかりの魔狼が咆哮をあげて剣闘士たちへと襲い掛かった。
たちまち繰り広げられる、血みどろの殺戮。血と臓物の濃厚な匂いが辺りに立ち込める。
その様子を、フェリリルは目を細めて見守っていた。

209 </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/08(月) 20:02:38.50 ID:0PeNEJcV

皇竜将軍リヒトは謁見の間を出ると、微かに甲冑の音を鳴らしながら回廊を歩いて城の外へ向かった。
魔王によれば、覇狼将軍は聖アルカヌス闘技場へ向かったという。剣闘士村にいる勇者の子孫を葬り去るためだ。
百鬼将軍はやや遠方の国を攻めに行くという。オークやゴブリンなど、亜人からなる無頼の集団である。
飛蝗のごとき貪婪ぶりで、おそらく見事に王の期待に沿うに違いない。

無影将軍は魔王軍でも最高の魔術の使い手。
人間の死体が持っていた石を得ると、エルフの長の名を呟いていた。恐らく、エルフを根絶やしにするつもりなのだろう。

アルカナンの王城を出ると、リヒトは空を見上げた。
灰色をした薄曇りの空を、赤、青、白、黒、緑の色をしたドラゴンが大きな翼を広げて悠々と飛翔している。
魔狼兵団の率いる魔狼、人狼の数は、およそ10000ほど。
百鬼将軍の束ねる妖鬼兵団のオークやトロール、ゴブリン等は4~50万はいるだろうか。各地から掻き集めればもっとかもしれない。
魔力によってゴーレム等を創造する無影将軍の降魔兵団は、無尽蔵とも言える数を生み出せよう。
では、皇竜将軍の束ねる竜帝兵団どうか。
竜帝兵団の兵数は、五。
王都の空を舞う五匹のドラゴンが、竜帝兵団の戦力のすべてである。
だが、それで竜帝兵団が他の軍団に劣っているかというと、そうではない。
竜帝兵団のドラゴンたちは、それぞれが『エルダー』クラス。伝説級を除き、現在確認されている最強のドラゴンである。
むろん、人間にどうこうできる存在ではない。それが五匹――王都を。魔王の座す玉座に至る道を守護している。

現状、アルカナンに集った軍団は四。
残りの四軍団を統べる将軍の姿はない。――だが、これは無理からぬことと言えよう。
2000年前の戦いで、魔王軍は人間やエルフ、ドワーフといった地上に生きる者たちと戦い、壊滅した。
魔王は封印され、八大軍団の魔将軍たちもその大半が討たれ、戦死したのだ。
生存しているのは王の下に馳せ参じた無影将軍、百鬼将軍くらいのもの。
覇狼将軍は生きてこそいるものの、老齢によって娘に跡目を譲った。
残りの四軍団は将軍が戦没し、といって後継者もおらず、軍団として動くに動けない――といったところなのだろう。
最悪、魔王軍はかつての半分の軍勢で世界侵攻を進めなければならない。

しかし。
それは所詮、些事でしかない。
魔王は強大であり、人間どもは脆弱である。堕落しきった現在の人間には、かつてのように一致団結など出来はすまい。
まして、人間どもがこの王都アルカナンを奪還するなど――。
魔王軍にあって最強の誉れも高い竜帝兵団を統べる、皇竜将軍リヒトがいる限り。

210 </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/08(月) 20:04:33.32 ID:0PeNEJcV

名前:リヒト・ヴァル・ロー
年齢: 外見24歳
性別: 男
身長: 181cm
体重: 79kg
種族:魔族
職業:魔将軍(皇竜将軍)
性格:無口かつ冷静
長所:義妹にだけは甘い
短所:口数が少ないため、よく人から誤解される
特技:強靭な胃袋で何を食べても死なない
武器:竜剣ファフナー
防具:竜鎧ティアマット
所持品:八大魔将のひとりを示す魔紋のメダイ
容姿の特徴・風貌:
精悍な顔立ち、額の右側から左頬へ抜ける刀傷、蒼い瞳、金色の髪
古竜の鱗で作られた漆黒(角度によって深紫に見える)の鎧を纏い、腰に竜戦士の証である剣を佩く
真紅のマント、平時は兜をかぶり顔を隠している

簡単なキャラ解説:
魔王麾下八大軍団の一角『竜帝兵団』の軍団長。
前大戦で戦没した先代皇竜将軍の代わりに軍団を継ぐも、先代との血のつながりはない。
八大軍団最強との呼び名も高い『竜帝兵団』を、五匹のエルダードラゴンすべてを捻じ伏せた後に継承した。
現魔王軍では主に王都の警護を受け持つが、有事の際には自ら出撃することも厭わない。

211 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/10(水) 06:21:33.20 ID:l1b7ctIe

「魔王とその配下が動き出した。勇者の血を絶やしてはならん」

長老が礼拝堂の檀下に置かれた巨大な水桶を手で差した。
ゆらりと澄んだ水を湛えた円形の縁を持つ磁器の水桶――水鏡(みずかがみ)。
俺らには何にも……見えないけど。

「1万年もの昔より、大陸全土を支配せし魔王。またの名を12枚羽根の堕天使。配下の八魔将が動くは当然か」
ライアンがお得意の蘊蓄を披露する。
「評議長、その水鏡にてすべてが確認可能だろうか?」
ライアンの問いに、長老が頷いて……だけどすぐに横に振った。
「これが映すは現在と近未来のランダムなる断片。すべてを映すがすべてを正確に把握は出来ぬ」
「では、今は何を?」
「魔狼の群が『村』を襲っている」眼を細め、鏡に眼を落とす長老。

「村!? それって剣闘士村のこと!?」
思わず叫んで、ハッとして父さんを見る。その眼が明らかに「黙れ」と言っている。長老が何も言わず俺を見て、そして続けた。
「金の髪の青年が対峙するは九曜のメダイを首に下げた魔狼の娘……」
「九曜のメダイ? つまり……八魔将の一人がルカインと?」

――た……たいへんじゃん! すぐにでも助けに行かないと・あ痛いてて!! ――父さん!! 耳はやめて耳は!!

「ルークよ。我々は他に成すべきことがある」
長老が俺を見てる。とても真剣な目だ。
「我々は『五要』と、そして結界に納める封印の石を見つけねばならぬ」
「ごよう……って……勇者、僧正、戦士……魔法使いに……あれ?」
首を捻った俺をライアンが小突く。
「賢者だ。一番大事なの忘れてるぞ」
「そっか。賢者はやっぱ……要塞の?」
「うむ。賢者と僧正は昔からそれと決まっているからな」
「戦士と魔法使いはライアンと父さんで決まりだね!」
ライアンと父さんが顔を見合わせる。
「もちろんいいぞ。お前がそう言うなら」「勇者の指名だ。謹んでお受けする」
――ん。俺いま……さらっと大事なこと決めちゃった?

「で……? 僧正は誰なの?」
「ビショップだ。2,000年前から続く神官の家柄だ」
「そのことなのだが……」
「……長老?」
「彼はもうこの世にいない。ついさきほど、魔王自らの手で惨殺された」
「なんと……!? それは真(まこと)ですか!?」
「すまん。言ってなかったか」

父さんがため息をついて座り込んだ。
「私が……あの時帰しさえしなければ……」
「気に病むでない。止めたとしても奴は戻った。魔王の復活も……結界解除をせまったお主のせいではない」
「……結界……」
ますます頭を抱え込む父さん。
「気に病むなと言っておろう。そもそもお主がここを出ずば……真の勇者であったイルマがああなったのも、すべてお前の……」
「ああああああああ!!!!!」 
――長老……もしかしてワザとやってる……?


ルカイン死亡の知らせが入ったのは、それからかなり後のことだった。

212 ルカイン </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/10(水) 06:27:42.34 ID:l1b7ctIe

無抵抗なのをいいことに、男達は次々に殴りかかってくる。
羽交い締められ、顔を腹を殴りつけられ、ついには腕を後ろに回され、硬い地面にねじ伏せられた。
ギリギリと頭を踏みつける複数の足。冷たい敷石が頬に食い込む。
息が苦しい。吸う度に押し広げられる右胸の腔。吸った空気がすべて肺から洩れているのだ。

――ハァ、ハァ、……こんな風にフクロにされたの、何度めだっけな。
ガキの頃、チンピラの女に手ぇ出しちまって……三日三晩寝込んだっけか。
あん時も折れたアバラが肺に刺さっ……ハァ、……ははっ…………ありゃあマジで死ぬかと思ったぜ。

突然、ただ黙って眺めていた魔狼の娘が笑いだした。
剣闘士達が何事かと動きを止める。彼等の視線を受け止め、嘲るように、ゆっくりと語り出す娘。

>本当に、人間という生き物は間抜け揃いだな。呆れてものも言えぬとはこのことよ!
>そんな猿芝居でこの覇狼将軍を欺けると思っている勇者も、まんまと勇者の猿芝居に騙される貴様らもな……!
>自らの誇りを捨て、卑怯者の謗りを受けても、他人のため時間を稼ごうという肚か。大した決意よな、勇者どの?
>あの剣はどうした?あの衝撃波を飛ばす石の剣――あれはただの剣ではなかろう?凄まじい力を感じたぞ

聞いていた男達が、そそくさと……掴む手を、踏みつける足をどけていく。
「今の話、ほんとか?」
「そういやホンダのおっさんが居ねえ!」
「ルカインてめぇ! 水くせぇじゃねぇか!」
ややもすれば泣き出しそうな、情けない声を上げる屈強な男達にふと笑いが込み上げ……しかしせき込んだ呼気は、血の味がした。

じゃり……と石畳を踏む音が、すぐそばで止む。振り上げられた腕が、鉈が、赤い朝日を遮った。
翡翠の眼がこちらを見下ろしていた。その眼に……口元に狂気の笑みはない。そこにあったのは――

――気の毒だとか思ってんのか。だとしたら違うぜ。
――この俺が……いつだって剣に頼ってばかりだったこの俺様が……初めて挑んだ空手の勝負だ。
――勝敗は見えてねぇが……いい線いってんじゃねぇ? 爺様はとっくにあの場所に行ってらあ……

両の腕に懇親の力を込め、身体を起こす。

「言っとくがな、俺は全力だった。全力出して……正々堂々あんたに負けた。――悔いはねぇ!!」



鉈が振り下ろされた。
どおっと横のめりに倒れた地面は何故か温かかった。
――ルーク、後は頼んだぜ。頼りねぇが、それが逆にいいのかも知んねぇ。力押しじゃねぇ、お前の……


自分の名を呼ぶ男達の声は、ほどなくして途絶えた。

213 ホンダ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/10(水) 06:29:02.39 ID:l1b7ctIe

魔狼たちによる一方的な殺戮劇が繰り広げられる一方で、ホンダは暗い地下通路をひたすらに走っていた。

すでに追手が放たれたか。遠く、背後でする魔狼の吠え声に耳を傾けつつ、広い部屋に飛び込む。
剣闘士達が待機する控えの大間。ぐるりと囲む扉のないゲート。この部屋の何処かに……封印の石を納める場があるはず。
そう思い壁や床を手でまさぐるも、それらしい場所はない。
そんな折、沈黙を守っていたコンクルシオがいきなり甲高い音を発した。
「戻るべき場を教えているのじゃな?」

本来この剣は主であるルカインの意思にのみ従い、会話をする。
その剣がホンダの問いに答えた。上下する金属の振動が、意味のある言葉となって彼の心に降り注ぐ。
その中にはルカインの死の知らせも含まれていた。
ぐっと胸が締め付けられるも、もとより覚悟の上。今は死を悼むいとまは無い。
剣の指す場は、丸い大間の……中心。それらしき印も、剣を容れる窪みも無いが……? なにか鍵でもあるのか?

獣の走り来る気配が強まった。
耳をつんざく咆哮と共に躍り込んだのは一匹の狼型(ヴォルフタイプ)の魔狼。
頭を地面につくほどに低くし、じりじりと間合いをつめる魔狼に師剣を向ける。
ルカインならば衝撃派も放てようが、主でない彼には不可能。しかしそれなりの心得はある。
飛びかかる魔狼の下をかいくぐり、下から胸部を突き上げた。
末魔を突かれ苦しみ悶える魔狼から剣を抜き、その血しぶきを避けるように横に転がる。
魔狼が倒れ、その周囲に広がる血だまり。
そう言えば……聞いたことがある。封印の石はその主(マスター)の血に反応し、その力を示すと。

――今更に気づくとは!! やはりルカインをここに寄越すべきだったのだ!!

新手が迫る気配。今の魔狼とは比べるべくもない……凄まじい気。

214 赤眼の王 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/10(水) 06:32:02.45 ID:l1b7ctIe

玉座にて頬づえを突く王が、ふと顔を顰(しか)めた。左腕を這う……チリリとした冷気。覚えのある波動。
かたく両の眼を閉じる。

――近い。……聖アルカヌス。
なるほど勇者め。我を封ずる魔石を手にしていたと見える。
良かろう? 多少の手応えもまた興のひとつ。この五体が石に変わるが先か、我が軍団が其方等を屠るが先か。

……が……其方等。未だ五つの要(かなめ)を揃えていまい。
して……その魔石。……己が五要の血にのみ応じ、その役目を果たすこと。果たして幾人が知る?


≪ フェリリル  アルカヌスの‘あの場’に石を与えるな  勇者の息の根を止めよ ≫

215 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/10(水) 06:33:14.14 ID:l1b7ctIe

「血?」
「左様」

長老がゆったりと近くの座石に腰かける。
封印の石は、ただその場に置けばいいってもんじゃないらしい。
石がその五要をマスターと認め、さらにその血を吸って初めて効果を発揮するって言うんだ。

――石見つけるだけでも大変なのに! 難易度たかっ!

「その『血』って……どれくらい必要なんですか?」
「2,000年前、『勇者の石』と『僧正の石』に与えられし血は、ただの一滴」
なんだ……心配して損した。
「しかし……死をもたらすほどの多量の血を必要とした石もある。『戦士の石』、『魔法使いの石』がそうだった」
「そうなの!!?」

ライアンと父さんの顔を交互に見た。二人とも、静かな眼で俺を見返す。
「ライアン……父さん……」
「そんな顔すんな。行くぞ」
踵を返す二人。二人とも、そのこと、知ってたの? そんな……そんな事って――


「待って!」
俺の声に、二人が振り返る。
「もしもだよ。もし魔王を倒す事をやめたら……どうなるの?」

二人とも何も言わない。黙ったまま座っている長老に眼を向けた。
長老が腕を組んで眼を閉じる。

「勇者が現れるその日まで、我々エルフの一族は魔王の支配を甘んじて受けていた。
人間も。ルーン、アルカナン、ナバウル、その他の小国それぞれが……互いに干渉せず、中立を保ち、ゆえに争うこともない」
「え……それってそんなに悪くないっていうか……」
「ルークよ」
長老がすっと立ち上がった。ゆっくりと……その眼を見開く。
「もし……――そうだな。もしお前の恋人を今差し出せと言われたら……何とする?」
「……え?」
「お前の母を、父を、子供達を、贄(にえ)として使いたいから、今すぐ差し出せと言われ……それに従えるか?」

俺は……何も言えなかった。

216 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/10(水) 14:14:22.24 ID:Hve4R5hi

「これが勇者か……。自らの命よりも、希望を明日へ繋ぐことを重視するとは……度し難い」
「とはいえ、その崇高な意思は称賛に値する。我らとは永遠に相容れぬものとはいえ……な」
「本来ならば、勇者の心の臓を啖って我が力とするところだが……時間がない。すぐにもうひとりを追わねばならぬ」

けしかけた魔狼たちが剣闘士をあらかた屠り終わると、フェリリルは軽く頤を上げ、鼻をひくつかせた。
周囲には、剣闘士たちの濃厚な血と臓物のにおいが漂っている。
が、犬の嗅覚は人間の一京倍。魔狼であるフェリリルも例に漏れず、鋭敏な嗅覚を有している。
例えどんな状況下にあっても、特定のにおいを突きとめるなど造作もない。

>フェリリル  アルカヌスの‘あの場’に石を与えるな  勇者の息の根を止めよ

頭の中に響き渡る魔王の声。伝声の魔法だろうか、それとも精神に直接干渉してきているのか。
いずれにせよ、やるべきことは決まっている。

「御意のままに!」

勇者の血筋、その放つにおいを辿れば、地下通路の場所を突きとめることは容易い。
主に先んじて、一頭の若い魔狼が飛び出してゆく。その後を追うように、フェリリルも地下通路へ向かった。

「クク……。八大軍団最速を誇る我ら魔狼兵団から逃れようなど、無駄なこと――!」

身をほとんど地面すれすれへ伏せ、矢のような速度でホンダを追跡する。獲物を追うのは狼の十八番だ。
やがて、暗い地下通路を抜けた先にあったのは、剣闘士が待機するためのものと思しき広間。
そこに立っている髭面の男と、血だまりの中に横たわる魔狼。

「リカスト……先走ったな」

哀れむように魔狼の死骸を一瞥する。それからホンダを見ると、

「追い詰めたぞ。勇者が命を懸けて貴様を逃した苦労も、これで水泡――というわけだ」

そう言って、つかつかと歩み寄る。

「我がはらからを殺したな。まだ、幼い仔だったというのに。わたしが狩りを教えてやった仔だというのに」
「我らが屠ったのは、貴様らの牡ばかりだというのに。――矜持も恥も知らぬと見えるわ、人間!」

ぐるる、と牙を剥き出しにして唸る。どちらかというと愛らしいと言ってもいい面貌に、憎悪の感情がへばりつく。
視認できるほどの殺気。それを全身から発散しながら、フェリリルはホンダとの間合いを詰めた。

217 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/10(水) 14:17:48.17 ID:Hve4R5hi

「グルルルルルァァァァァァッ!!!」

咆哮をあげ、フェリリルはホンダへと襲い掛かった。
ホンダが魔狼を撃退したときのように師剣コンクルシオを構えるものの、こちらの方が数段速い。
左腕を振るい、バヂンッ!とその手から師剣を弾くと、フェリリルはホンダを壁際まで弾き飛ばした。
ホンダが背中から壁に激突する。
カラカラと乾いた音を立て、師剣が床を滑る。

「フン……」

フェリリルは僅かに顔を顰めた。
左手の小指から、つ……と一筋の血が流れ、床に滴る。どうやら師剣を弾いた際、刃で指を切ったらしい。
だが、こんな傷は殺された仲間の痛み、苦しみに比べれば、何ほどのこともない。
フェリリルは壁に激突し、ずるずると床にくずおれたホンダへと歩いてゆくと、その胸倉を右腕一本で掴み上げた。

「このまま、首をへし折ってやろうか?それとも魔狼どもの餌にしてくれようか?」
「はらからを殺めた者。どれほど残酷な殺し方をしようと、まるで我が哀しみを癒すには足りぬ!」

ギリリ、と右手に力が籠る。このまま頸椎を折ることなど、フェリリルには造作もない。
――だが。
何を思ったのか、フェリリルはホンダの首を締め上げていた手を離すと、ホンダを解放した。

「しかし。しかし――よ」
「ここで貴様を殺せば、自らの命をなげうち、貴様を逃がそうとした勇者の行動が無駄になる」
「魔狼は高潔なる魂に共感する。誇り高き者の魂とは、種族の境を越えて価値あるものなるがゆえ――」
「――よって。今は殺しはせぬ……今は、な」

そう言って、ホンダから背を向ける。

「勇者の遺志を継がんとするならば、去れ。そして貴様のなすべきことをしろ」
「尤も……何をしたところで、我ら魔王軍の侵攻を阻むことなどできはすまいがな……!」

フェリリルはホンダから離れると、床に転がったままの師剣コンクルシオへ手を伸ばした。

「この剣はもらってゆくぞ。勇者が貴様に託した剣……これが陛下の仰っておられた『石』か?」
「勇者の剣だ。正体はわからぬが、陛下に上奏し戦利品として頂くのも悪くない……ふふ」

剣の柄を握り、持ち上げる。左手から流れるフェリリルの血が、コンクルシオの柄を伝う。
その途端、あたかも歌うような音色を立て始める師剣。
その様子はまるで、ルカインの手に在ったときのような――。

218 赤眼の王 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/12(金) 05:42:43.53 ID:PkVePxON

闇鴉の報告にじっと耳を傾けていた王がつと立ち上がった。
芳(かんば)しくは無いその様子に驚いた鴉が急ぎ飛び立つ。
玉座の左右に生えるかのごとく広げられた闇の翼がひとつ羽ばたく。
しんがりの騎士がとつぜん喉を絞められる声を上げ胸を押さえた。
その場にて身悶えし、やがて血を吐き動かなくなる様子を眺めていた王が、扉の向こうへ声をかけた。

「如何した。入るがいい」

躊躇い勝ちに開かれた扉の向こう、立つは長い銀の髪を揺らす一人の娘。その手にあるは師剣。
絨毯を踏むその足取りに、先刻の勢いは無いのは何故か。
道を塞ぐ騎士の死体を、新たにしんがりとなった騎士が脇へとどける。
ゆっくりと時を刻む歩みを止め、膝まづく娘が口を開くその直前に王が口火を切った。

「詳細は良い。我が鴉が知らせを寄越したゆえ」
静かなる口調に滲むいら立ちの色。眼の奥をジリリと焼く黒炎。

「フェリリル。よくぞその師剣の主を仕留めた。褒めてやる。が――」
「なにゆえにいま一人を逃がした。息の根を止めよと……我が干渉、届いた筈だが――」
ヒタリ……
裸足にて段を降りる王の歩みは遅い。返答を待っているのだ。

「どうした。申してみよ。その師剣が新たなる主を得たは何故(なにゆえ)か。剣が認め得るは『勇者』のみ」
師剣が鳴く。魔王を前にし、敵意をむき出しにしているのだ。

「答えよフェリリル。封印の魔石――シールストーン、魔王が唯一の弱点と……知って手にしたか?」
「あの日。我が受けし屈辱が……離反せし八魔将のひとつが五要となったその所為と……知っていたか?」
「ならば……もしそうであれば――」
「皇竜が一翼の赤き竜、うぬが魔狼どもに差し向けるも躊躇わぬ。フェリリル。返答や如何に」

219 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/12(金) 05:58:26.72 ID:PkVePxON

しばらくの間、長老も、ベリル姐さんも、ライアンも父さんも……俺の顔を見ていた。
たぶん、答えを待っているんだろう。魔王を倒すか……倒さないかの。
俺の決断ひとつでこの大陸の命運が分けられる。まさかこんな局面に出くわすなんて思ってもみなかった。
でも……やるっきゃないよね。奥さんや子供差し出すような真似、みんなにさせられるかっての。

「正直言うとさ、ちょっと不安なんだよね」
軽いノリでしゃべりだした俺に、みんなが首をかしげる。
「ライアンは……いっつも秘密抱えてて、な~んか俺に内緒で仕事しそうなんだよね。いきなり消えるし」
「父さんは父さんで、誰かさんの名前が出ると我を忘れてトリップするし、なんかって言うと魔力切れになる事多いし」

二人の顔が曇る。――違う。俺が言いたいのは――

「ライアンはいざって時にはいつも助けてくれる。フサルクの剣持ったライアンは最強の『戦士』だと思う」
「父さんも。どんなピンチもチャンスに変えるの得意だよね? 『魔法使い』としてこれ以上心強い味方いない」
「だから……」

俺はビッと背筋を伸ばすと、ペコリと頭を下げた。
「こんな俺ですが、命預けてください!! 一緒に魔王退治してください!!」

フッと顔を緩ませた二人。
「なにあらたまってんだ」「らしくないぞルーク」
ササッとこっちに歩いて来て、俺の背中を思いっきり叩いた。――っってぇ!!! 祖父ちゃんのより強烈!!

220 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/12(金) 06:00:50.59 ID:PkVePxON

「出発前に確認したいことあるんだけど」
「お? 急に勇者らしくなってきたな」

みんなの顔に悲愴感はない。むしろ生き生きしてる。だよね。いまは「死ぬ」とか考えないっ!!
――まずは装備。二人がローブを広げて中を見せる。

「私の武器はこの鞭と、懐の短剣だけだ。魔力回復の薬草は道すがら摘むことにする」
「私は25本のフサルクの剣と、ホンダから貰い受けたグラディウスが3本」
「俺は……そういや何にも……」
「だと思った」
ライアンがごそごそと長いローブの背中から、一振りの剣を取り出した。
「あ。祖父ちゃんが俺に寄越した奴!」
それを見た長老と父さんの眼の色が変わった。
「ルーク……なんだその剣」「妙な波動よな」

いかにも興味津津って感じでペタペタ剣に触ったり匂い嗅いだりし始めた二人。……ちょっと引いた俺。
「ここを見るのだ。名が彫ってある」「父上……これはなんと?」
「私にも解らん。ルーン文字でもない、おそらくはこの大陸以外の異国文字……」――なんなんですか、いったい。

一通り調べつくした二人が、グイっと俺に剣を押しつけた。
「ルーク。この剣を肌身離さず持ち歩け」
「決して無くしてはならぬぞ? それは師剣に並ぶ勇者の剣ゆえ」 

――ええ!? このなんだか異国情緒感あふれる妖しい剣が!?

「お前が本物の勇者ならば、そこに書いてある名が読めるはずだ」
真面目な顔して父さんが言うんで、目を凝らして見てみたけど……こんな変な文字。読めるわけ……
「ウィクス=インベル」
「ルーク?」
「今いきなり頭に浮かんだ……この剣の名前」
「ウィクス……」「インベル」
「響きは悪くない……どういう意味でしょう?」
長老が眼を閉じる。
「ウィクスは集落。インベルは雨。異国語を古代語に訳した言葉のようだな」

そう言って……ふと長老が水鏡の方を見た。どうしたんだろう。何かの知らせ?

221 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/12(金) 22:05:10.20 ID:SLzOW7vu

強い怒りの波動を感じる。
尻尾が総毛立ち、肌にピリピリと静電気のような刺激が伝わってくる。
アルカナン王城へと帰還したフェリリルは、王のいる謁見の間――その両開きの巨大な扉の前で、しばし立ち尽くした。
剣闘士村にいた二人の勇者の血筋のうち、ひとりは確かに討ち果たした。
だが、もうひとりはと言えば――。
そのことが、たちまち魔王の知るところとなったらしい。流石は魔王、まさに千里眼と言うべきか。

>如何した。入るがいい

謁見を促す声。フェリリルは意を決すると、ゆっくりと謁見の間へ足を踏み入れた。

>フェリリル。よくぞその師剣の主を仕留めた。褒めてやる。が――
>なにゆえにいま一人を逃がした。息の根を止めよと……我が干渉、届いた筈だが――

「は……」

魔王の押し殺したような声が、広間に響く。
本来ならば光栄なことであるはずの労いの言葉が、死刑宣告のように聞こえる。
フェリリルは跪いたまま、頭を一段階深く垂れた。
奪った師剣が、越の後ろで啼く。その敵意が伝わってくる。
この剣――、いったい?

「……確かに、勇者の血を引く者。ひとりを討ち果たし、もうひとりを逃がしました」
「されど……それは我が計。残る勇者の血筋をあぶり出し、纏めて葬り去るための方策なれば――」

視線を床に落としたまま、フェリリルは言葉を紡ぐ。

「既に、かの者の『匂い』は我が魔狼兵団に伝えてありますれば、追跡は至極容易」
「かの者は必ず、残る勇者の血筋の元へと行くでしょう。かの者が行かずとも、残る者どもが接触を図ることは必至」
「勇者とは。勇者の血筋とは、団結するもの――助け合い、補い合うもの。わたくしは、そう父より聞かされましたゆえ」
「ならば――かの者が他の勇者の血筋と合流したときこそが好機。残らず勇者どもを啖い尽くしてご覧に入れましょう」
「すでに追手は放っております。早晩、陛下に吉報をお届けできるかと……」

魔狼の狩りは周到である。
獲物一匹を仕留めただけでは、群れ全体の飢えを満たすことはできない。
よって、敢えて獲物を逃がし、より数の多い獲物の群れを発見してからそれを一網打尽にする。
魔王が魔狼の習性を知悉しているならば、それが決してこの場限りの言い逃れでないことが分かるだろう。

――が、死んだルカインの誇りに敬意を表し、敢えて見逃した――というのもまた事実。
ただ、フェリリルはそちらの事情を胸の内に深くしまい込み、欠片も表情に表さなかった。

222 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/12(金) 22:08:41.60 ID:SLzOW7vu

>その師剣が新たなる主を得たは何故(なにゆえ)か。剣が認め得るは『勇者』のみ

「……なんと?」

ホンダを逃がしたことに関してはうまく説明したつもりだったが、次の言葉はまったくの予想外だった。
魔王の言に、不敬と知りつつ思わず顔を上げる。

>答えよフェリリル。封印の魔石――シールストーン、魔王が唯一の弱点と……知って手にしたか?

「これが……陛下を2000年の間封印していた、シールストーン……。まさか、このわたしを主と?ばかな……」

魔王から石を“あの場”に与えるな、との命令を受けたのは覚えている。
だが、もちろんフェリリルはこの石の剣が封印の石シールストーンだった、などとは知る由もない。
まして、石が魔族である自分をルカインに代わる新たな主人と認めたなどと――。

>あの日。我が受けし屈辱が……離反せし八魔将のひとつが五要となったその所為と……知っていたか?

魔王の怒りの波動がダイレクトに伝わってくる。産毛がピリピリと反応する。
――そうだ。その話は、父からもううんざりするほど聞かされている。
栄光ある魔王の八大軍団、それを統べる八大魔将のひとりが裏切り、勇者側についたということ。
それが魔王軍の崩壊、ひいては敗戦のきっかけとなったのだということ。
今だに魔王軍の中では忌むべき存在となっている、その裏切り者の名を思い出すと、フェリリルは再び頭を垂れた。

>皇竜が一翼の赤き竜、うぬが魔狼どもに差し向けるも躊躇わぬ。フェリリル。返答や如何に

魔王が返答を求めている。
やると言ったら、魔王は本当にやるだろう。そして、竜帝兵団の五竜の強さならよく知っている。
業腹な話だが、魔狼兵団の全戦力をもってしても、五竜の一匹を仕留められるかさえ疑わしい。
――とはいえ、だ。
そんな可能性を考慮する必要はない。なぜなら、そんな事態に陥ることはありえないのだから。

223 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/12(金) 22:11:23.70 ID:SLzOW7vu

「偉大なる魔王の軍、そこからかつて唾棄すべき裏切り者が出たということは、まさしく痛恨の極み」
「さりながら。この覇狼将軍フェリリルに限っては、王陛下の御懸念は無用と断言申し上げます」

王の気配を感じ取りながら、フェリリルは朗々と言葉を紡ぐ。

「これなる封印の魔石が、なにゆえ魔の一翼たるわたくしを新たな主と認めたのか――それはわかりませぬが……」
「それならば好都合。それはつまり、王陛下の元に封印の石のひとつが在るということ。勇者の手元には、決して揃わぬということ」
「今は陛下に対し反抗的な態度を取っているこの剣も、いずれ我が魔狼の吐息にて陛下の忠実なる牙に変えて御覧に入れましょう」
「我が父、先代覇狼将軍リガトスの名に懸けて。――もし、我が誓いが信に値せぬと思し召しならば――」

そこまで言うと、フェリリルは腰の師剣をすらりと抜き、自らの首筋に添え当てた。

「――我が命。今すぐこの場にて陛下にお捧げ致します。陛下の信なくして、この世のどこに我が身の置き場がありましょう」

首筋に添えた師剣が、震えるように啼いている。
やめろ、と言っているのかもしれない。ことによれば、この短時間に主がふたりも代替わりしてしまうかもしれないのだ。
だが、フェリリルは躊躇しない。自害しろ、と魔王に言われたなら、即座に自らの首を斬り落とすだろう。
つつ……、と、首の薄皮が切れて一条の血が流れる。

フェリリルは顔を上げ、まっすぐに魔王を見た。
真紅の双眸だけがただ炯々と輝く、巨大な翼を持った真っ黒い人影――
魔王の姿は、フェリリルの目にはそう映った。

魔王は沈黙している。フェリリルも口を引き結んでいる。
広大な謁見の間の中で、他に誰もいないかのように。
ふたりは、束の間見つめ合った。

224 赤眼の王 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/14(日) 07:03:19.14 ID:5HAtOn23

玉座の背もたれに舞い降りた闇の鴉が一声啼いた。
先に眼を逸らしたは――魔王。

「我が頼り無くば死ぬか。見上げた覚悟よ」

――この娘。まさしくリガトスの子。
あ奴もそうであった。
狡猾ならぬ聡明。高慢ならぬ高潔。魔に属する者でありながら、その魂は誇り高く、卑怯卑劣を許さぬ。
嫌いではない。
むしろその質(たち)が、我をして盟友と云わしめる由(よし)となったは明白。
一度だけ、リガトスが零したことがある。真の勇者の魂に触れ、その命を奪えようかと。
脆いのだ。他者の‘義’をも軽んじることが出来ぬその質、魔族にとっては命取りとなろう。

――その眼。その言葉。
おそらくはまことであろう。
――が……抗えるか? 剣が認めたその魂。勇者と同じ、「正」に属する魂に。

「魔将フェリリル。その身を我に捧ぐとあらば、いま一度我にその覚悟を見せよ」
「剣を置き、右手をこれへ」

握り込む鋭い爪の間から滴り落ちる黒い血液。
その血がフェリリルの突きだした右手拳の甲に……一滴。たちまち熱を持つ九曜の紋となり、娘の手に新たなる徴を刻む。

「その徴、我が念であり意思である。うぬが心に裏切りの兆しあらば……手……腕……肩……胸を伝い、ついには心の臓を喰らうであろう」

バサリと翼を翻し、背を向ける。

「見事その剣、魔の隷属と成してみせよ。勇者と一行の死を以てその徴を解く」

225 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/14(日) 07:05:21.73 ID:5HAtOn23

「ルカインが……殺された……」
ベリル姐さんの呟いた声が、遥か上の白い天井を映していた水鏡の水面に細かい波紋を作った。
ふと……上を見上げた。いま……誰かに見られてたような気が……

エルフ達の叡智を結集し作られた神殿は、森の最下層にあるとは思えないほど明るい。
採光と換気のための細い道が無数にあるからだ。
魔法種族と呼ばれるエルフ達は、何故かこの神殿に一切の魔法を使っていない。水鏡への干渉を避けるためだと言う。
伝令もそうだ。魔法ではなく、各部屋に回された伝声管が主な通信手段。
長老が祭壇わきにある伝声管の蓋をあけて何か言っている。
すぐに近くの扉がひらき、ベラトリクスとフォーマルハウトが一礼して入ってきた。

「このベリルを神殿の奥へ。ここももはや安全ではない」
ライアンと父さんの顔が緊張してる。やっぱさっきの気配、感じたの俺だけじゃなかったんだ。
姐さんがちょっと悲しい顔をした。そうだよね。突然の知らせ。突然の別れ。もしかしてこれが最後かも知れないんだ。
「じゃ、また」
姐さんが軽く笑って手を振った。俺も手を振り返す。笑おうとしたけど上手く出来なかった。

奥へと続く扉が閉じ、長老が重い口を開いた。
「師剣が彼等の手中に落ちた。事態はかなり深刻だ」
「勇者の……石が……」
俺達は長老から、知り得る限りでの石の形と在り処を聞いている。
ビショップの杖の赤い石がこの神殿の「僧正の石」で、その石も敵の手に渡ったってことも。
賢者の石はたぶん賢者が持ってるって言うからそれは良しとして……
残る二つの石の手掛かりはかなりヤバい。
ドワーフ神殿に納まるはずの「戦士の石」はアルカナン王家の魔剣の柄に嵌ってて、いま現在移動中らしい。
ナバウル王城の「魔法使いの石」は、これもまた誰かが身につけているのか、あちこちに現れては消える、を繰り返してる。
持ってる本人がその気で動いてればいいんだけど、じゃなきゃ一生つかまらないって事だ。

問題はまだある。

「長老。ビショップに代わる『僧正』は誰なんですか? それも俺が見つけるの?」
「五要を探すは勇者だけではない。シールストーン自身が認めた者も然り。候補も一人とは限らんという事だ」
「そうなんだ。俺、長老が僧正になってくれればいいな、って……」
長老が笑った。
「光栄なことだ。石に認められるよう努力するとしよう」


突然天井のステンドグラスが一斉に割れた。赤、緑、青色に光るガラスの破片が俺達の頭上に降り注いだ。

226 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/14(日) 17:54:12.27 ID:DKpBkdxV

>剣を置き、右手をこれへ

魔王に促されるまま、フェリリルは師剣を背に納めると甲を上にして右手を差し出した。
魔王の手から、どす黒い色をした血液が一滴。
それが手の甲に落ちると同時、熱とも疼痛ともつかぬ感覚と共に黒い九曜の紋が広がってゆく。

「――これは……」

>その徴、我が念であり意思である

魔王の言葉に、フェリリルは手を引っ込めるとまじまじとその紋様を見た。
魔王の紋章である九曜、その禍々しい刻印。
もし造反の意思を抱くならば、この紋章はたちまちフェリリルの身体を喰らい尽くすという。
つまり――これは狼の首に嵌められた首輪、ということか。
誇り高き魔狼に首輪は不要。とはいえ、敢えてそれを嵌めたということは、それだけこの師剣が恐るべきものということ。
いかな強大な力を持つ魔王とて、2000年前の二の轍は踏みたくないということなのだろう。

>見事その剣、魔の隷属と成してみせよ。勇者と一行の死を以てその徴を解く

「……御意。お任せあれ、我が王」

魔王の言葉に、今一度深々と頭を下げる。そして音もなく立ち上がると、フェリリルは謁見の間から去った。
逃がした男――ホンダの行動は完璧に追跡してある。魔狼の嗅覚は、50キロ離れた場所にいる者の居場所も突き止める。
ホンダが勇者と合流したときが、自分の動く時だ。
その時こそ勇者とその一行を根絶やしにし、見事王の期待に沿ってみせよう。

「このような呪縛など無くとも、我が忠義は普遍盤石のものだというのに――まあ善い」

回廊を大股で歩きながら、フェリリルはもう一度右手の甲に刻まれた魔紋を見た。
わずかな熱を持ち、九曜の魔紋がほのかに明滅している。
フェリリルはその魔紋に唇を近付けると、ちろりと舌先を覗かせてそれを舐めた。
くちづけのような仕草をしてから、おもむろに背の師剣コンクルシオに手を伸ばす。
ヒュン、と風を切る音を立てて剣を振ると、フェリリルは大きな目を細めた。

「さあ――剣よ。このわたしを主と認めし、封印の魔石よ……」
「これより共に、血と闘争に彩られし魔の時代を築いてゆこうぞ――!」

フェリリルの喜悦に満ちた言葉に反応するように。
師剣が、僅かに羽音のような音色を奏でた。

227 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/14(日) 17:59:03.07 ID:DKpBkdxV

(こちらはホンダの向かった先を襲撃するつもりです。それまで待機しますので、お話を先に進めてください)
(何か動きがありましたら、またレスさせていただきます)

228 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/14(日) 20:36:08.46 ID:5HAtOn23

【了解しました。王都はちょっと置いといて、エルフの森を無影の軍団が襲撃する流れにしようかと思っていました】
【無影将軍、演られませんか? 少しばかりいじってしまいましたが……】
【7日間お休み頂きますので、その間、御検討をお願いします】

229 </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/16(火) 19:42:16.62 ID:s0IqVe1w

(承知しました。では軽く。)

230 無影将軍ベテルギウス </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/16(火) 19:44:34.89 ID:s0IqVe1w

2000年前の戦いでは、勇者の率いる連合軍と魔王の率いる魔王軍とが熾烈な戦いを繰り広げた。
その戦いの際、魔王の腹心である八大魔将のひとりが魔王を裏切り、勇者の側についたという。
魔王軍の内情をよく知るその魔将の手引きもあり、勇者の軍は勝利の糸口を掴むに至った――と、古文献にはある。

しかし。

寝返ったのは、なにも魔王軍に属していた者だけではない。
本来連合軍に属しているはずが、魔王軍に走った――という者も。少なからず存在するのだ。

突然、天井のステンドグラスが粉々に砕け散る。色とりどりのガラス片が無惨に降り注ぐ。
そして、その途端にルークたちのいる場所に満ち満ちてゆく魔力。
禍々しい闇の魔力はすぐに神殿の出口の扉に集束してゆくと、その床に不吉な魔紋を描いた。
『転移』の魔法だ。魔法陣と化した魔紋の中央に、漆黒のローブを纏った魔導師が現れる。

「ク、ク……。やはり、ここに集まっておったか。おのれらの浅知恵など、半睡のうちにも察するは易い」

深くかぶったフードの作る影の中から、炯々と輝く双眸だけが見える。魔導師はカツリ、と杖で床を打った。
杖の先端には、光り輝く『僧正の石』――。
杖が床と接触する硬い音が響いた瞬間、魔導師の全身から膨大な闇の魔力が颶風となって迸る。

「勇者よ、そしてその郎党よ。お初にお目にかかる――。我が名は無影将軍ベテルギウス。偉大なる魔王が従僕のひとり」
「そして、魔王軍の精強なる八大軍団の一角、降魔兵団を預かる者なり。此度は、おのれらを残らず葬りに参った」

クク、と喉奥で嗤う。
ベテルギウスは軽く左手を持ち上げると、刺青のように魔紋の施された指でルークたち一行をぐるりと指した。

「“魔王蘇りしとき、勇者もまた蘇らん。闇に抗いしは強き光、光は束ねられ、大いなる希望とならん”……旧き予言よな」
「して……どれが当代の勇者か?どれもこれも、話にならぬ弱々しき光ばかり……藁をいくら束ねたとて、鋼に勝てる道理はなし」
「藁束は藁束らしく、我らのために糧となっておればよいものを。度し難い愚かさよ――」

ベスマ要塞の隠された地下回廊に漂う瘴気とよく似た、しかし明確に異なる闇の魔力が、神殿を侵食してゆく。

「まあ善い。いかにか細きとはいえ、光は光。いかなる可能性の芽も摘み取れとは、陛下の仰せよ」
「然れば、おのれらをここで葬る。五体を裂き、生皮を剥ぎ、地獄を現世に顕現させてみせようぞ」
「そして。勇者の血筋を根絶やしにした、一番最後――それが、汝の死ぬるときよ」

殺戮の喜悦を隠そうともせず、ベテルギウスは巡らせていた手指を長老のところで止めると、

「なあ……長老ミアプラキドス。いや……兄者と。そう呼んだ方がよいかな?ククク……ク、ククククククッ……!」

と、言った。

231 無影将軍ベテルギウス </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/16(火) 19:45:22.21 ID:s0IqVe1w

名前:無影将軍ベテルギウス(Betelgeuse)
年齢:2045(外見は40歳前後)
性別:男
身長:169
体重:45
種族:エルフ(ダークエルフ)
職業:魔将軍(無影将軍)
性格:陰気、執念深い
長所:物知り
短所:エルフのこととなると我を忘れる
特技:呪術
武器:『僧正の石』が嵌った杖
防具:漆黒のフード付きローブ
所持品:手の平サイズの7つのタリスマン
容姿の特徴・風貌:
くすんだ金髪、灰色の肌、痩せこけた身体
普段は漆黒のフード付きローブで身体をすっぽり覆い隠しており、双眸だけが輝いている
右腕が肩から欠損しており、魔法の義手を装着している

簡単なキャラ解説:
魔王軍八大軍団のひとつ『降魔兵団』を統べる八大魔将のひとり『無影将軍』。
魔王軍における参謀のような役職を司る、魔王軍の知恵袋。
かつては『エレド・ブラウ』に住んでいたが、禁忌とされた呪術に魅入られ、外法に手を染めたため追放された。
右腕がないのはその際に斬り落とされたため。
自分を排斥し追放したエルフ、特にその指示を下した実兄ミアプラキドスに強い憎悪を抱いている。

232 シオ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/23(火) 16:19:47.23 ID:eZ8/zDKw

最後の一人が魔狼の手にかかり、殺戮劇は一応の幕を閉じた。

昇り始めた真夏の陽が、戦士達の無残な屍をギラギラと照らしている。
匂いを嗅ぎつけた食肉の類が嬉々として死肉を貪るその中で、湯殿の噴水だけが変わらぬ飛沫を上げていた。
あの近くにルカインの遺体がある筈だが、他の遺体や鴉達で覆い隠され良く見えない。
ホンダは――戻ってこない。「いざという時はベスマへ」という取り決め通り、あの要塞に向かったのかも知れない。

「シオ。あれ」
リリスが差したその向こう。いつからそこに居たのか、数匹の白い魔狼が四肢を地につけ立っていた。
黒き毛皮が主調の魔狼兵団にあるまじき純白の毛皮。
屍をひとつひとつ検(あらた)め……何かを探すその姿はひどく目立った。
「……白の番人!?」
思わずドアを開け飛び出す。リリスもすぐに追ってきた。
遺体を避け、または跨ぎつつ進む。鴉がギャアギャア喚いて飛び立ち、四つ足の食肉類が身を伏せ唸る。
広場をうろつく黒い魔狼達がこちらを向くが、襲ってくる様子はない。
死肉を喰らい満足したか、はたまた長フェリリルの命(めい)が無いためか。

ゆっくりと白狼達に近づいた。
グオルル……
振り向く魔狼。その腕に抱えられるのは……かっ切られた首筋を除き、ほぼ無傷なルカインの遺体。
「その手を離せ」
背の双剣を抜く。血に染まる牙をむき出しにし、唸る白狼達。
「せめて埋葬してやりたい。私を、私達の危機を救ってくれた勇者を」
魔狼達が身体をバネのごとく沈ませ、飛びかかろうとしたその時、何者かの制止の声がかかった。

声のした方角、広場の隅に二人の女が立っていた。
一人は狼頭の毛皮を被り、狼の尾を揺らす……銀髪の美しい娘。ルカインを手にかけた当の本人。覇狼将軍フェリリルだ。
そしていま一人。
何事かフェリリルと言葉を交わし、ほほ笑んだその女が、こちらへと足を向ける。
年の頃は20代半ばか。銀の髪に青い瞳。純白のイブニングドレス。およそこの場にそぐわぬ姿の……しかし常人の気配を持たぬ大人びた女性。
ルカインを抱える魔狼の横に楚々と立ち、美しい笑みを湛えこちらを見つめた。

「はじめまして。シオ・ビクタス……だったわね?」
青い……ガラス玉のような眼だった。その異様さに呑まれ、言葉が出ない。
「感動したわ。『動けぬ者の命を奪うなど剣闘士の名折れ!』なんて」
「あんた誰よ!!」
口を開いたのはリリスだった。敵意の色を露わにし睨みつける少女に、女は更なる笑みを返した。
「あら。居たのね? リリス・レニエとか言ったかしら。エルフが産ませた娼婦の娘」

「……何でも……知ってるんだな」

双剣の切っ先を女に向ける。笑みを次第に邪悪なものに変え……女が歩み寄った。
「無駄よ? せめて強い魔剣じゃなきゃ……この髪一本だって切れやしない」
ガラスの眼が青白く光り、それに応じた剣が砂となって流れて落ちた。柄を握る手がカタカタ震える。
「あなたは殺さない」
白い手がそっと頬にふれた。ぞっとするほど冷たい。

「ルークに伝えて。エレンが待ってるって」

血より赤い唇が意味ありげに笑う。呪文も、印を着る様子も一切なく――女は白狼と共に掻き消えた。

233 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/23(火) 16:22:00.14 ID:eZ8/zDKw

――敵だ! あの気配! 気のせいじゃなかったんだ! 

土砂降りの雨みたいに降ってくるガラス。
細かい破片とはいえ、あの高さから落ちてきたそれは雨とは違う。それなりの殺傷能力を備えた凶器だ。

「みな、我が背後へ」
長老が手招きする。
「大丈夫です長老! 俺も父さんも防御呪文持ってるし、ライアンだってフサルクの剣あるし!」
言った俺の腕を父さんが引っ張る。
「これは長老にお任せしよう。力は出来るだけ温存するのだ」
「そうだルーク。いざって時に魔力切れになっちまうぞ?」
――そっか。今まではそういう考え、無かったなあ。

水鏡を背にして腕を広げる長老。俺達はその後ろに回り込み、水鏡を囲むように立った。
長老が見ているのは上じゃない。前方だ。もしかして……敵がいるのそっち?
細い背中に華奢な腕。白いマントと長い上着の裾が……ぶわっと何かの力で持ちあがる。
2,000年以上も生きてるエルフの長。どんな凄い呪文持ってるんだろう。

【現を映す揺蕩いし水鏡よ 我が砦と化し楯と成り給え】

呪文詠唱終了と同時に、キン! と魔力が空に満ちる気配。
水鏡から勢いよく何かが飛び出して、俺達の周囲に光のドームを作りだした。光……いや、水?
落ちてきたガラスの雨がドームに弾かれ、シャラシャラと周りに滑り落ちる。
……と、ゆらりと景色が歪み、ドームが弾けた。
形を変えたその壁は、放物状の波形を描きつつ俺達の周りに展開し出す。
眼で見たそれは、無色透明の粘っこい何か。まるで意思を持った防御壁。

>ク、ク……。やはり、ここに集まっておったか。おのれらの浅知恵など、半睡のうちにも察するは易い

若くは無い、しかし老人でも無い男の声。
遥か前方の扉の前に……居た! 
黒いフードのせいで、顔とかぜんぜん見えないけど……二つの眼だけがこっちを見てるのが解る。
カツンと鳴らした杖の先に光る赤い石。なま暖かい嫌な風が吹きつける。あれ? あの杖……何処かで……

>勇者よ、そしてその郎党よ。お初にお目にかかる――。我が名は無影将軍ベテルギウス。偉大なる魔王が従僕のひとり
>そして、魔王軍の精強なる八大軍団の一角、降魔兵団を預かる者なり。此度は、おのれらを残らず葬りに参った

――出たー!! ライアンの言ってた八魔将!! 
ベテルギウス……って、昨日も夜中に赤く光ってた……いっちゃん明るい星の名前。
後ろから見る長老は何も言わず、動かない。でもその耳だけがピリピリしてる。

>“魔王蘇りしとき、勇者もまた蘇らん。闇に抗いしは強き光、光は束ねられ、大いなる希望とならん”

……そんなカッコイイ予言あったんだ。つか人の事指差すなよ! 失礼だろ!? 
どれが勇者かとか、ワラ束はワラ束らしくとか、喧嘩売ってんの? 勇者は俺! 俺俺!
そう思って一歩踏み出そうとした俺の足をライアンが踏んづけた。
『馬鹿か。自分から名乗ってどうする』
耳打ちするライアンの顔が呆れてる。……ごめん。つい挑発に……

そんな俺達の言葉が届いてるのかいないのか。
これまたねちっこくしゃべくりまくる黒いおっさん。
へいへい。どうせまだ若い芽ですよ。一応摘んどくとか、どんだけ余裕かましてんですか。
四対一だよ? 「八魔将! みんなでやれば怖くない!」 ね? 長老!

>なあ……長老ミアプラキドス。いや……兄者と。そう呼んだ方がよいかな?ククク……ク、ククククククッ……!

そうそう。笑っていられんのも今の内……って……は? 兄……者……? 長老の……弟――――――!!??

234 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/23(火) 16:27:45.11 ID:eZ8/zDKw

しばらくショックで頭が真っ白だった。
長老の弟ってことは、父さんの叔父さんで、俺の大叔父さん。うわバッチリ親戚じゃん!!
親戚のエルフの叔父さんが何で? 何で八大魔将とか! 魔王の手下とかやってんの!?

「おっさん! ちょっ・」
言いかけた俺の口を父さんが塞いだ。
「……お前、いま叔父上の事『おっさん』などと」
「ぬしも『叔父』と呼ぶでない。我が一族の恥晒し。裏切り者。同じエルフ族とも思わぬ」
いつもより低い長老の声。
「我等が誇る永遠の寿命と引き換えに闇に落ちた……愚か者。片腕などで済まさず、首も落とすべきであった」

――ここ怖いんですけど長老! 何があったか知らないけど、兄弟でしょ?
腕斬るとかそんなんじゃなくて、口で説得すべきじゃあ……
そんな俺の心の声が聞こえてるはずの長老は、何も言わずじっと前を睨み……いきなり声を上げて笑いだした。

「『僧正の石』とは、いかなる意図か。魔王封じの一助と成りに参ったか?」

指差す叔父さんに指を差し返す長老。叔父さんの持つ――ほんとだ! 確かにあれ! ビショップの杖だ! 
「叔父さんいい人だったんだ!? 封印に協力しに来るんなんて・痛てっ!!」
後ろ頭を思い切りライアンにど突かれた。
「んな訳あるか! あの殺気、本物だぞ。奴の言葉通りだ」
「左様。あ奴の目的は我等の殲滅以外にあり得ぬ」

俺達の周りで蠢いていた透明なネバネバがゆるゆると動き出した。散らばるガラス片を取りこんで次第に体積を増していく。

「其方等は隙を見、ここを去れ」
「――え?」
「評議長! お一人で八大魔将の相手を!?」
「無理、と申されるかルーンの嫡子よ」

長老が振り向いた。
「危惧せずとも、正面切っては戦わぬ。我が成すべきは『石』を奪い、これへ納める、それだけよ」
俺達と長老の間に据えられた水の器。さっきまで入ってた水が無くなって……暗い……まるで底なしの井戸みたい。
「しかし父上。ここは束になるが得策では?」
父さんの意見に、またまた長老が声を上げて笑った。
「手を出すなとは言わぬ。退路を得るには多少は必要なれば。――が、ぬしも言っていたな、魔力は温存すべしと。己にも役目があろう」
長老が視線を前に戻す。黒い魔導師の背後の、大きな両開きの扉。たぶんあれが唯一の出口。

床が、壁が、天井が、次第にその色を失っていく。何だかとても――寒い。

「ルークを頼んだぞ。勇者の心臓が奴等に渡ればどうなるか……わかるな?」
「――え?」

どういう意味かは聞けなかった。父さんとライアンが俺を思いっきり突き飛ばしたからだ。

235 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/23(火) 16:32:56.74 ID:eZ8/zDKw

赤眼の王は玉座にて暇を持て余していた。
そこかしこに耳を傾け、意識を向けはしているものの、彼にとっては何もしていないに等しい。
そんな王の退屈を紛らわすかの如く、それは突然現れた。

「無沙汰しております。古の……キング」

突如として扉前に出現した、白きドレスに身をつつむ銀髪の女と白い魔狼達。
転移の魔法特有の前触れどころか、微かな魔力が発動した風もない。
コツン……
何処か遠くで鳴る異様な靴音。
無造作に捨て置かれたビショップの遺体に気づき、その眼が一瞬間悲しげに臥せるも……すぐに玉座に向き直る。
かつてビショップが従えた白の番人の腕には、王も見知らぬ一体の死体。

「エレンディエラ。2,000年前と少しも変わらぬな。扉も叩かず何用だ」
「エレンとお呼びを。愛しき陛下」
鼻にかかる媚びた声に、魔王が立ち上がる。
「『人形』の分際で不遜にも程があろう。其処許が素体となった我が腹心の名、思い出すも不愉快だ」
「などと仰って、生き写しの人形を創らせてしまう所が……陛下らしいですわ」
「知った口を訊くな。何用かと聞いている」
「手土産を持参致しましたの。お気に召すと思いますわ」

女はにっこりと微笑んだ。白狼が手渡したルカインの遺体を軽々と横に抱き、王の御前近くに横たえる。
死してなお瑞々しい張りを保つ、力ある遺体。
金の髪は無残に斬られ見る影もないが、その安らかな死に顔は、無垢なる少年が眠っているようにも見える。

「――ほう? これは……」
一対の黒い翼がバサリと広がる。
「御察しの通り、覇狼将軍が手中とした師剣の持ち主ですわ」
「素晴らしい。感じるぞ……! 微かな鼓動を……!」

喜びで翼が戦慄いている。魔王がここまで感情を露わにするのは珍しい。女が心得顔で微笑んだ。
「覇狼将軍の手はつかぬままにて。ご堪能くだされば幸いですわ」
「――フェリリルが……手をつけぬと?」
高位の魔族であれば何にも増して欲するであろう勇者の心臓。ふと首を傾げるも、それ以上は考えず。
「貰い受けよう」
言うが早いか、魔王の手がルカインの胸に触れた。
まるで水中の魚でも掴み取る素早さで取り出されたそれは、未だ鼓動を続けていた。
魔王は生き血滴るその塊を乗せた手を、頭上高く掲げた。

「これなる勇者の心の臓! 我が更なる糧とならん!!」

謁見の間に轟く雷鳴と目を焼く稲妻。
生き物を焼く異臭が漂い、やがて靄の晴れたただ中に立っていたのは――三対の翼を持つ赤眼の王。

「ふははは!! 見よ!! あと三対! 完全なる躰(からだ)となれば、封じの石など恐るるに足らぬ!!」

いま一度満足気に高く笑い、魔王はゆっくりと王座前に立ちはだかった。
「望みを言え。多少の無理もきく」
エレンがその場に片膝をつき、面を上げた
「ならば将軍の地位を。『アシュタロテ』はその軍団と共に滅び去り、椅子がひとつ空いたはず」
「アシュタロテ。我が腹心にして妻。賢者などに現を抜かし、かの軍門に下った忌まわしき名よ」
六枚の羽根を広げ、腰を降ろした王に浮かぶ苦悶の貌。しばらくその赤い眼を閉じていた魔王がふと口を開いた。
「良かろう。彼奴が返還せし我がメダイ。持っていくがいい」
チャリン……と足元に落とされた九曜のメダイがキラリと光った。

「有難き幸せ。早速なれば、御命令を頂きたく」
深く下げたエレンの頭上から、厳粛なる声音が響く。

「もと八大魔将が一人、ベアル・ゼブルが動向を探れ。今や中立なる立場なれど、いつ何時に裏切らぬとも限らぬ」

236 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/23(火) 16:35:43.13 ID:eZ8/zDKw

名前:ベアル・ゼブル(ベルゼビュートとも)
年齢:2万歳以上(人間形態時の見た目は40前後)
性別:どちらでもない
身長:250(人間形態180)
体重:180(人間形態100)
種族:天使
職業:君主(現在は隠遁者)
性格:鷹揚
長所:万事に対し公平な目を持つ
短所:アシュタロテの名が出ると平静を失う
特技:魂の操舵、魔法を無効化する結界の作成が可能だったが、現在は不可能。趣味で雨乞いが出来る。
武器:なし
防具:なし
所持品:八大魔将のひとりを示す九曜のメダイ
容姿の特徴・風貌:片翼、捻じくれた2本の角、黒い毛で覆われた裸身。人間形態は体格のいいおっさん。
簡単なキャラ解説:リュシフェールに次ぐ君主として天から遣わされた天使。同族のアシュタロテ公爵と共に八大魔将として魔王に仕えていた。
            アシュタロテ離反の際魔王と言い争い片翼を失う。ルーン、アルカナン王家の始祖。
            リュシフェールに落とされた翼の傷が癒えておらず、衰弱し続けている。
            存在出来ているのはごくたまに黒い丸薬を飲み込んだ人間に憑依・具現し、敵側の人間を屠ることに依る。
            人間の味方という訳ではない。魔王とは別の方法で大陸を支配しようと目論んできた魔族の一人である。

237 無影将軍ベテルギウス </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/23(火) 22:35:53.43 ID:ZSBCNHh+

エルフの評議長ミアプラキドスと、無影将軍ベテルギウスの兄弟が睨み合う。
一帯に、静かな緊張が走る。騒いでいるのはルークただひとり。
ベテルギウスはちらりと一行に、とりわけシャドウに視線を向けると、

「ヴェルハルレン……。おのれもここへ来ておったか。なんとも奇遇な邂逅よ」
「おのれだけは、我の研究を忌避はせなんだな……。どうだ?我が副官として働く気はないか?格別の待遇であろうよ」

と、嗤いながら言った。

>我等が誇る永遠の寿命と引き換えに闇に落ちた……愚か者。片腕などで済まさず、首も落とすべきであった

「愚かはどちらか?永遠の命を何ら有効活用することなく、ただ無為に自堕落な日常のみを繰り返す――」
「進歩から目を背け、緩々と安穏に浸る愚昧。それに比ぶれば、外法の研究にいかほどの咎があろう」
「首(こうべ)が落ちるはおのれよ、ミアプラキドス。おのれの首を干首にして、我が占術の触媒としてくれようぞ。ク、クク……!」

杖の先端で、カツリ、カツリと床を叩く。
精神が高揚している際に無意識に出る、無影将軍の癖である。と、不意に笑いだした長老へ不快げに片目を眇める。

>『僧正の石』とは、いかなる意図か。魔王封じの一助と成りに参ったか?

「おのれら勇者どもは、希望とかいう形なきものに縋って力を振り絞る。それが、我らには目障りゆえ――」
「それを、おのれらの目の前で摘んでやろうと思うてな。希望を絶望へと転じるには……それが一番効果的であろう?」

ク、ク、と喉奥で嗤う。ベテルギウスはゆっくりと左手を杖に嵌った『僧正の石』へ持って行った。

【地獄の領袖よ、死と無道と外法の頂に座す、いと貴き我が主よ――御照覧あれ、今ぞ我が身を封となし、光を闇の懐に抱かん――】

パキリ。
軽い音を立て、『僧正の石』が杖から外れる。
魔王にとっては触れることさえ叶わない封印の石も、エルフであるベテルギウスにとっては単なる魔力の石に過ぎない。
ベテルギウスは手中に『僧正の石』をおさめると、フードの奥でニタリと口角を歪めた。

「陛下を封ずる五つの魔石のひとつ……。おのれらにとっては、まさに希望の象徴よな?」
「おのれらはこれが欲しい。まさしく、喉から手が出るほど……。違うかな?ク、ククッ、クククク……!」
「だが。これなる魔石をおのれらが手に入れることは永劫ない。いくら喉から手が出るほどに欲しくともな!何故なら――」

そこまで言って、ルークたちへ見せつけるようにゆっくりと石を掲げる。
ベテルギウスが顔を上向かせる。
すっぽりと顔を覆い隠しているフードの作る黒い影が、不意に色濃くなったような気がした――次の瞬間。

ごくり。

静まり返った神殿内に、その音――嚥下の音は、やけに大きく響いた。

238 無影将軍ベテルギウス </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/23(火) 22:39:36.15 ID:ZSBCNHh+

「ク、ククク、クク……!これにて、おのれらの行為もすべて水泡(みなわ)と消えたわ!快楽(けらく)、快楽……クク、ククク!」
「とはいえ、最初からおのれらには塵ほどの勝機もなかったがな。さりながら、嘆くことはないぞ?」
「世界は元に戻るだけなのだ。陛下が支配しておられた、真に正しい世界のありようへとな……!それこそ、我らが真なる理想!」
「この2000年、真なる主を欠いた世界のなんと歪み捻じ曲がりしことか。人間どもは相争い、親が子を、子が親を殺す修羅の巷よ」
「陛下の統治される世界では、すべてが平等。互いに争うこともなく、皆が等しく陛下を崇拝する――そのなんと平和なことか」

まるで神に仕える司祭のように、両手を広げたベテルギウスが朗々と告げる。

「おのれらは陛下の理想とされる平和を害さんとする害虫よ。勇者などという名は、陛下の世界に湧く虫ケラを指す名以外の何物でもないわ!」
「なれば。なれば――この魔王軍の参謀挌たる無影将軍が害虫を駆除するは当然の仕儀。緩々死ぬが善い、虫ども――!」

ゴッ!

ベテルギウスの身体から膨大な魔力が迸る。
闇の魔力は冷気を伴い、同時に周囲を侵食してゆく。あたかも夕刻、闇が周囲を音もなく覆いつくしてしまうように。
“The dusk”――
闇の魔法を得手とする魔族、それも上級魔族であるグレーターデーモン等が出現する際に起こる現象である。
闇の魔力は魔法としての形を成さずとも、その場にあるだけで生物の生命力を奪い、更には命まで奪う。
死者の纏う瘴気とよく似ているが、負のエネルギーである瘴気と違い闇の魔力はあくまで闇という属性のエネルギーであるというところに差異がある。
いずれにせよ、ミアプラキドスの作った光のドームから出れば只では済まない、というのは容易に想像できるだろう。

「ク、ククク……。あいも変わらず攻撃の手段を持っておらぬのか?であれば、勝敗など最初から決まっておったな……」
「我が闇の魔力を前に、いつまで持ち堪えることができるのか?存分に試してくれようぞ!カ、ハハハ――」

そう言って、義手に握った杖を突き出す。途端に周囲に蟠っていた闇の魔力が指向性を持ち、一行へ向かって突風となって吹き荒れる。

「ミアプラキドス以外に興味はない……。いともあっさり殺してやろうゆえ、抵抗せずに降(くだ)ることよ!」
「どうせこの神殿を出たとて、おのれらには死と破滅以外に歩む道などありはせぬのだからな――!!」

闇の颶風にローブを激しく嬲られながら、ベテルギウスは双眸を爛々と輝かせた。
そう、仮に首尾よくこの神殿から脱出できたとしても。
地上には、すでに八大軍団のひとつ降魔兵団が展開している。何も、ベテルギウスはこの場にひとりでやって来たわけではない。
降魔兵団はゴーレム、ドラゴントゥース・ウォーリアー、ガーゴイル等、魔力で動く無生物たちの軍団。
命なき魔物たちは、一切の慈悲なくエルフたちを殲滅することだろう。

『勇者の血を絶やせ』、それが魔王より与えられた至上の命令。
――ならば。
勇者とおぼしき者を生んだ、エルフという種族そのものを滅ぼすこともまた、王命の体現であろう。
エルフをこの地上からひとり残らず消す。
その目的のため、ベテルギウスは迸る魔力の勢いをさらに強めた。

239 シャドウ </b>◆xGPJmmLbMQ <b>
2016/08/25(木) 06:05:22.04 ID:Ru/pj+4p

叔父ベテルギウスが放つ闇のエネルギーの一部が、うねくる水壁の谷合を抜け音も無くルークに迫った。
彼は勇者の心臓云々に気を取られたか、その気配に気付かない。
『危ない!』
そう思ったのは皇子ライアンも同じだったようだ。両脇から同時に背を押され、たたらを踏む息子。
――ジャリッ
右肩を叩きつけられるかの衝撃。

「父さん!」
すぐにルークが近寄ってきた。
魔導師服の丈夫な麻生地が焼け焦げ、肩口が露わになっている。その肩も、何かに浸されじんわりと闇色に染まっていく。
凍傷とも火傷ともつかぬ傷み。
「これ、なんの傷!? 挫創!? 火傷!? ただの打撲!? 」
ルークが両の手を傷にかざす。【治癒】はスペルは大概同じだが、傷の種類により想起が異なる。
「闇のエネルギーに依る傷は重度の凍傷に似る。『光』のイメージを付与し、闇を中和する必要もあるだろう」
頷いたルークが治癒のスペルを唱え出す。
【治癒】は想起さえ正確ならば、魔力をほとんど消費しない。
事の次第を見たミアプラキドスが再び壁をドーム状に変えた。
すぐに傷は跡かたも無く消えた。しかし問題は……いかにして外に出るか。

漆黒の闇を纏う叔父の姿。初めて遭ったあの頃は、いくらかその色は褪せていた記憶がある。
叔父は……皆は『陰気』と評するが……なかなかに諧謔(かいぎゃく)に富み、かつ自身の研究に真摯な方だ。
たまたま迷った地下の洞窟にて、それと知らず魔道を習ったあの頃を……今でもはっきりと思いだす。

暗闇の奥のさらに奥、広く穿たれた洞窟の中に叔父は居た。
一面に青く光る水が張る……この世のものとは思えぬ美しい洞窟。水面より切り立つ島を背にした黒い魔導師。
フードを外しこちらを見たその姿は、異様ではあった。手招きするその左手指は灰色かつか細い。
叔父と過ごしたその時だけは時間を忘れた。純粋に己の知識を満たす喜びと、研究に没頭する楽しさを知った。
父の目を盗み数度、その場を訪れた。思えば叔父は、私が誰なのか知っていたに違いない。
ある時父の知るところとなり、酷く諌められた。同時に魔導師の正体を知ったが……訪問を諦めはしなかった。
叔父を好いていたから――だけではない。研究の中味が気になって仕方がなかったのだ。

『おのれだけは、我の研究を忌避はせなんだな』
さきほどの叔父の言葉。当然だ。当時叔父が没頭していた、その研究とは――

「息子よ! 奴に気を奪われるな!」
父の叱咤の声。無論、この心中の声を読んだのだろう。だが――止められようか!

「父上! 貴方は偉大すぎる! 常にこの大陸全土を見据え、同族ならざる者達の行く末をも案じられる方! 
私は貴方とは違う! むしろ我が性はあの叔父に同じく! 求めるは至上の叡智! 
父上は良く云われた! それは禁忌だ! 外法だと! 闇を見知り初めて得る叡智もこの世にはあるだろうに!」

「……ここを出たあの時と変わらぬな。今でも……我が跡目は継がぬと?」

ルークと皇子が驚いた眼で我々を見ていた。

240 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/25(木) 06:08:57.87 ID:Ru/pj+4p

――知らなかった。父さんがあんな考えを持ってたなんて。
俺には叔父さんなんて居ないから、父さんの気持ちが良く――あ、居るじゃん。クレイトンおじさん。
そっか。
あーしろこーしろって口うるさい親と、いろいろやらしてくれる叔父さん。
どっちと居るのが楽しい? って聞かれたら、当然叔父さんだよ。うん。なんか分かった。

長老がちょっと悲しい眼をして、また前を向いた。
「その話はしばし置こう。こともあろうに……僧正の石を体内に容れるとは……あ奴は死ぬ気か? 我等と共に?」

大叔父さんの光る目が長老に向けられている。ものすごい憎悪の目だ。
長老、あれもダメこれもダメって言い過ぎたんじゃない? あの目、よっぽどだよ?

吹きつける闇の冷気が更に強まった。
キラキラドームに当たって、消滅するにはするけどキリが無いって感じ。良く言う膠着状態。

「奴が狙うは我が命のみ。だがこれを打破せぬ限り、其方等を逃がす事も出来ぬ」
「あの……長老。こうなる事予想してなかった……とか?」
「うむ。あ奴が何か仕掛けてくるかと思ってな?」
困った笑顔で頭をかく長老。いやあの、長老ももしかして行き当たりばったり派……?

「叔父上!!」

いきなり叫んだ父さんが、俺達の……長老よりも一歩前に進み出た。
「この私を副官に取り立てて下さるというその言葉、まことならばしばしその耳をお貸しください!!」
「父さん!?」
「ヴェル!?」
父さんが両の手を横に広げた。魔法じゃない。父さんが誰かにものを頼むときに必ずする仕草だ。
「父はあの通り、曲がる事を知らぬ方ゆえ、恨みを抱くも致し方の無いこと!」
――父さん? 
「私は、わたくしは叔父上を敬愛しております! 是非にもそのお傍へ!」

大叔父さんは答えない。そりゃそうだよ。いきなりそんな事言われて信じるわけない。

「叔父上とわたくしが組めば、それなりの仕事が出来ましょう! 魔王などの下につく事もない! 何故なら……」
父さんが一呼吸置いた。
「わたくしは『賢者の石』の製法を知っております!」

長老とライアンが息をのんだ。賢者の石。そういや俺も、ベリル姐さんに軽い気持ちで聞いたことあったっけ。

「叔父上もお存じでしょう。『賢者の石』はただの封じの石にあらず。永き時を経ればただの鉛と化す、儚き魔石だと!」
「――そうなの!? 僧正の石とか、戦士の石と同じ種類の石じゃないの!? 」
それに答えてくれたのはライアンだった。
「聞いたことがある。魔王もエルフも存在しない遥か昔。人は賢者の石の精製を手掛けていたと」
「ふーん。とどのつまり、賢者の石って……何なの?」

≪賢者の石を手にする者、世界を支配せん≫

頭の中に直接言葉が響いた。誰? 誰でもいいや。昔の人達に出来て、なんで俺達に出来ないの?

≪出来ぬのではない。やれぬのだ。原石に触れる者、精製せんと近づく者すべてを……滅ぼす石ゆえに≫

ふと上を見た。そっか。この声、あのドーム……水鏡だ。父さんもしばらく耳を傾けてたけど、思いつめたように顔を上げた。

「叔父上! わたくしをお連れください!! 叔父上は怨恨の念にも勝る探究のお心がおありなのでは!?
あの時、叔父上がなさっていたのはまさしく賢者の石製法の探究! その答えをお知りになりたいのでは!?」


……俺には……父さんの言葉が本気なのかフェイクなのか分からなかった。

241 無影将軍ベテルギウス </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/26(金) 06:22:31.19 ID:1DZKkXCq

生まれつき、好奇心の旺盛な性格だった。
幾度も幾度も、古老に昔話をねだった。神殿の古い文献を、文書を、巻物を片端から読み漁った。
どんなに些細なことでも、それが知識に繋がるならば貪欲に追い求めた。

仲間のエルフはと言えば、日がな一日草笛を吹いたり、空を眺めたり。
会話も今日はいい風が吹くだの、木々の囁きがどうだのと、益体ないものばかり。
それが、ベテルギウスには我慢ならなかった。
永遠にも等しい寿命を持ち、高い魔力と精神力、そして知能を有するエルフである自分が。
なにゆえ、こんな閉鎖された森の中で一生を過ごさなければならないのかと――そう、疑問に思った。

叡智を求めた。代々の戒律を遵守する兄に厳しく戒められたが、それでも湧き上がる探求心を押さえることなどできなかった。
人目を避けるように地下の洞窟に研究棟を作り、そこであるひとつの成果を目指して研究を続けた。
“賢者の石”――
かつて、人間だけがこの地上にいた時代。人間たちは究極の叡智を用いて、その石を精製したという。
世界を支配する力を与える、究極のアーティファクト。
それを持った人間が世界を統べるなら、人間よりも優れた種であるエルフがそれを手にしたならば、いったい何が起こるのか?
賢者の石を手にしたその身は、果たしてどこまで登るのか――?
情熱は激しく、そして執拗だった。

あるとき、研究棟に迷い込んだエルフの子に会った。
それが血族であるということはすぐにわかった。だが、何も言わなかった。
ただキラキラと目を輝かせて、研究機材を見つめるその子に。実験に歓声を上げるその子に。
不思議なほど、孤独な心が癒されたのを覚えている。

だが、人間界においては偉大なその研究も、エルフの世界においては禁忌以外の何物でもない。
忌まわしき外法に手を染めたこと。そして何より族長の子、次期族長候補にそれを伝授したという罪で、ベテルギウスは裁きを受けた。

『利き腕を切断されたうえでの放逐』――

エルフ族に死刑はない。悪意の根源といわれる右腕を断ち切ったあとは、森の外に放置して天意に審判を委ねるのだ。
天意がその者に死すべき時でないとの判断を下すのなら、その者は生き延びる。そうでなければ死ぬ。
だが、森には血臭を嗅ぎ付ける獣が無数にいる。右腕を失い、血を流す者が、果たして生き残れようか?
結局、エルフたちは自らの手を汚したくないだけなのだ。自分たちの手で同族を殺した、野蛮な行為をしたと思いたくないだけなのだ。
だが。
「一思いに息の根を止めて裁きを下す」のと、「瀕死にして放り出す」のと。
いったい、どちらが野蛮な行為だというのだろう?

追放されたベテルギウスは、森のはずれでひとりうつ伏せに倒れながら、夢寐に考える。
――生きるとは、進歩すること。変わってゆくこと。新たなものを吸収し、自ら変遷してゆくもの。
変化を恐れ、停滞を望み、ただ無為な日常の繰り返しと懐古に耽溺する種族に、存在価値などない。
ならば、滅ぼしてくれよう。生物として為すべき最低限の行ないすらも放棄した種族など、断絶されて然るべき――。

しかし、そうは思っても、そもそも自分自身が生き残れなければ意味がない。
肩から失った右腕の切断面から、滾々と血が溢れては地面を染めてゆく。
このままでは、まもなく自分は死ぬ。仮に出血で死なずとも、この濃厚なにおいは獣を引き寄せる。そうなれば……。
そう、思ったが。

ベテルギウスは死ななかった。ベテルギウスの元に現れたのは、死でも、獣でも、ましてエルフでもない。
――六対の翼を持つ、赤眼の影だった。

242 無影将軍ベテルギウス </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/26(金) 06:25:50.05 ID:1DZKkXCq

「我はかつて言ったな……、研究とは熟慮と決断、その繰り返しであると」
「今の言、決断は及第点だが熟慮が足らぬ。勢いのみで物事を語るな、ヴェルハルレン……窮地を脱したいのはわかるがな」

闇の魔力を颶風と変えて叩きつけながら、ベテルギウスが嗤う。

「誘ったからには、迎え入れる準備があるが……しかし、我が副官になるということは、魔王陛下の使徒となるということ」
「つまり、そこにいる勇者どもの敵となるということよ。ヴェルハルレン……おのれにそこな者どもが殺せるか?」
「王陛下に拝謁を賜るがゆえ、そこな勇者の首を狩れと。我がそう言えば、おとなしく肯(うべな)うか?……できまいが」
「できぬことは言うものではないな……ク、ク、ククク……」

愚弄でなく、嘲罵でもなく、諭すかのような声。
ベテルギウスは僧正の石を外した杖で、もう一度カツリと床を叩いた。

>あの時、叔父上がなさっていたのはまさしく賢者の石製法の探究! その答えをお知りになりたいのでは!?

「賢者の石か……懐かしい。確かに、人類の叡智の極たるその魔具を手にしようと躍起になっていた時代もあったわ」
「しかし……今となっては、最早そんなものはどうでもよいのだ」
「我が主君と出会ったことで、我は思い知ったのだ。我に賢者の石を手に入れる資格などない。まして、世を統べる資格などないと」
「あの方は、王は『器が違いすぎる』。真なる王の資格を有するあの御方に比べて、我のなんと卑小なことか」
「今の我は、我が王に忠誠を誓う無影将軍。それさえ、過分なる栄誉と思うておる。何れにせよ、野望などとうに棄てたわ」
「おのれらを、勇者の血を絶やす。それが、我の今為すべき最優先事項よ!」

ゴウッ!

魔の風が勢いを増す。清廉で清浄な神殿が、みるみるうちに闇に侵食されてゆく。

「いざや、冥土へ旅立てい!勇者の心の臓は、我が王の聖餐に供じてくれようわ!カ、カカッ、カハハハ―――」

圧倒的な魔力の奔流。すべてを破滅させる烈風の渦。
このまま膠着状態が続けば、守り手のほうが先に力尽きることは明白。
――と、思われたが。

「……?これは、この気配は……」

不意に、ベテルギウスが頤を上げて周囲を見回す。
それは、ここではない遥か遠くから伝わってくる、ごく微弱な波動。
しかし――見逃すことなど決してない、確かな魔力の伝播。

「これはまさか……ベルゼビュートの気配?やつめ、隠遁したとばかり思っていたが……陛下の御復活に、再度動き出したか?」
「いかん。陛下はいまだ本調子ではあらせられぬ、放ってはおけぬ――」

魔王軍の参謀として、ベテルギウスは降魔兵団のみならず魔王軍全軍の動向に注視しなければならない。
ほんのいっとき、ベテルギウスの注意が目の前のルークたちから逸れる。魔力の風が弱まる。
またとない機会。脱出のチャンスがあるとするなら、それは今しかなかった。

243 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/27(土) 16:28:37.06 ID:VJs3LqiD

大叔父さん、父さんに何て答えるんだろう。俺だったら……受け入れるか、受け入れるフリをするかなあ。
「仲間にしてやるから、さっさとその三人を始末しろ」とか言っとけば、フェイクかどうかもはっきりするし。

しばらく黙りこんで……ようやく口を開いた大叔父さん。答えは俺の答えとまるで逆だった。
なんと彼は、父さんに言って聞かせたんだ。一時の感情に任せてそんな事決めちゃダメだって。
「勇者の首を狩れと云われて出来るか?」の件(くだり)はさすがに焦ったけど。
いきなり父さんがこっちを向いて、攻撃呪文かますんじゃないかって。
結局父さんは振り向かなかった。
ただ黙って話を聞いて――最後に首を横に振った。何度も、何度も。いつもは大きい父さんの背中が、なんだかとても……

杖が床を叩く音。勢いを増す闇の力。水の鏡がビリビリと振動する。

>賢者の石か……懐かしい――


――なんだか信じられなかった。
賢者の石。叡智の結晶。錬金術師や魔導師が精製したい石ナンバーワン。それを今はどうでもいいなんて。
それともそんな風に思えるくらい、魔王はすごい人なの? 器が違うって……どういう事? 心が広いって事?
魔王って、恐怖とか力とかで相手を抑えつけるのかと思ってた。人柄に惹かれて……部下になったりするものなの?

大叔父さん。俺にはなんだか――違う風にも聞こえるよ。
何故ここに来たのか、どうして俺達を殺さなきゃなんないのか、無理やりな理由つけて――自分に言い聞かせてるみたい。
ほんとにやりたいのは別の事なんじゃないの? だってさっき父さんに話しかけてた声――

急に風が強くなった。いや、風なんてもんじゃない。巨大ハリケーンがドームの外側からぶつかって来た感じ。
見る間に影で身を窶(やつ)す白い床。水壁が削られてキラキラしたガラスが飛び散る。
「長老! ヤバくないですか!? やっぱ俺達も加勢・」
長老が「待て」って風に後ろ手をかざした。――え? と思ったその時、フッと嵐がおさまった。

>これはまさか……ベルゼビュートの気配?やつめ、隠遁したとばかり思っていたが……

――大叔父さん? 急にどうしたの?

「あ奴は何者かの気に囚われておる。今しか機はあるまい」
長老の意図を察したのか、すぐに父さんが俺とライアンの傍に戻って来た。
「逃げるぞ」
「逃げるって……やっぱあそこから? あの扉?」
俺が眼で差したのは大叔父さんの肩越しに見える扉。父さんがコクリと頷く。

「いやいや、仮にあそこまで行けたとして、どうすんのさ。叔父さんにちょっとよけてって頼むの?」
「そうだ。お前が頼めばおそらく喜んでどいてくれるだろう」
「んな訳ないでしょ!!」
「そう怒るな。冗談だ」
父さんが腰の鞭を留めるベルトをギュッと締めながら笑う。

――がくっ……頼むからもう……真顔でそゆこと云わないで欲しい……

「案ずるな。しばらくは我が術が足止めとなろう」
長老が指差す先、黒い魔導師の足元が……水で濡れている。と思ったら、その足がずぶり……と床に沈み込んだ。

「これだけの間、手を拱(こまね)くとでも思ったか。床下一面に張り巡らせし排水、空調の管を伝い、水鏡を忍ばせるは容易いぞ?」

言いながらクックッと喉で笑う長老。その笑い方はあの大叔父さんとそっくりだった。

244 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/27(土) 16:33:28.98 ID:VJs3LqiD

「行くぞルーク!」

ライアンが『 ライド = raido 』の短剣を取り出した。移動に使う剣だ。
「長老! 死なないで下さいね!」
俺のちょっぴり無責任なお願いに、長老は何故か「ははは」と笑った。
「私がいつどこでどのような死を迎えるか。すべて水鏡が映している。少なくとも今は死なぬ」
「……ほんと?」
長老が笑いながら頷いた。

父さんが、いつのまに拾ったのか、ガラスの粉を使って魔法陣を足元に描いている。
これ描いとくと、【転移】の時魔力消費が少なくて済む。詠唱が要らないという利点もある。時間と画材が必要だけど。

それで、っと俺は……走る? 
扉まで、距離にして100ヤード(約90m)。全力でも12秒はかかる。
「こんなことなら【転移】覚えときゃ良かったなあ」
どうせ座標知らなきゃ使えないし、チートくさいし、なんて馬鹿にしてたんだよね。
【飛翔】で移動してもいいけど、あれ、意外に無防備なんだよね。飛び道具に弱い。
ライアンがトンっと肩を叩いた。
「何のための勇者の剣だ」
「え?」
言うなりライアンが ≪ライド = raido≫ と一声、その姿が消える。扉の前には……居ない! 扉の外にジャンプしたみたい。
父さんが頷いている。わかった。俺の番!

「ウィクス=インベル!」
さっそくその剣の柄を肩越しに掴んだ。何の抵抗もなくスラリと抜けた銀の刃。眩しい光が俺の身体を包み込む。
感動してる暇はない。思い切って光の壁から飛び出した。
――うわお! 黒い何かが自分から避(よ)ける! 風も感じない! 身体が軽い!
無我夢中で走った。振り返らなかった。
大叔父さんの横を走り抜けた時、叔父さんがチラっとこっちを見た。何か仕掛ける!? と思ったけど何も起きなかった。

すぐに父さんが追いついた。
一緒に押した――扉の向こう。そのあまりの惨状に、俺は思わず眼を背けた。

245 ミアプラキドス </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/08/27(土) 16:47:48.65 ID:VJs3LqiD

今や転移せんと印を切る息子をしばし引きとめる。

「ルーンの大帝に頼み、其方を要塞に行かせたは私だ。訳を知りたくば生きて戻れ」
眼を見開く息子。その口元がフッと緩む。
「では、皇子ライアンに要塞の我が存在をリークさせた、その理由(わけ)もお聞かせ下さい」
「感付いておったか」
「父よ。どうか息災で」
右掌を左胸に当てて離す――エルフの別れの挨拶をした息子の姿が消える。

二人の手によって押し開かれた重い扉。垣間見えたは街を荒らす降魔の軍。その映しは扉が閉じた後もしばし眼に焼きついた。


神殿の間に闇と静寂が戻った。
眼前の影に眼を落とす。二つの眼が輝きを増している。――ようやく……二人になれたな。我が弟、ベテルギウス。

「動けぬ振りはもう良い」
軽く身じろぎ、何事も無かったかのごとく泥地から浮き出る魔導師。

「礼を言わねばなるまい。ぬしが諭さねば、あれは思い余りそちら側に付いたやも知れぬ」
「あれは昔からぬしを慕っておる。私が同じ事を云い諭したとして、はたして靡(なび)いたか否か」

吹き荒れる嵐の声。其方が生まれた時分も、こんな嵐の夜だった。

「学者膚(がくしゃはだ)、とでも言うか。我等の血族は代々その血を受け継いできた。其方は知らぬであろうな?」
「私とて……外なる術を知り、習得せんと欲していたことを。出来るなら其方に成り替わりたいと、密かに願っていたことを」

やること成すことすべてが決められていた。起床の時刻、衣服、食事、習得すべき学術、技術、そして魔術。
一族が掟。大陸が監視者となるが定めと決定せしめられ。無論反抗など許されず。

「勇者を助け、父が身罷った話は幾たびかしたやに思う。私がわずか75で跡目を継ぎ、その直後に其方が生まれたことも」

母を早くに亡くした弟を、賢母と名高い乳母に託した。
何にも興味を示す其方をわが身に重ね、自由にさせよと頼んだもしばしば。
貪欲に知識を我が身とし、研鑽する姿を見た長老達は、危惧したものだ。名高き賢人となれば良し、さもなくば脅威ならんと。
私は――見て見ぬふりをした。

「水鏡にて、其方の研究の対象が賢者の石であると知れた時……あの時の驚愕は今も忘れぬ」
「触れてはならぬ原石。あれほどならぬと諭した外法中の外法。それに我が息子までもが……」

エレド・ブラウ含む大陸のエルフのみならず、人間の王達に知れ渡るは時間の問題だった。
無造作に置かれた賢者の石が、周囲の水を汚し、動植物を蝕むという過去の事例が話題となり、
特殊な細工を施せば、火炎球など問題にならぬほどの火力、威力を有し、ただの数個で大陸が滅ぶと学者が吹聴した。
石をエルフが精製したと知れば人間はどう出るか。人間の数はエルフの十数倍。経済制裁のみならず、物理的制裁は必至。

「私はエレド・ブラウの長として、即ちすべてのエルフの長という立場にて審判を下さねばならなかった」
「エルフ社会における極刑は死にあらず。しかし私は訴えた。死刑を認めよ。半ば殺すは殺すに同じと」
「長達は笑った。ならば最長老息子の腕も落とすが宜しいかと……息子を楯に我が意見を退けたのだ」

言い訳だ。今更こんな事を言ったところで、笑い草にもならぬ。
だが……この場が「最期の場」となるならば、云っておかねばならぬ。

「死んでくれと願った。出来ることなら苦しまず……治癒の呪文を封じたはその為」
「しかし其方は生き、そして戻った。長老達がもっとも危惧した……脅威となり」

――恨むぞ? 其方の命を拾った諸悪の根源を!
其方の言う『陛下』が如何程のものか! どの甘言にて惑わしたかは知れぬが! 二度も実弟を殺さねばならぬ辛さは解るまい!

「知っていよう。いかに闇が強くとも、実体無き力にて水の鏡は割れぬ」
「この私が憎かろう? 兄の首、取りたくばその身を以てこの懐に入るが良い」

246 無影将軍ベテルギウス </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/30(火) 20:22:01.05 ID:UIpYZTg6

>動けぬ振りはもう良い

長老の言葉に、ベテルギウスの身体がふわりと浮き上がる。『浮遊』の魔法だ。
ルークをはじめとした勇者の一行は、まんまと神殿から逃げ出した。残ったのは、ふたりのエルフ。血を分けた実の兄弟。

>私とて……外なる術を知り、習得せんと欲していたことを。出来るなら其方に成り替わりたいと、密かに願っていたことを

静寂の中、長老が語り出す。
それは、今まで知り得なかった真実、隠されていた事実。
――しかし。

「……ク……クククッ……。ククッ、ク……クハハハハハ……!」

長老がすべてを言い終わると、ベテルギウスはおもむろに嗤い始めた。

「堕ちたものよなあ……兄者よ。そのような話で、我が心が些かでもさざ波立つと思うたか?」
「我がその話に落涙し、首を垂れ――『然様な事情があったのか、赦せ兄者』と――そう悔悛することを期待しておるのか?」
「カ、ハハ――ハハハハハッ!ハハハハハハハハハハハハ!」
「……微温(ぬる)い、わ!」

すっぽりとかぶったフードの中から炯々と双眸を輝かせると、ベテルギウスはそう言い放った。
同時に、身に纏う闇の魔力が一層その濃度を増す。

「二千年!二千年の永きにわたり、ただおのれの首が胴より離るることのみを願って生きてきたのだ!」
「この怒りと憎しみの焔(ほむら)を――そんな戯言ごときで鎮められると思うてか!なれば、結果は狙いとは逆しまよ!」
「おのれの寝言で、我が焔はなお一層猛り狂うておるわ!されば――さればよ!望みどおりにしてくれよう!」

ずい、とベテルギウスが一歩を踏み出す。

「あわよくば、諸共に死して我が体内の石だけでも取り戻そう、と考えておるのだろうが――そうは行かぬぞ、兄者よ」
「二千年の間、この我が。魔王軍の知恵袋たる無影将軍が、ただおのれらエルフと同じように無為に時を食んでおったと思うのか?」
「我が闇は、二千年前に対峙したときとは比較にならぬ!此度はおのれの負けよ、ミアプラキドス――!」

ボアッ!

ベテルギウスの右手に炎が宿る。自らの胸のうちで燃え猛る憎悪そのもののような、黒く禍々しい炎。
それは闇であると同時、すべてを焼き尽くす獄炎でもある。地獄の業火が長老の水鏡と接触し、大きく揺らめく。
ずるり、とベテルギウスが水鏡の内へと入る。

「死ね、兄者!そして――幽界より我が業の行く末を見届けるがよい!」

ミアプラキドスが言ったように。
手ずからその因縁に決着をつけるべく、ベテルギウスは大きく右の義手を振りかぶった。

247 無影将軍ベテルギウス </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/08/30(火) 20:24:22.68 ID:UIpYZTg6

神殿の外へ出たルークたちの目に飛び込んできたもの。
それは、死と破壊の光景だった。
身長5メートルはある、筋骨隆々の戦士をかたどった動く石の彫像――ストーンゴーレムが、当たるを幸い両腕を振り回して木々をなぎ倒す。
陽光を反射してきらきらと輝く、琥珀のライオン――アンバーゴーレムが、生き物のように駆けてはエルフたちを歯牙にかけてゆく。
空には翼を生やした悪魔のような異形、ガーゴイルが無数におり、逃げ惑うエルフを追っては引き裂いている。
一つ目の巨大な肉塊ビホルダーといった魔法生物の姿も見える。闇の魔法を力の源とする、魔導の軍団――降魔兵団。
無影将軍ベテルギウスが魔王より預かった八大軍団のひとつが、エレド・ブラウを蹂躙している。

エルフという種族の、徹底的な殲滅。
それがベテルギウスの目的である。そのため本来は参謀として魔王の傍に侍るべきものを、ここまで出向いてきたのだ。
降魔兵団は、そのすべてを首魁であるベテルギウスの魔力に依存している。
そして、ベテルギウスは魔王に臣従することで、常に魔王から魔力を供給されている。
つまり――降魔兵団は無尽蔵とも言える魔王の魔力によって維持されているということだ。
生物である魔狼兵団や百鬼兵団は、損耗すればその補充には少々の時間を割かなければならない。
が、降魔兵団にはそれがない。減れば即座に充填する。いくら倒そうとも、その数は尽きることがない。
ベテルギウスを、そして魔王を倒さない限りは。

《ゴオオオオオオアアアアアアッ!!!》

屈強な肉体に腰布だけを身に着けた意匠のストーンゴーレムが、巨腕を振り上げてルークたちへと襲い掛かる。
口の端に食い殺したエルフの肉片をぶら下げながら、アンバーゴーレムが次の獲物に狙いを定める。
ただし、ルークたちの存在に気が付いたのは一部の者だけだ。今なら、最低限の戦闘で突破することができるだろう。
だが、それは『自分たちだけが逃げる道を選ぶなら』の話だ。
エルフたちも弓などの武器を手に取り、懸命に抗戦しているが、圧倒的物量と強靭さを誇る無生物の軍団に押されている。
まして、相手は疲れることを知らない。手足が、頭が欠損しようと、粉々にでもならない限りは戦い続ける。
このまま有効な手だてがなければ、きっとエレド・ブラウは明日の日の出を待たずに滅びることだろう。

目の前には、ストーンゴーレムとアンバーゴーレムが一体ずつ。
これを退けることさえ可能なら、逃走はできる。
ルークも、シャドウも、神殿から出てきた一行は生き延びることができる。
だが、この森は滅ぶ。ひとりの例外もなく、エルフは死ぬ。
逆にもしルークたちがエルフを助ける道を選ぶなら、全員とは言わずとも幾人かのエルフを救うことはできるだろう。
ただし、そうなれば当然、ルークたちに生存の道はなくなる。

分岐はふたつ。進路はひとつ。



時間は、ない。

248 創る名無しに見る名無し
2016/08/31(水) 01:13:20.96 ID:ArBfuWo6

☆ みな様、衆議院と参議院のそれぞれで、改憲議員が3分の2を超えました。☆
総務省の、『憲法改正国民投票法』、でググって見てください。日本国憲法改正の
国民投票実施のためにまず、『国会の発議』、を速やかに行いましょう。お願い致します。☆

249 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/01(木) 17:45:31.72 ID:BaEovWRc

酷い光景だった。何処を見ても――血だった。血に染まる木。引き裂かれたエルフ達。腕。足。首。その――血。
空を覆っていた筈の枝葉の街に、ぽっかり空いた幾つもの穴。そこを小型の竜みたいな何かが横切った。

「父さん!! これは!!?」
「敵から眼を逸らすな!!」――横に立つ父さんの視線の先に……何あれ!!?
琥珀色の透明な、ライオンの形をした獣。一種のゴーレム? 口にぶら下がっているのは、見ず知らずのエルフの首。

グアルルル……

軽く唸り、ポイっと首を放ったライオンはいきなり父さんに襲いかかった。
ヒラリと回転してその牙から逃れる父さん。上から突き出る太い幹に飛び移り、追うライオンの爪と牙を紙一重でかわしている。
呪文を使う様子はない。確かにゴーレムに【凍気】系は効かなそう……。そういや琥珀って燃えやすいんじゃなかったっけ。
そう思いついて呪文を唱え始めたけど……

「――よせ!! 街を焼く気か!!?」
「……えっ……だってこのままじゃあ……」

両者の一方的な戦いをしばらく眺めていた俺は、またもや誰かに突き飛ばされた。

「何してる!! 戦え!!」

ライアンだった。さっきまで俺が居た場所に、でっかい……とにかくでっかい岩の巨人――ストーンゴーレム。
振り下ろされた腕が神殿の石段を砕き、その破片が凄い速さで飛んできた。その数は……数えきれない! 避けるのはムリ!
こんな時は氷の障壁がいいんだけど、俺、水と氷は使えない。火と風はあんま障壁に向かない。残るは……
俺は後ろにジャンプしつつ、右腕を前へ突き出す。

【母なる大地よ! 育む力(パワー)をこれなる木へ! ――解き放て!】

エルフ語を解するライアンが急いで俺の横に並ぶ。
一瞬だった。
前後左右、すべての木から伸びた枝が、幾重にも折り重なった巨大な網になって岩の弾丸を受け止めた。
すぐに俺達を追ってきたゴーレムが、網に拳を叩きつける。枝がしなり、折れた小枝が霰のように降ってくる。
「網が壊れる! どうすればいい!? ストーンゴーレムに有効な呪文は!?」
「ない」
「え?」
「直接的に有効な呪文はない! とにかく逃げろ!!」

「――そんなあ!!!」

250 ミアプラキドス </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/01(木) 17:46:36.47 ID:BaEovWRc

――我が言葉は届かず、むしろその憎悪を滾(たぎ)らせたのみ。

黒炎が水鏡を焼き、一種異様な音を立てた。
闇属性は受け入れぬ筈のドームを難なく崩し、ベテルギウスがこの内へと身を滑らせる。

――其方は云ったな。真なる王の資格を有するは魔王だと。器が違いすぎると。
当然であろう。魔王は王。天が地を治めんが為降り立った神の御使いなれば。
たしかに魔王の支配はささやかなる犠牲と引き換えに恒久の平和をもたらすかも知れぬ。
しかし。それは我等が万物の霊長の地位を降りることに他ならぬ。惜しむべくは命ではない。誇りなのだ。

冷たく光る瑠璃の瞳が、凍気の矢の如くこの眼を射る。

――何故ここに来た。
仮に私が魔将であれば、真に魔王の意に沿う気があれば――第一に魔石を何処かへ隠したであろう。
その上で長(おさ)を捕縛、或いは殺した上で、部族を投降せしむ。
人もエルフも貴重なる魔王の糧なれば、エルフを魔王が隷属と化すが至上の命題。
それをせず、同族に兵団を差し向け、あまつさえ封じの石を携え、我が目前にて飲み下す。
理に合わぬな? 是なり。其方は――――魔王に傅いてなどおらぬ。


右の足を後ろにずらした半身の状態にて、振り上げられた右腕を左手で掴んだ。焼け石に水を掛ける音と共に黒煙が上がる。
黒炎が掌から手首に燃え移り、見る間に腕を浸食していく。
この時、ベテルギウスは気付いただろうか。水鏡がその姿を蛇に変え、両の足に巻き付き蔓の如く這い上っていたことを。
ゆえに、苦痛の呻きを漏らしたのは兄だけでは無かった。
胸にまで達していた水の蛇が、万力にも勝る力でベテルギウスを締め付けたからだ。
ぬらりと透ける蛇が割れた舌を覗かせ、ついには首まで這いあがった。閉じた口を、食い縛る歯の間を無理矢理にこじ開ける。

「魔石がそれを呼んでおる。石は鍵。『僧正の石』の鍵穴は水鏡そのもの故に」

ミアプラキドスの腕を浸食する炎の勢いも止まらない。二の腕までもが侵され、ついには肩口までもが燃え、炭化する。

「知っていた筈だ。石を飲まずば……死なずに済んだやも知れぬことを」

ベテルギウスの身体がビクリと痙攣した。石を見つけた水鏡が――歓喜したのだ。
膨れ上がる光のエネルギーが「闇」を内側から食い破るまで、あと――僅か。

――ベテルギウスよ。業を背負い生まれたお前に何をしてやれた?
生まれついての性(しょう)。二千年の時を経ても変わることのない性。
もしあの時。水鏡が、近くのみならず遠い未来をも見通すことが出来ていたら、お前を……生まれ出たその時に殺せたか?
――否だ。業を背負うは私とて同じ。ならば――お前にしてやれる事はひとつよな? ベテルギウス。

黒炭と化した腕が肩口からはぜ割れた。黒い傷口には置き火の如く赤い光がチラつき、更なる浸食を試みている。

「この左腕は手向けだ。その腕を奪った私からの、せめてもの手向けよ」

風が、嵐がその勢いを弱めていく。

「どうした我が弟よ。言うべき事があるだろう。まだ口はきけるはず」

エルフが誇る大聖堂。闇に侵された壁、床が、天井が、徐々にその本来の色を取り戻していく。

「腕一本では不足か? ならば右の腕もくれてやる。両の眼も、足も、お前にやるなら惜しくは無い」
「首はやれぬがな。我が責務は大陸全土に生きる者すべての道標なること、そして勇者(希望)を繋ぐこと故に」

251 無影将軍ベテルギウス </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/02(金) 21:55:30.65 ID:HivFtoOV

無影将軍ベテルギウスは、魔王軍でも随一の知恵者。
その叡智は天に届き、地を統べ、万理万象の真理に通ずる。
2000年前、魔王軍はベテルギウスの知謀によってその支配を盤石のものとし、ありとあらゆる生物は魔王の前に拝跪した。
魔将軍の造反という想定外の出来事さえなければ、無影将軍の知略は魔王に永遠の覇権を約束するはずであったのだ。

そんな無影将軍の頭脳は、2000年を経た今となっても聊かも衰えてはいない。――否、より一層鋭さを増している。
ただし、それは『エルフ』という種族がベテルギウスの視界に入っていない時の話だ。
エルフが関与した途端、この冷静沈着な参謀は普段の落ち着きをたちどころに失い、憎悪と殺戮の化身へと変貌する。

今回もそうだ。仮に殲滅対象がエルフでなかったなら、ベテルギウスはこんな行為はしなかっただろう。
長老の考える通り挑発に乗らず、魔石を隠蔽し、搦め手で勇者たちが破滅してゆくよう仕向けたに違いない。
もし他の魔将軍の誰かが今の自分のような行動をしていたなら、愚か者めと悪罵を投げていたはずである。

――しかし。

相手は恨み骨髄のエルフ。ましてその長は自らを否定し、利き腕を奪い、追放した実兄ミアプラキドス。
その事実が、2000年間身の内で燃やし滾らせていた憎しみの炎が、ベテルギウスに冷静な判断を失わせた。

「カ、ハハ、ハハハハ―――!燃えろ!我が憎悪の黒炎に、魂の一片さえ焼き尽くされて死ね!」
「――!?グ、ォ……?これは……」

見る間に黒く焼け爛れてゆく兄の左腕。肉の焼けるにおいを嗅いで喜悦を露にしたベテルギウスだが、すぐにその笑みが強張る。
自分の脚を伝い、這いあがってくる水蛇。その締め付けに、決して頑健とは言えない肉体がみしみしと軋む。

「ガ、ァ……ッ!お、のれ……ッ!小賢しい……真似を……ッ!」

ベテルギウスは対の手にも黒炎を宿し、水蛇を我が身から剥ぎ取ろうと試みたが、びくともしない。
それどころか蛇身はますます絡みつき、その力を増してゆく。
呑み下した魔石が体内で光を放っているのがわかる。膨大なはずの闇の力を退けているのがわかる。
ギリリ、と奥歯を噛みしめると、ベテルギウスは炯々と輝く双眸で兄の両眼に視線を合わせた。
その肉体は獄炎に炙られ、左腕が肩から崩れ落ちたというのに。身を焼かれる痛みは、この世のどんな苦痛にも勝るはずであるのに。
――なにゆえ、この男は今なおこれほど涼やかな眼差しをしていられるのか――?

「そ……の……、その目で我を見るな……!その目!その、哀れみの眼差しで……!我を!見ることは許さぬ……!!」
「石を奪還して……我に勝ったと思っておるのだろうが、そうは……行かぬわ……!」
「我が、魔石を呑み下した理由――ただ、おのれらの眼前にて絶望を味わわせるためだけの行為と思うたか……!?」
「カ、ハハハ……。甘い、甘いわ……!おのれらの絶望に沈む顔が見られるのなら、我が命など安いもの……」
「ならばよ、兄者……!一足先に……冥府で、待っておるぞ……!せいぜい、無窮の絶望に喘ぐが善いわ!カ、カハハ……!」

漆黒のローブの胸元が、闇の魔力を退けて眩く光り輝く。魔石がその縛鎖から解き放たれようとしている。
が、ベテルギウスは嗤う。兄とは真反対に、憎しみの真紅に燃え盛る双眸を爛々と輝かせて。

「偉大なる我が主君よ、全能全知の大君よ!無影将軍ベテルギウス、これにておいとま仕る!」
「さりながら、我が働きは不滅なれば――玉座にてご照覧あれ、我が最終最期の大魔法――!」

カッ!!!

ば、とベテルギウスが身体を大きく仰け反らせ、両手を天に掲げる。
と同時、ベテルギウスの肉体は内から迸る光によって爆ぜ、一片の肉塊さえも残さず四散した。
後に残ったのは、徐々に薄れてゆく闇の魔力の残滓と、中空に浮遊する僧正の石。

しかし。
美しく輝く魔石の下部に、ほんの……ほんの僅か。
ひとつの黒点が染みのようについていることに、果たして気付く者はいるだろうか。

252 </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/02(金) 21:59:00.87 ID:HivFtoOV

ストーンゴーレムが腕を振りかぶり、力任せに地面を殴りつけるたび、爆発したように地面が隆起する。
地震さながらに周囲が鳴動し、木々が軋む。
ストーンゴーレムの攻撃方法とは『近寄って殴る』。ただこれだけである。
だが、それがめっぽう強い。生物ではないため四肢が欠損しても動き回るし、負傷して戦意を喪失することもない。
石の身体であるから魔法への耐性もあるし、もちろん刀剣の類にも強い。
有効な対策と言えば、ただひとつ『とにかく圧倒的な破壊力によって粉砕する』。これだけだ。
中級冒険者どころか、上級の冒険者パーティーさえ手を焼く難敵、それがストーンゴーレムである。
強いて弱点を挙げるとすれば『動きが鈍い』という点だが、それを降魔兵団は圧倒的物量で克服している。
アンバーゴーレムが素早い動きで獲物を追跡し、負傷させて機動力を奪い、ストーンゴーレムがとどめを刺す。
まさに、降魔兵団は疲労も死も知らぬ無敵の軍団と言ってよかった。

――が。

そんな無敵の軍団の動きが、突然鈍くなる。
ルークたちを追跡していたストーンゴーレムが、ギシギシと関節を軋ませては束の間、動きを止める。
ルークたちを狙っていた者だけではない。エレド・ブラウを襲撃中の魔物すべての動きが、一斉に緩慢になる。
ストーンゴーレムやアンバーゴーレムは、極端に鈍重になり。
ガーゴイルは空を飛ぶことが不可能になり、次々と墜落し。
異界から召喚された魔法生物たるビホルダーは、現界が困難になりその存在が希薄になりかけている。

降魔兵団は、その活動に必要な魔力のすべてを魔王に依存している。
そして、魔王の魔力は軍団長たるベテルギウスを介して各魔物へと供給されている。
魔王が、そして軍団長ベテルギウスが健在な限り、降魔兵団は常に最高のポテンシャルで活動し続けることができる。
しかし、それは裏を返せば、魔王かベテルギウスのいずれかに不測の事態が起こった場合、たちまち軍団は活動維持が困難になるということを意味している。
現在の降魔兵団の不具合は、まさにその不測の事態が起こったことの証左。
逃走を試みるのなら、それは今をおいて他にはないだろう。




ベテルギウスが最期に使用した魔法は、我が身に内包した闇の魔力によって魔石を汚染するというもの。
本来、完全に魔石を汚染するには長い時間を必要とするが、ベテルギウスはその時間を得る前に爆散してしまった。
が、ほんの一瞬だけでも魔石を体内に宿すことで、魔石にほんの一片闇を植えつけることには成功した。
それを浄化せぬ限りは、然るべき鍵穴に魔石を入れたとて、魔石は十全な効果を発揮はすまい。

無影将軍の死は、瞬く間に魔王へと伝わる。その最期の魔法の意味も。
魔王の座す玉座のある謁見の間には、次なる指令を待って覇狼将軍、皇竜将軍、百鬼将軍の三柱が控えている。

253 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/05(月) 17:24:12.92 ID:PMQctDVg

「ライアン! フサルクの剣で何とかならないの!?」

ゴーレムが腕を打ちおろす度に足場の木が大きく撓(しな)る。――うわわっ……落ちるっ! 
「この剣ではパワー不足だ。あいつの魔力耐性を上回る魔力剣……アルカナ=ブレードか師剣クラスでないと・」
ボキリと太い幹が折れた。行き場を失ったライアンが咄嗟に近くの小枝を掴む。
その枝、俺がやっと立ってた木の枝の小枝だったから堪らない。
二人分の体重に耐えかねた枝が折れ、俺達は真っ逆さまに落ちた。すかさずさっきと同じ呪文を唱える。

「……便利なスペルだが……消費魔力はどのくらいだ?」
柔らかい枝葉のネットの上でバウンドしながらライアンが聞く。
「ほとんど無い。成長に必要なエネルギーは大地が受け持つからさ。俺はそのきっかけを与えるだけ」
「なるほど。使えるな」

父さんが息を切らしてこっちにやってきた。ぐるりと俺達の周囲を見渡す。
上にはさっきまで父さんを追っかけてた琥珀色のライオンが、蔦の網に捕獲されてぶら下がっている。
後ろのでかいゴーレムも。幾重にも折り重なる蔦の網が巨体を絡め取り、動きを封じていた。
うん。木の枝じゃなく、柔らかくてしかも丈夫な蔦を使ったのがポイント。……これが森以外でも使えたらなあ。

来る敵来る敵をネットで絡め取っているうちに、俺達の周囲に半径50ヤードほどの網のドームが出来上がっていた。
無事でいられたエルフは俺達も含めて20人程度。とりあえず敵はこれで侵入できない。
束の間の休息。
怪我をしたエルフ達が互いに【治癒】をかけ合っている。ライアンは……軽い擦り傷だから、まあいっか。
父さんは腕に深めの裂傷が3本。ちょうど良かった。聞いてみたいこと、あったんだ。

「父さんってさ、小さい時に大叔父さんの研究室に迷い込んだ事があったって?」
「そうだ。私が10の時……」
俺の治療を受けながら答えた父さんが、いきなり驚いた顔を俺に向けた。
「ルーク!? お前、あの時私が心中で叫んだ声が聞こえたのか!?」
「え?」
「他者の心を読む能力。歳を重ねたエルフのみが使える力だ」
「あ、いや。心読むって言うより、大声で思うとたまたま聞こえるっていうか……」
「十分だ。そうか。お前が……」
ちょっぴり深刻な顔して考え込む父さん。いやあの、そんな事はどうでも良くて、聞きたいのは……
「父さんって……ほんとは幾つなの?」
「……う? ぇ?」
呆気に取られた変な声。……そんなに驚く?
「だってさ。大叔父さんが魔将になっちゃったのが2,000年前なんでしょ?」
「……そう……だ」
「その事件に父さんも噛んでる。って事は……少なくとも父さん。2,000歳以上なんじゃあ……」
「ルーク」
すご~く真面目な顔して正面に座り直した父さん。思わず俺も口元を引き締める。
「呼び出した水の精霊が、水時計に見とれて動いてくれないこと、あるよな」
「――。……え?」
「食糧倉庫のパン。上に持って上がったとたんにカビが生えることも」
「父さん。要塞のあるあるを披露して誤魔化してもダメだから」
「……」
ちょっと押し黙った父さんが腰を上げた。手をかざして上を覗っていたライアンがこっちを見る。
「私がルーンの大帝に拾われた話はしたな?」
「うん」
「騎士の叙任に先んじて提出する履歴書があってな」
「履歴……書」
「その年齢欄につい300と……見栄を張った。反省している」
「……あのさ。俺からすれば100超えた時点でみんなジジィだよ?」
「……ジジィ……」
ため息をついて肩を落とした父さんが、思い直したように背中を逸らした。
「そんな事はない。エルフ社会では1000越えでようやく大老扱い。せっかくの新天地。新たな自分でやり直しがしたかった!」

ああもう大げさにググっと手を握り締めたりして……別にいいけどさ。父さんが年のサバ読んだ所で迷惑する人誰も居ないし。
てかエルフって……ほんと長生きだね。2,000歳かあ……。

254 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/05(月) 17:27:02.25 ID:PMQctDVg

ほんと、束の間の休息だった。
右肩をザワリとする何かが掠め、反射的に横に飛んだ。
父さんとライアンが俺を庇うようにして身構えたその先に、見たことも聞いたことも無いひとつ眼玉のモンスター。
手足はない。肉の塊みたいなまん丸い身体の上に、これまた眼玉がくっついた触手がいくつも生えている。
その眼がギョロっとこっちを見た。

――ヴヴヴヴ……ギチギチギチ……
何に例えたらいいか良くわからない……不気味な音。でっかい眼玉が時々バチンと瞬く。
「父さん! なにあれっ!!」
「○ホルダー。魔法生物の一種だ」
「なんか変な音してるけど!?」
「ビ○ルダーは異界の魔法生物。この次元に存在するための必要エネルギーの余剰分が、この世界の大気に触れ弾く音」
「そうなんだ! さっすが2,000超え!」
「……たぶん」
――おお憶測ですかいっ!

「で、どうすればいいの!? 弱点は!?」
「捕縛は出来ん。巨眼の視界内はすべての魔力が打ち消される。もっとも恐るべきは触手から放たれし怪光線」
エルフの一人の腕を光線が掠めた、と思ったら、その腕が瞬時に消えたっ! 分解っ!? なに!?
かと思えば別のエルフが足を押さえて……うわわわ! 足が石になってるっ!!?

「うそっ!? 超強敵じゃん!!」
「知能が高いゆえに闇雲に襲っては来るまいが……」
――いやいや、無茶苦茶打ちまくってますけどっ!! 後ろにいるエルフ達も避けるの精一杯・……ん?
なんで前にいる俺達より、背後に打つ光線の数が多いの? ……もしかして……
「父さん! まさかだけどあいつ、自分の光線まで巨眼の視界で打ち消しちゃったりするっ!?」
「……なるほど。そうかも知れん。こちらに光線を放つ際、あの眼を一瞬間閉じるのは……そのせいか」
「じゃあ閉じてる間に攻撃すればいいんだね!?」

それを聞いてたライアンが、懐からフサルクの剣を二本取り出した。

≪ ウンジョー=wunjo ≫ ≪ ハガラズ=hagalaz ≫

ウンジョーの意味は光。怪光線がうまく跳ね返されて、近くの木を石に変えた。
同時に閉じた眼に向かって投げつけられた‘破壊’の剣が、巨眼の瞼を縫いとめるように突きささる。

ヴヴヴヴヴヴヴアアアアア―――!!!!!

うわヤバっ!!
苦しい? のかどうか良く解んないけど、ヤバげな声を上げたビホ○ダーが、やたらめったらに怪光線を打ち出し始めた。
どういうこと!? 自分の眼が使えない分、逆に光線打ちやすくなってない? 
疑問! その巨眼、いったい何のために付いてるのーーーーーー!!?
今度は魔法効くから防御壁張ればいいって思うかもだけど、実際ムリ!! 数がハンパ無い!!

地面をゴロゴロ転がりながら、ふと気付いた。光線が……あいつの足元にだけ届いていない事に。
無我夢中だった。
「ルーク!?」
スライディングでビホル○ーの懐近くに飛び込み、背中の剣を抜いた。

「届けぇえええええ!!!!」

結局剣は届かなかった。届く寸前に……ビホルダ○の姿が消えたからだ。

255 ミアプラキドス </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/05(月) 17:28:34.32 ID:PMQctDVg

サラリ……

闇の残滓が砂となり、それも溶けるように消えた。中味の無い魔導師服が、クタリと床に畳まれる。
一瞬間人型を保っていた水鏡が、赤い魔石と共に器へと戻る。

「仕舞まで曲げず――か。見事な最期よ」

安堵し、刹那、左肩の痛みがぶり返す。見ると肩の浸食は未だ止まず、赤い光が明滅しつつ傷の上をぬらぬらと這っている。
あまりの痛みに【治癒】どころか【癒し】の想起も出来ず。ぼやける視界。首を振り、何とか意識を保つ。
――いま少しの辛抱だ。石に我が意思を伝え、結界を完成させねば……

「『僧正の石』よ! この身を主(マスター)と認めるか否か!」

しばしの沈黙ののち、石が微かな音で答えた。ならばとガラス片にて右手首に傷を付け、水面(みなも)に浮かぶ石にかざす。
ポタリ……
血に染まる石は……何も語らず。沈黙を保つのみ。
よもや血が足りぬかと数度試すも、結果は同じ。鍵と鍵穴が一体となる結界の様相を呈さず。微かな苦鳴。急ぎ魔石を手に取った。
「なんとっ!!?」
眼を凝らした……朱に透き通る石の中に、一片の黒点。黒い滲みがゆらりと揺らぎ、燃え盛る業火となる錯覚。
――あの眼よ! 死の間際、この眼を射ったあの眼に同じ!

「ベテルギウス!! 其方……そこまで……!!?」

たとえ一時の汚染でも、浄化に要する時間は計り知れない。
そっと……石を水鏡に置く。広がる波紋。鏡が石を癒す柔らかな光を宿す。それを助けるべく、呪文を紡ぐ。
――いつ終わるかも知れぬ仕事。果たしてこの命が……持つか……

水の器に添える手が力を失い、滑り落ちた。視界が闇と化し、音が消える。これは休息か……死か。

256 ミアプラキドス </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/05(月) 17:29:59.45 ID:PMQctDVg

――


『ミアプラキドス。じき生まれる弟を頼むぞ』
そう言い残し、眼を閉じた父。胸の上で組まれた手が、見る間に黒く変色していく。
父が勇者を説得し、魔王を倒すと決意させたはつい今朝方。
朝餉の刻に姿を見せぬ父を捜し、聖堂の水鏡の傍に倒れている父を見つけた。その肩に突き立つ黒羽根の矢。
おそらくは……堕天使の羽根。
逃げ遅れた間者は『僧正』の手で倒された。僧正と、急ぎ引き返した勇者と共に、父を回復させようと試みた。
しかし……何もかもが徒労に終わった。羽は抜けず、傷より広がる闇はやがてその心の臓を止めた。
『エルフのおじさん! 死なないで!』
そう叫び、父の手に己が手を重ねたのは……賢者が生み出しし勇者、アウストラ・ヴィレン。
癖のある茶色の髪に、青い眼。今年で17になるという。
魔法、剣術などで秀でる所がある訳ではないが、何故か他を惹きつける。
すでに各地を旅し、エルフ、ドワーフ双方に心を許した友があると言う。おそらくそれこそが……勇者の資質。
『魔王は僕が倒すから! 魔法使いと戦士もすぐに見つけるから! だから死なないで!!』
眼を開けぬ父、その腹の上で泣く勇者。
誰かに似ている、と思う。遥かなる未来、自分はもう一度この勇者に遭うだろう。そんな確たる思いが過ったは何の兆しか。




――カツン……

硬い床を踏む音が夢を現(うつつ)に戻す。
見上げたそこに、白い人影が立っていた。知った顔だった。

「アシュタロテ……?」
昔、まだ若き時分にこの心を奪いし愛しき女人。美しい銀の髪を揺らし、女がそっと膝をつく。
「忘れたの? アシュタロテは魔王自身の手で滅ぼされた」
そうだったと思い返す。この女は魔王が作りし人形。
空いた魔将の席を埋めんと……アシュタロテを素体として作られた人形だ。名は……エレンディエラ。
「其方は魂も自我も付与出来ず、それ故に『人形師の里』に捨てられたはず。いったい何が……?」
「……意識だけは……あったのよ。ずっと。陛下と貴方達の存在を感じてた。ただ動けなかっただけ。見えなかっただけ。想いを……伝えられなかっただけ」
ふと哀しい微笑みを浮かべたエレンディエラが、白い手をこの頬に伸ばした。
「つい最近なの。ほんの……80年前」
手がそっと頬を撫でる。
「父様があの里に来た。『特別に純度の高い石だ』と言って、黒い箱をこの胸に仕舞った」
「……父?」
「『私の石を分けてやろう』と言って、青い魔石をこの眼に入れた。お陰で……私は……」

女の白い手が喉輪にかかり、ゆっくりと締め付けるがしかし、ふとその手が緩む。

「やっぱりやめとくわ。『お使い』の途中だし……すぐに『新手』が来そうだもの」

――カツン……

遠ざかる靴音。再び……遠ざかる意識。

257 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/05(月) 17:31:19.70 ID:PMQctDVg

【閑話休題、ややこしくなってきたストーリーを時系列にまとめました】
【もっと早くにやっていれば、シャドウの年齢詐称疑惑は無かったかも知れません。申し訳ありません】

258 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/05(月) 17:43:52.56 ID:PMQctDVg

(?が付いているものは年代が不明記のもの)

10000年前?~(以後「年前」を省略)
 闇の軍勢が大陸全土を支配し、人間、エルフ、ドワーフが魔王の望むままに糧と生贄を供給していた時代。

2120 エレド・ブラウのエルフの長に嫡子ミアプラキドス生まれる。
2075? オークランドの魔導師、魔道を極め『賢者』を名乗る不死者となる。以後、魔王が賢者を度々誘惑。
2062 賢者、『賢者の石』と魔道を用いて『勇者=アウストラ・ヴィレン・デュセリウム』を生み出す。
2045 ミアプラキドスの父、勇者(17)を説得し魔王退治を決意させるが、魔王の羽根を受け絶命。直後ベテルギウス誕生。
2015? ミアプラキドスに嫡子ヴェルハルレン(後のシャドウ)生まれる。
2005 ヴェルハルレン(10)、ベテルギウス(40)の研究棟に迷い込み、叔父と知らず接触。『賢者の石』に興味を持つ。
2004? ベテルギウス(41)、『賢者の石』探究の罪で右腕を落とされ放逐されるが、魔王に拾われ参謀格「無影将軍」となる。
2001? 八大魔将アシュタロテが五要となる。魔王、アシュタロテを素体とした人工生命体「エレンディエラ」作成。
2000? 結界が完成し魔王がベスマの地下に封印される。魔将らは散り散りに。
2000~ ベアル・ゼブルが大陸支配を自分の子孫に託そうと目論み、ルーンの王女との間に子を作る。
1000~ 結界の石が姿を消し始める。魔族達が横行を開始。ルーン王家が分裂、ベスマ地区がアルカナンの領土となる。
110? アルカナン国王、ベスマ地下研究棟の地上部に巨大な要塞を建造する。
105 大陸全土を巻き込む大戦勃発。アルカナンも他国の友軍として参戦。
100? ベスマ要塞に英雄や将軍、魔導の碩学達が集結。大戦中ながら、地下の研究棟が王都をも凌ぐ魔道の総本山となる。
80 ビショップ(60)がベスマ要塞を訪問し、エターナルストーンを得る。
67 帝国貴族フェルディナンド・ヴエル・アウラ・ドゥガーチの第21子、ワーデルロー・デル・パウロ・ドゥガーチ生まれる。
45 アルカナン王族の血を引く貴族の家にラファエル生まれる
38 アルカナン国王第一子エスメライン誕生。同時にホンダの長女マキアーチャ誕生。
36 ホンダに次女イルマ誕生。アルカナン国王の第2子(後のグレイブ)誕生。その皇子は忌み子として埋葬されるが、人知れず何者かに掘り起こされる。
30 ルシア・シューベルトがグレイブを拾う。この出来事が世間を騒がせたとのこと。ルシアは間もなく事故で死亡。
29 瀕死のヴェルハルレン、ルーンの第290代帝国皇帝に拾われ、シャドウを名乗る帝国の魔導騎士となる。
28 グレイブ(8)要塞に捨てられる。
26 シオ誕生。
25 ルーン大帝の嫡子ライアン誕生。大戦の最中であり、森の奥に匿われる。同年、シャドウが帝国軍を撃退。ラファエル(20)の父戦死。
24 大戦終了。シャドウ、ライアン(1)の世話役となる。
23 ベスマ要塞に駐屯していた正規軍が撤収、王国に委託された傭兵団が防衛を受け持つ。ベリル誕生。
22 ベスマ要塞に委託された傭兵団の人員削減。
21 ベスマ要塞の廃棄が決定。グレイブ(15)。数カ月後には賢者を名乗る死霊術師が住み着く(と歴史書に記載)。ルカイン誕生。
19 ミアプラキドス、ルーンの大帝にベスマ要塞を襲撃するよう仕向ける。グレイブ、何者かに暗殺される。
  ワーデルロー(48)率いる帝国軍がシャドウと共に要塞を攻撃するが、ワイズマンとイルマ(17)、クレイトン(22)の3名が帝国軍を撃退。
  数ヵ月後、ルーン帝国崩壊。ライアン(7)、シャドウ戦死の知らせを受ける。まもなくルーン帝国崩壊、その領土はアインランド連合国となる。
  ルーンの帝王、逃亡先にてキーンタプに襲われ死亡。
18 キーンタプ率いるオークの氏族が要塞を攻撃。シャドウ、マキアーチャ(20)とクレイトン(23)、賢者と協力し撃退。
17 ルーク誕生。同時にエスメラインに第一子が誕生するが、赤眼であった為地下牢に幽閉される。
15? ライアン、アルシャインに弟子入り。
10 アルカナンで剣闘会開催。ライアン(15)、ベスマ要塞にてシャドウとその息子、ルーク(7)に出会う。ライアン、アルシャインの一団から離れる。リリス誕生。
2? ルカイン(19)とアルシャインが決闘、アルシャインが深傷を負う
0 ミアプラキドスの指示でライアン(25)がアルカナンに情報をリーク、シャドウが王国軍に捕縛。10年ぶりの剣闘会が聖アルカヌス闘技場で開催。

259 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/05(月) 17:44:16.60 ID:PMQctDVg

【魔王のロールが残っています。投下は明日になる予定ですので、よろしくお願いします】

260 赤眼の王 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/06(火) 07:03:55.80 ID:5LVPC7Vd

座していた赤眼の王が不意に腰を上げた。
赤い双眸をギリリと遠くの騎士に向け、広げた三対の羽根を戦慄かせる。同時に上がる、断末魔の叫び声。

「よもや攻めの一手も持たぬ坊主に我が愛しき部下が……」
誰にともなく言い放った魔王の呟き。
誰が、誰にどうされたとも言わぬ片言の言葉。しかし、間に控える魔将らが正しく理解するには充分な言葉だった。
彼等の顔に明らかな動揺が走る。
もとエルフとは言え、無影将軍は八大魔将の一人。魔力、智謀、どれを取っても太刀打ち出来得る者など居ないはず。
無論――元から魔族であるこの魔将らを除いては……であるが。

「己が恨みに耐えかねたか? いや……その恨みこそが……彼奴を魔将に仕立てた素因よな」

――あの時。並々ならぬ怨嗟の念を感じ取り、エレド・ブラウの外れへと飛んだ。
そこで見たもの。右肩より溢れる血をそのままに、ただただ身体を地に横たえるエルフ。
死から逃れようとも見えず。
『滅ぼしてくれよう』
同族を滅ぼさんとするその恨みの念。何よりも、眼(まなこ)に宿る強き意思。捨て置くには惜しい。
「決めよ。今死ぬか、この先、我が命(めい)を帯び死ぬか」

未だ完全体では無かったこの身が、彼奴にどう映ったかは知れぬ。
しかし魔族の王であると見て取ったのだろう。眼に宿す感情の色が変わる。返答を待つに……しばしの間。
「……命を……帯びたく存じます」
苦し気な息の下より紡がれし言葉。自ら闇に落ちんと欲する者の言葉は……いつ何時に聞くも良いものよ。
彼奴が賢者にも劣らぬ智略を以て八大魔将の座を得るに、いくばくの時も要さず。

「最も静なる魔将が……感情に溺れん。心の髄なる地への帰還を許した我が責であろう」

訝し気な眼を王へと向ける魔将達。
ベテルギウスが封印の石を携えエルフの神殿に向かった事を、彼等は知っていた。
その敗北は封印の完成、つまりは魔王の五体の何れかが石となる事を意味していた。
しかし――王の身体に変化は見られず。むしろ魔力は増している。殺された多くのエルフ達から奪いし糧の所為か。

「覇狼、皇竜、百鬼」
王の声に無言で答える三体の魔将。

「鞘に納まりし『僧正の石』にもはや手出しは出来ぬ。――が、無影は最期の力を以て「僧正の石」に闇を宿した」
「水鏡が石を浄化するまでしばし。今宵の『赤月(せきげつ)』を待たずして結界の成就はあり得ぬであろう」
最も月が満ちる満月の中でも、10年に一度訪れるという「赤月」。
何某かの影が月に赤い影を落とすその月は、ベスマを中心とした五つの結界同士を繋げ、行き来を可能とすると言う。

「覇狼は引き続き勇者を追え。我は勇者を含む五要を糧とし得るが、それと察する事は出来ぬ」
「ベスマへと赴くも良かろうな。賢者が守りし娘の噂、まことならば――」
そこで言葉を切り、フェリリルが答えを待つ魔王。
覇狼将軍の口上に満足気に頷いた王は、他の魔将二人に眼を向けた。

「ゆけ。エレド・ブラウが神殿にて、エルフが長ミアプラキドスを捕えよ」
「殺すも構わぬが出来れば生かし、贄として持ち帰れ。無影が連れし降魔兵団の回収も忘れるな」
「いまひと方はドワーフが神殿へ向かえ。そこへ向かう二つの点は封印の石を携えしベルゼビュートが子ら」
「敵に回るならば殺せ。奴の血は糧とならん。石はおそらく『戦士の石』。壊せぬゆえ……奪い、もしくは隠せ」

「どちらがその役目を負うも構わぬが――くれぐれも……石に魅入られるな。2,000年前と同じ轍を踏むにあらず」

魔王が玉座へと戻った。もはや言うべきことは無い、と言っているのだ。

261 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/06(火) 07:05:09.20 ID:5LVPC7Vd

ルークが手にした剣の先が空しく空を薙いだ。
主である叔父の身に何かあったのだろう。魔力の供給が途切れ、異界へと戻らざるを得ず、と言ったところか。
見るとゴーレム達も動きを止めている。
ポカンと抜いた剣を見つめるルーク。その剣が活躍するはまだ先となろう。

「ヴェル。逃げるなら今だ。何処へむかう? ドワーフか? ナバウルか?」
しばし思案する。
ドワーフの神殿に納めるべし『戦士の石』はラファエルが持っていると言う。
彼が敵か味方か解らぬところが……行く先を迷わせる理由。ここは手堅くナバウルかとも思うが、石の在り処が定かでない。
ここは……ルークの勘に任せるか。

「ルーク。戦士と魔法使い、どちらの場が先だと思う」

「じゃあ戦士! 父さんが迷うくらいなら、どっちでも同じじゃん?」
屈託なく笑う息子。エルフの神殿に戻る、とは言わぬのだな。父上の言った言葉を信じているのか。
しばし……神殿に残る父と、叔父を思う。
「愛と憎しみは同じもの」
「なに? 父さん?」
「いや、何でもない」

皇子が鳴らす指笛が遠くの空へと届き、大鷲の如き鳴き声が答える。
こちらへと降下したグリフォンが軽々と蔦の網を裂き、我々のすぐ前にその身を降ろした。

262 皇竜将軍リヒト </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/08(木) 00:12:31.58 ID:jyhLT+T/

ルークたちがグリフォンに乗り、エレド・ブラウを離れてから数時間後。
一旦戦いを終えたエレド・ブラウに、再び暗黒の魔気が漂い始める。
先の戦闘で生き残ったエルフたちが警戒して得物を構える中、森の入口に現れたのは――
漆黒の鎧兜と血色のマントに身を包んだ騎士。
その素顔は仮面に覆われ、目許以外を窺うことはできない。
黒騎士は視認できるほどにうねり、のたうつ暗黒の波動を纏いながら、無造作に森の中へと足を踏み入れる。
エルフたちがすぐさま弓を射かける。が、黒騎士には当たらない。放たれた矢はすべて黒騎士の暗黒の波動によって腐食し、消滅した。

皇竜将軍リヒト。竜帝兵団の軍団長にして八大魔将の一翼、そして赤眼の魔王リュシフェールの側近。

本来、リヒトは魔王の傍らに侍り、その身を魔王の拠点から移動させることは殆どない。
が、今回ばかりは別である。無影将軍ベテルギウスが死した今、エレド・ブラウの攻略には万全を期さねばならない。
兵団の五竜は王都にあって現在も玉座の防衛に就いており、現在リヒトは単騎で行動している。
だが、それになんの問題もない。
リヒトは決死の覚悟で行く手を遮るエルフたちを鎧袖一触、マントの一振りから生まれた颶風で蹴散らすと、無人の野を征くがごとく森の中を進む。
視界のそこかしこには、ただの彫像と化したストーンゴーレムやアンバーゴーレム、ガーゴイルなどが無数に転がっている。
それを一瞥すると、リヒトはばさり、と大きくマントを翻し、自らの身体の周りに蟠る魔気を一気に解き放った。

ブアッ!!

黒い烈風が吹き荒れ、エレド・ブラウ全域を覆ってゆく。
その途端、無影将軍の死によって魔力切れを起こしていた降魔兵団の目に光が宿る。関節を軋ませ、彫像たちがふたたび動き始める。
降魔兵団は魔王の魔力を供給源としており、それが断たれてしまえばとたんに活動できなくなる。
しかし、リヒトはそんな降魔兵団を自らの放つ闇の波動のみで再起動させた。
ここにもし、僅かなりとも魔王の力を感じたことのあるエルフがいたとしたら、きっとこう言ったであろう。
黒騎士の放つ波動は、魔王のものとまったく同じであった、と――。

再起動した降魔兵団が、リヒトの指示を待つ。
しかしリヒトは破壊活動を再開させるでもなく、ゴーレムたちを置き去りにして森の奥へと歩いていった。
しばしの間を置いて神殿に到達すると、水鏡の前に倒れ伏すひとりのエルフを確認する。

「……」

闇の波動を弱めて歩み寄り、抱き起こす。――この顔、エルフの長老ミアプラキドスに間違いない。
幾度か揺すぶってみるも、反応はない。が、生きてはいる。
ここで長老の首を刎ねれば、勇者にとって必要不可欠な協力者をひとり始末したことになる。
魔王とて、その選択を咎めはすまい。そも、事前に殺してもよいとの言質は取ってある。
だが。

リヒトはそれをしなかった。ただ、長老の身体を横抱きに抱き上げる。

「……貴方には、まだ働いてもらわなければならない」

小さくそう告げると、リヒトは長老もろとも神殿から消えた。同時に、森の中の降魔兵団も一体残らず消滅する。アルカナンへ帰還したのだ。
後に残されたのは、魔石を納めた水鏡。
そして、かつて無影将軍ベテルギウスのものであった、黒い魔導衣だけ――。

263 ラファエル </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/09(金) 01:48:57.66 ID:BJwyETyV

正面から照りつける灼熱の陽。口の端より泡を飛ばし、疾走する馬の息が荒い。如何に陛下の魔力を受けようと、そろそろ限界か。
「どうどう!」
優しく手綱を引くと、馬が速度を緩め静止した。並走していた王が見咎め、20ヤードほど先にて馬を止める。
「陛下! 馬を替えましょう!」
替え馬がある訳ではない。王の馬と自分の馬を交換するのだ。魔剣の重さは相当な上、この体重は王の倍以上。当然負担は大きい。
フワリと身軽な動作で地に降りた王が、美しい栗毛の馬を引いてきた。王の馬にさほど疲れは見られない。
そして王は……相も変わらず素足であらせられる。

「少し、休まぬか?」
汗で濡れた黒髪が頬に張りつき、いつもの微笑みを一層妖艶に見せる王。
そうとは見せぬが、おそらくは相当にお疲れだろう。王都を出てから半日近く走り通しゆえ。
陽はまだ高い。しばし休憩と行きたいが、そうもいくまい。
左手の広大な湿地には葦が茂り、絶えずピチャリと撥ねる水音がする。大型の爬虫類が尾で水面を叩く音だろう。
右手は鬱蒼とした古い森。こちらも得体の知れぬ生き物の気配がする。木の巨人族が棲むとも聞く。留まるに物騒な場には違いない。

ブルルル……
馬が水をねだる。赤茶色の湿地の水はお世辞にも綺麗とは云えぬ。
「陛下、いっそ古森を通りましょう。街道もこの先安全とは云えませぬ」
「わらわも同じことを思った。ここを抜けるが近かろう」
仰せのとおりだ。街道は相当な遠回り。森さえ抜ければドワーフが築く地下都市まであと幾ばくも無いのだ。
起伏が激しく、とても馬では進めぬが。

突然、馬が嘶き棒立ちになった。見ると――後ろ脚に矢が突き立っている。黒羽の矢。魔王の手のものだ。
「陛下! お早く!!」
剣を抜き、森の柔らかな地面に足を踏み入れる。王も頷き、後に続く。
茨の茂みをくぐり、枝を払いつつ奥へと分け入る。振り向いた王の肩越しに見えたは……数百を超すかと思われるオークの群れ。
その先頭に立つ灰色の巨体がオーク語で何事か吠えている。

「陛下!! 失礼つかまつる!!」
王の手を引き、横抱きにした。驚いた風もなく、されるがままに首に腕を回す王。
薔薇の香りが鼻をくすぐる。しかも……

――陛下! お顔が……近う御座います!! まさしく薔薇の顔(かんばせ)!!

こんな時に何とも不謹慎だと自分でも思うが、もう死んでも悔いはないと思ったも事実。それは冗談としても。
眼の前に突如現れた瀑布。後ろはオーク。王を抱えたまま、ヒラリと身を躍らせた。

264 ミアプラキドス </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/09(金) 01:49:45.47 ID:BJwyETyV

硬質の物体が軋み、擦れ合うかの音。――この音は何だ。金属では無く石でも無い。琥珀か、大海亀の甲か。
不思議と左肩の痛みは無い。
背と膝裏をがっしりとした硬い何かに掴まれている。どうやら鎧を着込んだ何者かの腕に抱(いだ)かれているようだ。
規則正しく上下するその度に、掴まれた箇所がギリリと痛む。鎧の繋ぎに尖りでもあるのか。
自らの発する呻き声が、騎士の身体から発せられる瘴気の渦に吸い込まれていく。
一体誰だ。この瘴気には覚えがある。酷く懐かしく、しかし恐ろしい記憶を呼び起こす瘴気。
ここは何処だ。立ち込める濃い瘴気と、血の匂い。少なくともエルフの神殿では無い。

突如鎧の主が足を止めた。
「――陛下」

深く張りのある男の声が感覚を呼び醒ました。視界に入ったは黒い兜に鎧の騎士。緋のマント。蒼の双眸。
時折鈍く深紫に光る……なるほど、古竜(エンシェント・ドラゴン)の鎧、ティアマット。他に纏う者など無い。
姫君でもあるまいに、大人しく抱かれる道理は無し、と身じろぎするがびくともせず。
八大魔将の一人、リヒト・ヴァル・ロー。単なる腕力の差ではあるまい。
リヒトが見上げる先にはアルカナン国王の玉座に座す――黒い影。すくと立ち上がり、緋の段を降りるその姿は……

『父上……!』
とうの昔に死んだ筈の父が、冷酷な笑みを浮かべ見下ろしていた。その背には三対の黒き翼。
――おのれ魔王。我が実弟を惑わしたのみならず、父までも愚弄するか……! 
その姿でこの身に止めを刺すか。この情までも糧とするか……!

「よくぞ帰還した。単騎の身にて、速やかかつ的確なる遂行。流石は『皇竜』よ」
魔将リヒトが深く頭を下げ、腰を降ろした。
そっと緋の絨毯に降ろされるが身の自由は利かず、精々が体勢をうつ伏せにかえ、魔王をぐっと睨み上げるのみ。
その魔王のさらに上、目に飛び込んだ光景に、思わず驚愕の声が漏れる。
赤い九曜の紋が象られた天井に、ぶらりと下がる二つの遺体。すなわち――ビショップとルカイン。
我が視線に気づいた魔王が、天井を見上げる。

「流石は五要……であろう? 死してなお……巷の血数千に勝る血よ」
天井の二人を見上げ、生前の父そのままの姿にて口元を緩ませる魔王。
逆さにつられ、米神に穿たれた穴から伝い出でる血液が、時を刻む雫となって魔王を染めていく。
瞬時に赤い蒸気となる血。歓喜に震える三対の翼。増す瘴気。――忘れはしない。我が父を死に至らしめた瘴気そのもの。
そして今更ながら気付く。この瘴気が先程リヒトより感じたそれと全く同質であることに。
――いったい何故? まさか魔王の血を分けた――

「可愛い部下を葬ってくれた、その礼はしてくれるな?」
両腕を広げたそのままの姿勢にてこちらを見下ろす父。両の眼だけが血より赤い。
「エルフの長ミアプラキドス。永き時を経てなお朽ち果てぬエルフの血。魔石が認めしその五要の血。如何にして我に捧げん」
ビショップであれば、破邪の呪文にてそれなりの攻撃が出来たであろう。
ルカインであれば、勇者の剣にて多少の打撃を与えられたであろう。
しかしこの身は――直接なる攻撃手段を持たぬ。せめて――

「哀れなり、堕天使リュシフェール」
その場に居合わせたもの、すべての者が動揺の色を露わにする。王の名を口にすることは魔族にとっては禁忌。
「生けとし生きる者の気を喰らわねば存在すら出来ぬ。実に脆く、危く、儚ない。蝋燭の炎にも等しきなり」
魔王はじっとこの言葉に耳を傾け、そして高らかに笑った。
「言葉攻めか。それこそ儚き脆いエルフならではの抵抗よ。のう? リヒト」
黙って頭を下げたままの黒騎士。魔王が踵を返す。バサリと翼が翻る音。
「こ奴の処遇、其処許に任せる」
黒騎士が僅かに顔を上げた。
「この場にて首を刎ねるも良し。生きたまま吊るすも良し。公開処刑と称し、闘技場にて逆さ十字にかけるも良し」



闇の鴉が一声。
ゆるりと玉座につく魔王。

265 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/09(金) 17:20:47.70 ID:BJwyETyV

訂正です。
264のレス内の「瘴気」を「闇の波動」或いは「魔気」に適当に置き換えてください。

瘴気=死者の纏う負のエネルギー
闇の魔力(魔気)=闇属性のエネルギー(238参照)

266 百鬼将軍ボリガン </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/10(土) 08:54:08.52 ID:JNpI3IC0

オークとは、貪婪、強欲、残忍を絵に描いたような種族である。
エルフやドワーフのような他の亜人種のように、作物を栽培したり鍛冶技術を発展させたりという生産的行為は一切しない。
欲しいものは奪う。略奪、強奪、収奪――それがオークにとって唯一と言ってもいい掟である。
その掟はしばしば同族であるオーク間でも適用され、同胞同士の血で血を洗う殺戮劇が起こる。
えてしてこのような種族は繁栄などしないものであるが、しかしオークは厳然とこの世界に存在しており、その数が減ることはない。
それは、いったいなぜか。

答えは、このオークという種族の頂点に、絶対的な王権を有する支配者が存在しているから――。
百鬼将軍ボリガン。齢3000歳を超える、オークの伝説的な大酋長(グランチーフ)である。
豚面の魔神オルクスを起源とするオークの中でも、始祖たる魔神の直系と言われる、オークの帝王。
この規格外のオークがすべてのオークを支配し、統率し、導いているがゆえ、オークは滅びを知らないのだ。

オーク族は、元々魔王の軍には属していなかった。同じ闇の属性を持つとはいえ、オークはあくまで独立した一種族であった。
が、ボリガンが魔王との戦いに敗れその配下となったがゆえ、支配下にある一族も併せて魔王軍に組み込まれたのである。
とはいえ、一敗地にまみれ魔将の地位に甘んじても、オークの王たるボリガンの威厳は些かも輝きを喪失してはいない。
――いや、それどころか増してさえいる。
眷属であるオーク(豚頭鬼)の他、魔王より与えられた『食人鬼(オーガ)』『小鬼(ゴブリン)』『獣鬼(トロール)』の戦力。
この世に蔓延る鬼たちを統べる、百鬼将軍として。

そんな百鬼将軍ボリガンが、自ら一軍を率いてエスメラインとラファエルを追跡している。
いかにも鈍重そうな外見だが、しかし意外とその行歩は速い。悪路を走破する方法を熟知しているがゆえだ。
すでに、獲物は視界に捉えている。逃がしはしない。

「そろそろドワーフの穴ぐらに到着するか……」

地響きを立て、地面に大きな足跡を刻みながら、ボリガンは片手で顎鬚をしごいた。
ドワーフ。2000年前には魔王の勅使として思う様に蹂躙し、凌辱し、殺戮してやった相手である。
魔王が封印されてからは自らも軍属の戒めを解かれたため、表だってことを構えることはしなかったが、2000年間小競り合いは続いている。
魔王が復活したならば、以前のように蹂躙する以外にはない。ボリガンの意識はもう、戦いが終わった後の饗宴に向いている。

――男は奴隷として魔王にくれてやればよい。だが、女はもらう。全員、我が眷属の孕み腹にしてくれよう。

そんなことを考える。オークを統べる大酋長として、優先すべきは一族の反映。それしかない。
オークに雌はいない。生まれる仔はすべて雄であり、オークは他種族の雌を孕ませることで殖える。
母体の種族を問わず、オークの種は絶対にオークになる。いかなる種族を母体にしても増殖する、それがオークの強みだ。

ゴブリンの斥候が、獲物が古森に入ったと報告してくる。
ボリガンも率先して森に入る。前方に、人間の小さな姿が見える。

《捕えよ!!》

唸り声のようにも聞こえるオーク語で命令する。オークたちが途端に嘶きながら、エスメラインとラファエルへ駆け出してゆく。
が。
追い詰められた獲物は何を思ったか、前方の滝へと身を躍らせた。
自殺にも等しい行為だが、といって安心してもいられない。せめて死体は確認すべきだろう。
それに、ここまで軍団を率いてわざわざやって来ておきながら、こんな結末ではお粗末に過ぎる。
軍を統率するに最も必要な要素とは、『旨味を与えること』――これにつきる。

「……フン」

ボリガンは滝壺を覗き込み、一度鼻を鳴らすと、すぐに踵を返した。

《穴ぐらへ向かうぞ。全軍に伝えよ、今のうち腹を減らしておけ……とな!》

267 百鬼将軍ボリガン </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/10(土) 08:56:16.99 ID:JNpI3IC0

名前:百鬼将軍ボリガン
年齢:不明(少なくとも3000歳以上)
性別:男
身長:320cm
体重:780kg
種族:オーク
職業:魔将軍(百鬼将軍)
性格:一見粗野だが、その実計算高く知恵が回る
長所:鷹揚、王の威厳を持つ
短所:オーク至上主義、息がくさい
特技:性豪、絶倫
武器:無数の髑髏が埋まった巨大な棍棒『黒髑髏(チェルノタ・チェーリプ)』
防具:なし 
所持品:八大魔将のひとりを示す九曜のメダイ
容姿の特徴・風貌:
銀灰色の巨躯、張り詰めた固太りの丸い腹、丸太のような双腕と安定感のある短い脚
首や両腕、十指にこれ見よがしに煌びやかな装飾品をつけ、虎皮でできた脛丈の腰布を巻く
右腕から右胸にかけてトライバル模様の刺青あり。頭にオークの王を示す小さな王冠
ブタそのものの顔つきだが、ブタにしては精悍。長い顎鬚。下顎から一対の長大な牙が生えているが、右の牙は半ばから折れている

簡単なキャラ解説:
魔王軍八大軍団のひとつ『妖鬼兵団』を統べる八大魔将のひとり『百鬼将軍』。
オーク族の伝説的な大酋長(グランチーフ)であり、元々はオークを束ねる王として西域に君臨していた。
2000年前、魔王との戦いに敗れその軍門に下る。
表向き臣従しているが、忠誠心といったものはさらさらなく、魔王のことは同盟相手程度にしか思っていない。

268 皇竜将軍リヒト </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/10(土) 09:00:53.87 ID:JNpI3IC0

>こ奴の処遇、其処許に任せる

魔王がそう告げ、玉座に腰を下ろす。
ルカインにそうしたように心臓を抉り出し、糧とするかとも思ったが。意外な判断にリヒトは一度目を瞬かせた。
しかし、それならそれで一向に構わない。リヒトは一度恭しく礼をすると、

「――弟の不始末の責任は、兄に取らせるが筋」

と、静かな声で言った。
立ち上がり、うつ伏せになっているミアプラキドスを見下ろすと、リヒトは血色のマントをばさり、と翻した。
途端にぶわり、と漆黒の波動が溢れ、のたうち、強い風となって謁見の間に吹き荒れる。
が、それもほんの短い間のこと。無軌道に荒れ狂っていた波動はやがてリヒトの眼前で凝縮され、虚空に穴を穿った。
リヒトはためらいもなく穴の中に右腕を入れる。そして、引き抜いた腕が掴んでいたものは――

ベテルギウスが纏っていた黒い魔導衣と、魔法の義手。

左腕をミアプラキドスへと翳す。ふわり、とエルフの長老の身体が宙に浮かぶ。
右手に持っている魔法の義手を、ミアプラキドスの左肩に押し当てる。ジュウウ、と肉の焼ける不快な臭い。
ミアプラキドスが呻く。が、斟酌しない。
魔法の作用か魔気の働きか、ベテルギウスが身に着けていたときには右腕であった義手が、瞬く間に左腕へと変化する。
さらに、リヒトは漆黒の魔導衣をミアプラキドスに着せる。フードが長老の頭を目深に覆い、顔を濃い闇で隠してしまう。

義手と魔導衣には、魔王の闇の波動がたっぷりと染み込んでいる。ベテルギウスを魔将たらしめていたのは、このふたつの働きが大きい。
一介のエルフにすら、高位魔族なみの力を与える魔導具――。
今後はこれらがミアプラキドスの肉体を通して降魔兵団へ魔力を供給することになる。
ミアプラキドスにとっては、着用しているだけでも想像を絶するほどの苦痛を伴うであろう。
だが、死ぬことはできない。魔導衣がミアプラキドスを拘束、支配しようとすると同時、生命維持の役割も果たすからである。

義手の部位が左右逆であることを除けば、無影将軍に瓜二つな姿へミアプラキドスを変貌させると、リヒトは再び魔王に一礼した。
そして、自らの居場所――魔王の玉座の傍らに控える。

――エルフの長老ミアプラキドス。貴方が真にこの世界のことを憂うならば、この呪詛に打ち克ってみせるがいい。
――呪詛に屈し、新たな無影将軍として魔に服するならばそれまで。勇者の血は絶え、世界は闇に覆われよう。
――だが。もしも光によって呪詛を退け、希望を未来に繋げることができるなら……。

禍々しい兜の奥から静かにミアプラキドスの姿を見つめ、リヒトは考える。
魔王への造反を意図しているわけではない。自分は皇竜将軍であり、魔王の側近。魔王への忠誠が揺らぐことはない。
だが、リヒトには八大魔将とは別の。もうひとつの役目がある。



『裁定者』としての役目が。

269 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/13(火) 06:26:47.31 ID:22CVRzhj

苦痛のあまり床を這い、時折獣のような唸り声を上げるエルフの長。彼の中で【光】と【闇】とが鬩(せめ)ぎ合っているのだ。

魔王は2,000年前、ベテルギウスに同じ処置を行っている。
すでに闇を宿していたベテルギウスはこれほどに苦しまず、あっさりと魔王の魔気を受け入れた。
しかしその兄は違う。実弟を手にかけた僅かな曇りはあるものの、その魂は清らかなる清流の如し。
闇に侵される苦痛は比較にならぬ程に絶大だった。
次第に美しい銀髪が白髪となり、魔道衣から除く手指の爪が鋭く伸びた。白い肌は灰の色に染まっていく。

「リヒト。恐ろしい男よ。この者にとっては……今この場にて処断されるが幾許か楽であろうものを」

半ば独り言のように呟き、王座に背を預ける魔王。
無論、心中は言葉通りでは無い。むしろ赤い眼は爛々と輝き、背の翼は至上の喜びに打ち震え、口元は愉悦に歪む。
完全な精神体である魔王が糧とするのは、何も血や心臓に限ったことではない。
生けとし生きる者が発する負の感情――負のエネルギー。
悲嘆にくれる者や肉体的苦痛を受ける者、そして死への恐怖に慄く者の苦鳴、絶叫もまた、美味なる糧のひとつ。
特にその贄が聡明で気高く、かつ美しい者であれば尚更だ。
ミアプラキドスは1,000年の月日を経た大老クラスのエルフ。一部の者にハイ=エルフと云わしめ、かつその血筋は高貴。
今まさに闇に落ちんとするその様相は、古に魔と契約しダーク=エルフとなった者達と良く似ていた。

リヒトはただ合理的かつ理知的なる判断を以て、ミアプラキドスにベテルギウスの荷を負わせたのだろう。
或いは別の……とある意図を以て事を運んだだけかも知れない。
しかし、玉座前にて繰り広げられるそれは、王の征服欲・支配欲を満たすに十分な光景であった。
それが勇者の心臓に匹敵するエネルギーと成る得ると、誰が予想しただろう。

恐ろしい咆哮が謁見の間を揺るがした。
漆黒の濃い霧が空を満たす。
王と同じ魔気を持つリヒトには見えただろうか。王の背に――四対目の翼が生えていたのを。

270 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/13(火) 06:27:39.32 ID:22CVRzhj

「陛下!! そろそろ宜しいかと!!」

ラファエルが滝の轟音に負けぬ声で叫ぶ。
両の手で彼の腰にしがみついていた王が手を離し、突き出た岩の端にストンと降りた。
ラファエルもそれに習い、飛び降りる。引き抜いた魔剣の柄が、リンと鳴る。
飛び降りる振りをして岩壁に剣を付き立てやり過ごす。良くある手だが、急な角度が幸いしオークの眼に止まらずに済んだようだ。
眼前に広がる光景を改めて眺める。
滝の幅は650ヤード(約600m)はあるだろう。その高さも、遥か下方を流れる川の幅も相当だ。
おそらくは大陸で最も大規模の瀑布。いかに強靭な足腰を持つオーク達も、道を回るに時間を要するに違いない。
崖からは枯れかけた木の幹や根がいくつも顔を覗かせていた。王がその幹へと狙いをすまし、身を躍らせる。
純白の衣を翻し、ヒラリヒラリと飛び移る様はまるで……天女。
などと放心する彼の頭上から、パラパラと振りかかる石砂。見上げた先にはこちらを見下ろす数匹のオーク。
見張りとして残したのだろうが、その突き出た腹が邪魔なのか足腰に自信がないのか、下に降りてはこない。
しかし目撃されたのは事実。急がねばならない。

「陛下ーー!! こちらです!!!」
腹の底から発した声に、女王が呆れ顔で振り向く。
「そこまで大声でなくとも聞こえる」
世にも珍しい王のぼやき。
一見ただの切り立った岩壁に、アルカナ=ブレードの柄頭をかざす。この石が元へ帰る意思があるのなら、鍵は開くはず。
ややあって人一人通れる幅の穴が開いた。

何処までも続く闇の洞窟。否、人工の通廊は、滝の下を潜り、ドワーフの地下神殿へと続く最短の道だった。
速足で駈けていく二人。
おそらくはルーク達と同じか、遅れても少々と云った所だろう。

271 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/13(火) 06:29:05.59 ID:22CVRzhj

――グリフォンってこんなに高く飛ぶんだ!! 凄いなあ!!
でっかい大河に青い山脈、どっかの古い街並。とにかく絶景!!

俺達三人がしがみついてるグリフォンが、それに答えて雄叫びを上げる。――いやいや、その声だけは勘弁して!!
と思ってったとたんに急降下。……また降りる?  山のてっぺんで休むの、これで10回目だよ。
文句を言うのもグリフォンに悪いんで、俺はその度にライアンや父さんを質問攻めにしていた。
こんな時じゃないと聞けない事、いっぱいあったからさ。

「父さん。あのでっかいゴーレムに弱点はあるの?」
少し考えて父さんが口を開く。
「ルーク。ストーンゴーレムにあって、我々に無いものは何だ?」
「……桁違いの腕力、かな」
「では彼に無く、我々にあるものは?」
「呪文……とか?」
父さんがニヤリと笑う。
「それはそうだが、奴等は魔力耐性があるからな。一番の違いはスピードだ。奴等は我等より『遅い』」
「逃げたり避けたり出来るってこと? でもそれじゃ結局勝てないよね」
「最強の盾と矛の話を知ってるか?」
――そりゃあちっちゃい頃父さんが聞かせてくれた子守話だからね。え? それがヒント?

グリフォンが翼を広げたんで、慌てて首にしがみつく。再び空高く舞い上がった俺達。チラリと見えた大滝の音が耳に届く。
「すごい!! あの滝のそば、通ってみたい!!」
「アホか。物見遊山じゃないんだぞ」
答えたライアンの顔が強張った。――なに? 何か居るの?
彼の視線を追って、目を凝らした。大滝の向こう側にプディングみたいに形のいい岩山がひとつ。
その山に城壁が張り付いている。良く天然の谷合とか山を掘って要塞にするって聞くけど、あれもそうなのかな。

「ライアン! もしかしてあれ、ドワーフの!?」
「そうだ! 地下都市の入り口だ! あれを見ろ!」
指差されたその先。城壁に向かってぞろぞろ動く何かの……大群?
「あの旗印、魔王の軍だ。……約50(万)。やけに多いが……古竜でも相手にするつもりか?」
「あの刺青は百鬼将軍ボリガンに違いない。オークにゴブリン、オーガにトロール。化け物のオンパレードだ」
……ライアンも父さんも、どんだけ目がいいんだよ。俺には黒っぽい点にしか見えないよ。

その黒点が大小様々の人の形を取り始めたその時、城門の扉がゆっくりと開いた。
野太い雄叫びを上げてどっと溢れだしたのは、鎧に身を固めたドワーフ達。こっちもなかなかの数。
子馬に跨り、でかい斧を振り上げたドワーフが一人、何か叫んでる。
ドワーフ語は良く解らないけど、あの感じだと、ここは通さん! とか、返り打ちにしてやる! とか言ってるんだろう。
着込んでるのはラファエルみたいな派手な銀ピカの鎧。王様なのかな? 
両軍を分けるように一文字に駆け抜ける王様。それに答え、盾を壁にしたドワーフ達が横一列の陣形を取りはじめる。

「降りるぞ」
父さんがいきなり俺の背中を押した。え? と思った時には、俺は開いた城門目がけて逆さまに落ちていた。
――うーん久しぶり! 父さんってば、主塔のてっぺんから良くこうやって俺を突き落としてくれたよね? 
あの遊び、こういう時の為だったんだ! 

地面すれすれで唱えた【浮遊】の呪文。フワリと浮く感覚。浴びる怒号。――え?
俺に気づいたドワーフ達が、斧を構えて襲いかかって来た。そりゃまあ……怪しいの極致かもだけど、いきなりは無いんじゃない?
「待って! 俺の話をうわああああ!!」
俺は振り下ろされた斧をすんでの所でかわし、開いた城門から中に飛び込んだ。

「ちょ・何だよ! ドワーフって気ぃ短過ぎ!!」
さらに外へと流れる大量のドワーフ達を飛び越え、誰かの兜の上に着地、そのままジャンプを繰り返す。
頭を踏まれたドワーフが怒って腕を振り上げている。――ごめん! 丈夫そうだったんで……

そうこうしてる内にドワーフの波が引いた。俺のまん前に立ってたのは、神官服を着込んだ白髭のドワーフ。
「貴方が……ルーク殿じゃな?」
いつの間にか、俺の両脇に父さんとライアンが立っていた。
「話は聞いとりますじゃ。こちらへ」

272 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/13(火) 06:32:00.50 ID:22CVRzhj

エルフに負けぬ……いやそれ以上の見事な彫刻が施された石壁、柱。
エルフのそれは白と銀を基調とする。対し、ドワーフの神殿は集茶と金だ。素晴らしく重厚かつ絢爛。
松明の明かりで照らされた広い空間はまるで大伽藍の内部のようだ。そんな空間を幾つも抜け、通廊はやや狭く、下りとなる。

「そう言えば父さん、あの人達を放っといて良かったの?」
「ワシらを……案じられとるのかの? 勇者どの」
白髭の老神官が振り返る。
「加勢は無用じゃ。昔からの因縁、我々ドワーフの戦でもあるのじゃ。王も望むまいて」
「でもさ、魔王軍の数、ハンパ無かったじゃん! 王様死んじゃうよ!?」
「ご案じ召さるな。我等が王も歴戦の勇者。そう簡単にはやられぬじゃろう」

いったい何処まで続くのかと思われた通廊が途切れた。
ひと際広い……神聖なる大聖堂。
祭壇に置かれた石の棺。『戦士の石』を納める棺に違いない。

カツン……

祭壇の後ろの扉が不意に開き、現れた人影はやはり……
「ラファエル! ……と綺麗な女王様!」
――ルーク。思った事をすぐに口にするその癖、直さねばな?

「シャドウ。何故貴様らがここに?」
小馬鹿にした体で我等を見下ろす、もと上官。その横に立つ美貌の王。今更敵に回るとは思えぬが……
「『戦士の石』をお渡し願いたい。魔王を封ずる結界のひとつ、願いは同じ筈だが?」
「さて……どうしたものか……」
ラファエルと一戦交えるのは御免だ。あの鎧はミスリル。対抗出来得るは圧倒的な破壊力を持つストーンゴーレムか或いは……

しばし睨みあう。
突如響く轟音。やはり来たか。予想より遥かに早い。
「……でか……!」
ルークの呟きが聖堂内を木霊した。身の丈は我等の倍を超すだろう、灰色の巨体がこちらを見て笑った。

273 百鬼将軍ボリガン </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/15(木) 22:23:11.15 ID:4mezei/r

ルークたち一行とアルカナンの女王エスメライン、そしてラファエル。
ドワーフの神殿の中で邂逅した者たちの視線、その先に。
両開きの重厚な扉を黒光りする棍棒の一撃で蝶番ごと吹き飛ばし、巨大な銀灰色のオークが現れる。

「2000年前の戦いでは、徹底的に破壊してやったものだが……。よくもここまで復興させたものよ」
「善い。なれば、今一度灰燼に帰せしめようぞ。我が妖鬼兵団の力でな……ブッフフフフフッ」

片牙の生えた分厚い唇を笑みに歪め、巨大なオーク――百鬼将軍ボリガンが嗤う。
その背後から、バラバラと配下のオークやトロールたちが現れては、神殿を我が物顔で占拠し一行を取り囲む。
ボリガンは感慨深げに猪首を巡らせ、ドワーフの神殿を眺め回していたが、ゆるりとルークたちに視線を向けると、

「ベルゼビュートの落とし種を狩りに来て、勇者と鉢合わせるとは。これは僥倖……太祖オルクスの加護は今も余にあると見ゆる」

そう、愉快げに言った。

「やりたいことは色々あるが、先ずは魔王との約定を果たさねばなるまい。――ベルゼビュートの落とし種よ、『戦士の石』を渡してもらおう」
「肯(うべな)うならばよし、格別の慈悲をもってその方らの命は助けよう。しかし……」
「非と返すならば、殺す。我が眷属に命じ、ありとあらゆる阿鼻と叫喚を交え、その方らにこの世に地獄を味わわせてくれようぞ」

ルークの腕より太い指をエスメラインへと向け、王者の風格さえ漂わせて、ボリガンが告げる。
兵団のオークやオーガ、ゴブリンたちが下卑た笑みを漏らす。
それは一見提案のように聞こえはするものの、恫喝以外の何物でもない。
エスメラインが石の譲渡を拒絶するのなら、ボリガンは躊躇いなく言った通りの行動に移るだろう。
降魔兵団のストーンゴーレムなどと比べ、妖鬼兵団の個々の戦力は決して高くはない。
が、だからといって妖鬼兵団が降魔兵団に劣っているということは決してない。
第一に、その活動するために必要なエネルギーのすべてを魔王からの魔力供給に頼っている降魔兵団と違い、妖鬼兵団は独立独歩の兵団である。
第二に、ただ個々で暴れるだけの降魔兵団と違って、妖鬼兵団は隊伍を組み組織的な軍事行動を取ることができる。
第三に、これが妖鬼兵団の最大の強みなのだが――妖鬼兵団は『多い』。
その数は魔王軍にあっても最多。ボリガンがドワーフ攻略に用いたこの50万さえ、妖鬼兵団の一部に過ぎない。
例え仲間が殺されても、屍を乗り越えて続々と押し寄せる。人海戦術ですべてを押し潰す。
その戦い方で、2000年前もボリガンらはこの世界で猛威を振るったのである。

「で……。その方らが無影将軍を葬った勇者の一行か。このような輩に遅れを取るとは、知恵袋などと言っても所詮エルフよな」
「まあ善い。その方らも後で相手をしてやろうゆえ、隅で控えておれ。石を得たのち、腕前を検分して遣ろう」
「この、オークの帝王ボリガンがな――!!」

けばけばしい、とも言える五指の指輪をこれ見よがしに突き出し、オークの支配者が荘重な様子で言葉を紡ぐ。
外では血で血を洗う戦いが繰り広げられている。神殿は魔王軍が包囲している。
選択肢は、ふたつにひとつ。



石を渡して傅くか――死ぬか。

274 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/17(土) 17:05:45.28 ID:m3zUtfFq

「あれは……」

壊した扉から中に入って来た……灰色に光る……
「トロール?」
「顔つきを良く見ろ。オークだ」
――うそ! あれがオーク!? 腕なんか俺の胴回りより太いんですけど!
「もしかしてあいつが百鬼将軍!?」
「そうだ。あのボリガンこそ、かつて大陸の西域を支配していたオークの親玉だ」
ボリガンがギラッと眼を光らせてこっちを見た。
ごわごわっとしたオスの山羊みたいな顎髭に、ちっさいトゲトゲの王冠。いかにも大自然の酋長って感じ。
どうして長ネギ咥えてるんだろうって思って良く見たら、はみ出した白い牙だった。右の牙は誰かに折られたのかな?
胸から肩にかけて走る、ぐるぐる巻きの変な模様の刺青はちょっとカッコよかったり。

「ルーク。見とれてる場合か……?」
いつの間にか俺達をズラリと囲んでいた下っぱのオーク達をぐるりと見回し、ライアンがグラディウスを抜く。
一匹一匹はたいした事なさそうだけど、その数が凄い。倒してもキリ無さそう。

>2000年前の戦いでは、徹底的に破壊してやったものだが――

ボリガンが悠々と話し出したんで、俺はちょっぴり拍子抜けした。
だってオークって、知能低そうじゃん? (オークの読者が居たらごめん! あくまで俺個人の見解だから!)
話合いとかするイメージ無い。だいたい公用語、しかもあんな古めかしい言葉話す威厳たっぷりのオーク。……なんか凄い。
そのボリガンが、棺の前に立つ女王をピタリと指差した。

>ベルゼビュートの落とし種よ、『戦士の石』を渡してもらおう
>肯(うべな)うならばよし、格別の慈悲をもってその方らの命は助けよう――非と返すならば――殺す。

高らかに笑う声が女王の答えを遮った。ラファエルだ。
ガチャリ……と鎧の音を立てながら、落ち着いた足取りで女王の前に進み出る。

「笑わせるな。薄汚い豚の分際で我等と交渉など――億万光年早いわ!」

ズラリっと腰の大剣――アルカナ=ブレードを抜いて、切っ先をボリガンの眉間に合わせるラファエル。

――うわお! とっても解りやすい宣戦布告!

プッと噴き出した父さんとライアン。女王とドワーフの神官までもがゲラゲラ笑いだした。
バツが悪そうに俺達を見つめるラファエル。
ごめんごめん、若輩の俺だって笑っちゃったよ。あんまり真っ直ぐでさ。
偽物渡して誤魔化すとか、相手の弱みに付け込むとか、そういうのしないんだ。いいじゃん! 真っ向対決! 
そう思ったら、急に腹の底が熱くなってきた。
ボリガンに「隅にひかえてろ」なんて言われても構うもんか。徹底的に援護するよ! ラファエル!

父さんがジリリと後退し、棺の横に屈みこんだ。ブツブツ呟く声。……このスペル……【解錠(アンロック)】?
何度か違うスペルを試してるとこ見ると、この棺には複雑な魔法の【錠】が掛ってるみたい。
つまり、鍵を解かない限り、父さんは戦闘に参加出来ない。魔法使えるの、俺だけって事だ。良し!

【熱き炎の精霊よ いまここに集い火を灯せ 矢となりて敵を撹乱せん】

俺お得意の炎の矢。あのオーク達が近づかないように火矢を周りに旋回させるつもり。20本くらいで足りるかな。
パチンと指を鳴らすと同時に光る矢が出現。それを見たラファエルとライアンがボリガン目がけて走りだした。

「覚悟しろ! 陛下には指一本触れさせぬ!!」

ラファエルが吠える。剣を上段に構え高く跳躍し、ボリガンの眉間目がけて振り下ろす。
ライアンは低い姿勢のままボリガンの横に回った。むき出しの膝下を狙い、剣を横に薙いだ。

275 百鬼将軍ボリガン </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/18(日) 18:43:13.66 ID:Vmkhxtc8

「ほう……。慈悲などいらぬと申すか。かつての同胞(はらから)の裔(すえ)と思い、情けをかけたつもりだが」
「善い。ならば、こちらも遠慮なく――我ら本来の流儀にて、罷り通るだけのことよ」

血気盛んなラファエルの挑発に、ボリガンがニタリ……と分厚い唇をの端を吊り上げて笑う。
剣を抜き放ち、一気に駆け出してくるラファエルとライアン。その鋭利な切っ先が、ボリガンを狙う。
――が、ボリガンは身構えることさえしない。長い顎鬚をしごき、悠然と嗤っている。
ラファエルのアルカナ=ブレードが、ボリガンの眉間めがけて振り下ろされる――

しかし。

「陛下には指一本触れさせねエ――サルどもが!その言葉、そっくりそのまま返してやるぜェ!」

アルカナ=ブレードの刀身が、ラファエルとボリガンの間に割って入ったオークの胸板を深く斬り裂く。
血飛沫を撒き、どう、と倒れるオークの尖兵。同様にライアンの膝下狙いの一撃も、他のオークによって阻まれてしまう。
幾度やっても、結果は同じ。ただ、増えるのはラファエルたちの前方に積み上がってゆく、オークの死骸のみ。
文字通り身を捨てて主君の盾となり、死んでゆくオークたちの姿を一瞥し、ボリガンが嗤う。

「善い。善いぞ、忠勇なる我がしもべたちよ。その方らの忠義満足である、後は安らかに太祖オルクスの懐に抱かれるが善い」

帝王の言葉に呼応するかのように、新たなオークたちがわらわらとラファエル、ライアンの行く手を遮る。
ボリガンは何も、恐怖や暴力によって無理矢理一族を支配しているわけではない。
オークは『迷信深い』。
一族の祖、神話の魔神オルクスの目がいつでも自分たちを見ていると疑わず、その加護を望み、祟りを畏れる。
そして、オルクス直系を公言し、3000年の時を生きる規格外のオーク――ボリガンの存在は、そんなオークたちの目にはまさにオルクスそのもののように映るのである。
よって、ボリガンの盾となって死ぬことさえ厭わない。
ボリガンの、そしてオルクスの為に死ぬことは誉れであり、オークにとっては喜びですらあるのだ。
なお、名誉の死を遂げたオークはオルクスの膝元である冥界で美女(ブタ)に囲まれ、酒池肉林の毎日を過ごせるという。

「ブフフフフ……どうした?我が家臣はまだまだおるぞ、いつになったら余に覚悟とやらをさせるつもりか?」
「その方らの刃は、余には届かぬ。しかし我が威光は遍く世を照らし、新たなる妖鬼の世界を形作る礎となる――」
「まずは。我が吐息にて、この穴居人どもの神殿から糜爛させてくれようぞ!」

多勢に無勢。人海戦術で自らの前に分厚い肉の壁を形成すると、ボリガンは徐に得物の棍棒を掲げた。

276 百鬼将軍ボリガン </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/18(日) 18:49:37.60 ID:Vmkhxtc8

「此れぞオークの至宝、『黒髑髏(チェルノタ・チェーリプ)』。今ぞ、その力の一端を開帳せん!」

ボリガンが右手に携えた巨大な棍棒を大きく掲げる。
棍棒は全長2.5メートルはあろうか。太さはルークが両腕で抱えても手が回りきらないほどに太い。
てらてらと黒光りするその胴部には、口を大きく開いた無数の髑髏が埋め込まれており、よりその禍々しさに拍車をかけている。
そんな巨大な棍棒を頭上で一度回転させると、何を思ったかボリガンは得物の柄尻を口に銜えた。
そして一気に、

「ブフゥ――――――――――――――――――ッ!!!」

と、まるで喇叭でも吹くかのように自らの息を吹き出した。
その途端、『黒髑髏』に埋め込まれた無数の髑髏の開いた口から、茶色の突風が凄まじいばかりの勢いで放出される。
それはボリガンが放った吐息だった。『黒髑髏』を通して拡散された吐息が、瞬く間に神殿を満たしてゆく。

ボリガンの息は『臭い』。
そのにおいは尋常ではなく、飛ぶ鳥を落とし、生きとし生けるものを悶絶させる。
『臭い』ということは、脅威である。
度を越した悪臭は催涙効果を及ぼし、嘔吐を誘発し、呼吸困難、混乱、盲目、麻痺、毒など複数のステータス異常を同時に発症させる。
そして、最終的には死に至る。それはドラゴンの炎の息、氷の息などブレス攻撃と比べてもまったく遜色がない、否――より厄介ですらある。
そして、同族であるオークはボリガンのブレスを嗅いでも活動に支障をきたさない。
つまり――
オークはこの神殿内においては、くさいいきに苦しむルークたちをペナルティなしで攻撃できる、ということである。
仮に風の魔法を用いて拭き散らそうと試みても、ここは屋内である。においは撹拌されるばかりで消えはすまい。
また、このブレスはボリガンの体内で生成された腐敗ガスが主成分の為『燃える』。
ブレスとルークの炎の矢が接触すれば、その瞬間に爆発するであろう。

「ふん……。2000年のうちに、我が恐怖の伝説を知る者も死に絶えたか。余のことを知悉さば、提案を断るなどという選択肢はそもそも出ぬであろうにな」
「まあ善い。余は約定は守る。ベルゼビュートの落とし種よ、それではありとあらゆる阿鼻と叫喚を交え、その方らにこの世の地獄を味わわせて呉れようぞ」
「此れよりが、地獄の旅の一里塚。もはや、その方らの進退窮まったわ!」

筆舌に尽くしがたい悪臭の芬々と漂う神殿内で、オークの帝王が嗤う。
ラファエルへ、ライアンへ、オークが――ゴブリンが、オーガが、トロールが――妖鬼兵団の軍勢が雪崩を打って襲いかかる。

重厚かつ剛健な、黄金の神殿の中。
醜悪な鬼たちのおらびが、幾重にもこだまして聞こえた。

277 創る名無しに見る名無し
2016/09/19(月) 21:47:40.48 ID:EdUL1/YM

ルカインとベリルの子はどうなったん?

278 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/21(水) 17:50:16.66 ID:UwS5r674

【遅れていて申し訳ありません。投下は明日になります】

279 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/22(木) 05:57:32.32 ID:eLjYJXqi

二つの剣が肉を裂き骨を絶つ。上がる血飛沫。――しかし……

「なんとっ!!?」「なにっ!?」

驚愕と失望の入り混じる声。ボリガンが防いだのでは無い。手下のオークが肉の壁となったのだ。
二人共に生粋の剣士。スピードも呼吸も一流だ。それを――止める? 自身の肉体を盾としただと?
彼等とボリガンの間隙に割って入る素早さもさることながら、真に驚くべきは「何故にそのような行動を起こしたのか」だ。
オークとはこれほど忠義に厚い生き物だったか? 

>――その方らの忠義満足である、後は安らかに太祖オルクスの懐に抱かれるが善い

――なるほどオルクス。直系を名乗るボリガンに真祖オルクスを見ているのか。
して彼が為に死してこそ抱かれるその懐は……相当に魅惑の地であるのだろう。でなけでば合点がいかぬ。
次々とその身を晒し、剣を受け息絶えるその姿に何故に悲愴の色が無いのか。むしろ嬉々としているのは何故なのか。
本当に楽園があると信じ、殉ずるオークとは……なんと一途な生き物だろう。
桃源郷というものが本当にあるならば、是非にも行ってみたいものだ。美しい池、花。其処此処に侍る美しい女人達(エルフ)。

「シャドウ。鍵は開かぬか」

女王の声で我に帰る。つい思考が脇道に逸れるは悪い癖だ。
呪文を唱えつつ、チラリと棺脇に座るドワーフの神官を見やる。黒く長い眉が目元を覆い、表情が見て取れぬ。
本来であれば棺の鍵を開ける役目は彼のはず。施錠の手段が魔法なら、それを解くスペルか魔道具を持って然るべきだが……何故?
ドワーフがこの視線に気づき暗い笑みを浮かべた。黒い髪がザワリと波打つ。
――? この神官、先程まで白髪ではなかったか? 

そう思った矢先、ボリガンが手にした棍棒を翳すのが見えた。
桁外れに巨大な武器、表面にあしらわれた骸骨がいくつも口を開ける――あれは噂に聞く『黒髑髏(チェルノタ・チェーリプ)!
そのあまりの様相に集中を削がれたか、ルークの放つ火矢がすべてあらぬ方角へと飛び、消える。
――しかしそれは幸いだったのだ。奴の吐息は――

「ルーク! 息を止めろ!!」
呪文を中断し叫ぶ。喧騒の中、この声が届くかルーク!!

280 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/22(木) 05:58:52.82 ID:eLjYJXqi

俺の放った炎矢はオークやトロール達を十分過ぎるほど牽制していた。
矢の操作って簡単そうに見えるけど、20本ともなると結構大変。敵の眼の前で行ったり来たり。旋回してみたり。
もちろん味方に当たらないように気を使う。――ほらほら、どう? 凄いでしょ! 触ったら火傷じゃ済まないよ?
魔術オタクの父さんをして「真似出来ない」と言わしめた俺の技! 俺の「唯一」の自慢!!

――ザシュっ!!(×2)

よっしゃ! 二人の剣が同時に肉を斬る音に、思わずガッツポーズをした俺。
でも良く見たら倒れてるのは別のオークだった。ボリガンにはかすり傷ひとつ付いて無い。
うそでしょ!? オークって……自己犠牲の精神とかあるの!?
自分とボスの価値の差だとか、この状況じゃあそれが一番いい方法だって事とか、考えてやったにしても凄いけど、
そもそも異様なのはその光景。飛びだしたオーク達が何故かとっても嬉しそうに斬られてる。なんで? オークって……マゾ?

>ブフフフフ……どうした?我が家臣はまだまだおるぞ、いつになったら余に覚悟とやらをさせるつもりか?

あいつの言うとおりだった。
斬っても斬っても出て来るったら。見る間に築かれるオークの山。息を切らし、悔しそうに山を見上げるラファエルとライアン。
矢のコントロールが乱れてきたんで、そっちの方に頭を戻す。
だけどボリガンが見せつけた武器は俺の眼を釘付けにした。

――なにあれっ! 
あれをもし棍棒と言い張るなら、俺達の使う棍棒はホットミルクのかき混ぜ棒だよ!!
しかも「しゃれこうべ」とかいっぱい付いててまじキモ……!!!!!
コントロールを失った炎の矢があらぬ方向へと飛び去り、床に、壁に当たっては消える。

「ルーク! 息を止めろ!!」
「え?」

暴走する矢をハラハラしながら見ていた俺。父さんの言葉がすぐに理解出来なかった。
ボリガンの棍棒から放たれた「それ」を思い切り吸いこんでしまったのは言うまでもない。

っ……!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ガーンと鼻と頭を殴られたようなショック。
救急箱の中に入ってるアンモニア水に鼻近づけた事ある人なら、俺の気持ちが少しは解るかも。
父さんは良くあれを気付け代わりに使ってたけど、これはそんなもんじゃない! 殺人ガスだ!
のたうち回らずには居られない! 涙も止まんないし、頭ん中ガンガンでもう何が何だか!! 

オーク達がわらわら集まってのしかかったんで、俺は潰れたカエルみたいに床にへばりついた。
ラファエルとライアンのくぐもった叫び声。たぶん俺と似たような状況なんだろう。
臭いし苦しいしもう最悪!
うう~~~……『勇者とその一行、オークに乗られ圧死』なんて歴史書に載ったら嫌だなあ……
毒素の中和のスペルもあったと思うけど、肝心の毒の種類は? 塩素系? 硫黄系? ……データ不足。

『ルーク! そのままで火を起こせ! 空中でだ!』
父さんの声が頭に直接届いた。
『何で!?』
『ガスの組成が複雑過ぎて中和は困難だ! 燃やすが手っ取り早い!』

そっか! なるほど!
迷わず炎の精霊に力を借りる呪文を口ずさむ。呪文って言ってもただの点火だ。軽い想起と【起炎】の一言でそれは発動した。

281 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/22(木) 06:03:50.83 ID:eLjYJXqi

小刻みに振動する床。
上に乗るオーク達に遮られ、爆音も熱もほとんど伝わってはこない。
しばしの――静寂。

動かなくなったオーク達の下から何とか這い出る。
微かな硫黄の匂いは残るものの、先程の強烈なガスはほぼ消え去っていた。天井の吸気口がもたらす空気が芳しい。
あの吐息、口元で火を近づければ炎のブレスとなると聞く。
ここは閉鎖した空間だ。空気と吐息(毒ガス)が良い比率で存在し、そこに点火すると……こうなる。
大半のオーク達は方々に飛ばされ、壁に、床に、天井に紫色の染みを作っている。
生きている者も居るが、爆風の衝撃で平衡感覚を失ったのだろう。フラリとよろめいては座り込んでいる。
扉付近に築かれたオークの死骸が、上手い具合に外からの侵入を防いでいる。好都合だ。
オークの山のひとつがぐらりと傾き、崩れる。難なく脱出したのは、輝く魔剣を手にしたラファエル。
その前に静かに佇む……魔将ボリガン。吹き飛ばされた王冠と焼かれた髭以外は、先程となんら変わっていない。

ルークと皇子の無事も確認したいが、石棺の解除が先だ。ラファエルがボリガンに挑む様を尻目に、再び呪文を口ずさむ。
女王とドワーフが棺の陰からそっと身を起こすのが視界に入る。

『カチリ』

時を知らせる柱時計に似た音と共に、石棺の蓋が青白く光る。女王とドワーフの神官が満足気に頷き、こちらを見た。
三人の力でどうにか石の板を横にずらす。てっきり空だと思っていた石棺だったが――
横たわるは40がらみの男。かたく閉じられた眼に被さる野太い眉に、野性的な黒い髭。無造作に伸びる黒髪。
胸の上で組まれた両の手も、堂々たる裸身も、人狼と見紛える剛毛に覆われている。
この男は一体誰か。はたとその正体に思い当たり、身体が強張る。
「まさか……」
「そうよ。このお方こそ、我等王族の始祖」
女王が愛おしげに中を覗きこみ、頭を下げた。

「堕天使にして八大魔将が一人、ベアル……ゼブル……!」

282 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/22(木) 06:15:32.08 ID:eLjYJXqi

その名を口にすべきでは無かったのだ。
ニヤリと笑ったドワーフの姿が不意に霞となり、棺の男の身体に吸い込まれた。
カッ! と見開く黒い双眸。不意に突き出た剛腕が、この喉笛をガシリと掴む。

「……名を呼んでくれてありがとよ、賢者の魔法使い」

声を聞いたラファエルが剣を振るう手を止め、ボリガンから距離を取った。
ガラリと石蓋をどかし、身体を起こした――八大魔将、ベアル・ゼブル。
ベルゼビュートとも呼ばれるこの魔将、種族は『天使』。それ故か覇狼や百鬼などの名を冠さぬ魔将だ。異名も多い。
恐るべきはその能力だ。
「魂の操舵」と「魔力無効化域の作成」。ルーンとアルカナンの王族に受け継がれた二つの力。
無論その規模は王族の比ではないのだろうが……今は使えぬのだろう。でなければ魔導師の首を押さえる真似はするまい。

「まだ殺さねぇから安心しな。『賢者の石』の作り方を教えてもらわねぇとなぁ」
よっこらせ、とベアル・ゼブルが石棺の縁に腰かける。その膝上に頭だけ乗せられ身体が弓なりになる。
「くっ!」
首にかけられた手を掴んでみたがビクともしない。もがく程に軋む頸椎。
首を掴む手や身体が見る間に大きくなって行くのが解る。剛毛もより多く多層化し、鎧の如く身体を覆った。
女王がその横に立ち、この額に掌を翳すが、黒い手が遮った。
「やめとけ。俺の血を引いちゃあいるが、お前さんは所詮人間だ。賢者の魔紋は毒だろうがよ」

「ヴェル!」「父さん!」
いつの間にか脱出した皇子とルークがこちらの異変に気付いたようだ。
無論近づきはしない。人質を取られているのだ。ボリガンも動かず、じっとこちらに眼を向けている。
ベアル・ゼブルはしばらく自分の頭に生えた巨大な角を叩いたり撫でたりしていたが――

「ようボリガン。なんで今頃……って顔してんなぁ」
バサリと何かを翻す音。見るとその背に巨大な翼が生えている。片翼のみの翼からハラリと落ちる黒い羽根。
「2,000年前とちっとも変わっちゃいねぇ……あ? ちっとは老けたか?」
答えぬボリガン。睨みつけるその眼には何故か殺気が宿っている。

「そう凄むなよ。あん時は悪かったよ。なあ? 手を組まねぇか? 早い話、リュシフェールの封印に協力しろってこった」
「ま、アシュタロテを滅ぼされた時点で……俺の肚(はら)ぁ決まってたんだがなぁ」

283 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/22(木) 06:20:48.28 ID:eLjYJXqi

>277
【どうしましょう。正直、まだ何も考えてません】
【容量オーバーして次スレ……なんて事になったら活躍の機会があるかもですが】

284 百鬼将軍ボリガン </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/24(土) 10:52:12.45 ID:yRKDKRfI

「……ぬうん……」

ボリガンは地の底から響くような低い声音で唸った。
よもや勇者達がブレスを爆発させ、それを妖鬼兵団のオークたちを盾にしてやりすごすとは。
物量作戦で兵を神殿内に入れすぎたのが災いした。これは失策というべきであろう。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。もっと憂慮すべき事態は、別にある。
ボリガンは歯を食いしばり、怒りのこもった眼差しで前方を見た。
石棺の中から姿を現した、ひとりの男――かつての同胞、元八大魔将の一翼ベアル・ゼブル。

>ようボリガン。なんで今頃……って顔してんなぁ

「ここへ来るまでの間、ずっと感じていたその方の気配……そこな落とし種のものかと思っていたが、その方自身のものであったとは」
「余の鼻も鈍ったものよ……まったく、面倒な者が出てきおったわ」
「まさか、穴居人どもがその方を匿っておったとはな。ベルゼビュート……!」

ギリリ、と奥歯が軋む。巨体から殺気が漲る。
爆発の衝撃からいまだ抜けきらないながらも、生き残ったオークたちが新たな盾にならんとボリガンの前方に展開する。

>そう凄むなよ。あん時は悪かったよ。なあ? 手を組まねぇか? 早い話、リュシフェールの封印に協力しろってこった

飄々とした様子のベアル・ゼブル。その人を食ったような物言いに、一度鼻を鳴らす。

「目覚めて早々、抜け抜けと言いおるわ。余に魔王を裏切れと申すか?あいも変わらず人を喰った男よ」
「確かに、余は魔王に対して恩義もなければ、忠誠もない。単に、魔王につくが得策と思うがゆえに与しておるだけのこと」
「相応の『旨味』があれば、魔王と袂を分かつのもやぶさかではない……が――」

にい、とボリガンが嗤う。
が、それも一瞬のこと。すぐにオークの帝王は憤怒を満面に湛えると、野太い指でベアル・ゼブルを指した。

「しかし。その上で、その方と手を組むという選択肢はない」
「2000年前、その方が余と我が眷属にしたこと。そのような軽い謝罪ひとつで許すつもりなどないし、また許されもせぬ」
「この片牙の恨みと、同胞数万の怨嗟の声は、2000年の時を経てなお余の腹中にてとぐろを巻いておるわ!!」

ゴアッ!

ボリガンの怒声と共に、全身から魔気が迸る。
ボリガンもまたオークの神祖の直系ということで、れっきとした魔の眷属である。
魔王やリヒトのものには遠く及ばないが、その放つ怒りを宿した魔気は常人を昏倒させるに充分な威力を持っている。

>ま、アシュタロテを滅ぼされた時点で……俺の肚(はら)ぁ決まってたんだがなぁ

「2000年の時が過ぎようとも、口を開けば出てくる名はあの売女か……。まったく、度し難き愚かしさよな」

ベアル・ゼブルの独語に近い呟きを聞き、ボリガンが侮蔑を多分に含んだ表情を浮かべる。

「思えばあの売女がすべてのきっかけであったな。あの女さえ余計なことを考えなければ、すべてがうまく行っていた」
「魔王の統治のもと、我らオークも存分にその恩恵に浴していたというに。あの女がそれをすべて台無しにしたのだ」
「その方も、魔王も、皆そうだ。誰も彼もがあの売女に狂っておった。そして、肝心の世界の歯車までもが狂ってしまった」
「余には皆目わからぬ。あの女のどこがよかったのだ?容姿か?声か?まさか内面などと言うのではあるまいな?」
「……まあ……確かに、見目はよかったがな」

285 百鬼将軍ボリガン </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/24(土) 10:53:55.04 ID:yRKDKRfI

「それにしても……余に離反をほのめかすということは、完全に魔王とは敵対する肚と。そう思ってよいのだな?」
「かつて全力を出してさえ無理だったものに、衰弱した今の有様で勝とうとは。冗談としても度が過ぎるわ、ベルゼビュート!」
「――嗤え!!」

ボリガンが左腕を挙げて号令すると、取り巻きのオークやゴブリンたちが一斉に嘲笑する。

「さて……魔王は敵対者を決して許さぬ。まして、腹心たる魔将の叛逆ともなればな……。わかっておろう?」
「とはいえ、だ。いかに衰弱しておるとは言え、この場でその方を仕留めようとするならば、我が軍もただでは済むまい」
「それは余の望むところではない。余の第一はあくまで、一族の繁栄なるがゆえ」
「まずは、魔王に報告するとしようぞ。面倒な者が目を醒ました……とな」
「今回のところは退く。しかし、また遠からぬ未来にまみえるとしようぞ。その時を楽しみにしているがいい」

ズン、と地響きを立て、ボリガンがゆっくりと踵を返す。
オークたちも、警戒しながら退却を始める。
死体を蹴散らし、ボリガンの巨体が神殿から出てゆく。が、ふと何を思ったのか、ボリガンは不意に振り返ると、

「そう――勇者たちよ、そしてベルゼビュートの裔(すえ)よ。老婆心ながら、一言忠告しておいてやろう」

と、嗤いながら告げた。

「そ奴はその方らの味方などにはならぬぞ。そ奴は自分自身のことしか考えぬ。『自分にとって具合がいいか悪いか』そ奴の価値観とはそれだけよ」
「よしや協力を得たとしても、それは『ていよく使われているだけ』に過ぎぬ。敵の敵は味方などと、安易には考えぬことだ」
「もし万が一、そ奴が魔王を封じたとしても。魔王の代わりにそ奴が世界を支配するだけのことなのだからな――!」

眷属のオークや他の鬼たちを引き連れ、帝王ボリガンがドワーフの神殿から撤退してゆく。
血と臓物と汚物の臭気と、夥しい数の死体。
それらを置き去りにしたままで、妖鬼兵団は姿を消した。

286 創る名無しに見る名無し
2016/09/26(月) 08:53:18.80 ID:ttn46jqZ

どこかで打ち合わせでもしてるのか?
悪い意味じゃなく、やたら相手の設定に踏み込んでるし、しかもそれがうまく噛み合ってる気がしてな

287 創る名無しに見る名無し
2016/09/26(月) 22:12:37.25 ID:3Axurg81

名前:ベルク・ビョルゴルフル
年齢: 42
性別: 男
身長: 198cm
体重: 130kg
スリーサイズ: 130 110 130
種族: 人間
職業: 王
性格: 雄壮であり気宇壮大
特技: 騎馬
長所: 誇り高く勇気があり恐れを知らない
短所: 挫折を知らない所
武器: 巨大な槍
防具: 鎧
所持品: 北方の王だけが付けることを許される王の指輪
容姿の特徴・風貌: 赤い髪、赤いヒゲを生やす、目はタカのように鋭い、筋骨隆々の大男
簡単なキャラ解説: 北方の領主連合の王として君臨する赤髪の偉丈夫
北方の王は世襲ではなくその力を領主達に認められることで合議で決まる
王としての素質を持ちその決断力は素早く揺るがない
そして決して力だけに頼ることをせずしっかり戦略を画き行動する
右腕であり優秀な参謀であるエミル・オグムンドゥルを信頼している
魔王の復活を知り対抗するためにアインランド連合軍【北星十字軍】を組織する
さらにかつて北の大地を荒らしまわった極北の大峡谷に封印されている氷の巨人を復活させて切り札として魔王を倒そうと計画している

288 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/27(火) 06:41:12.61 ID:jH2mjrls

口元に風を感じた。床を伝って入ってくる新鮮な空気。
ガンガンしてた頭の痛みが嘘のように引いて行く。鼻の奥のヒリヒリも。
上に乗るオークの体臭が鼻をついたけど、あのガスに比べりゃ屁みたいなもん。って……あれ? 
首を動かして横を見ると、さっきまで俺に乗っかって威嚇してたオークが白眼剥いて泡を吹いていた。鼓動も弱い。
――なんで気絶してんの? さっき地面が揺れたのと関係ある? そういや上の人数、ちょっと減った?

軽くなったオークの山から何とか抜けだした俺の眼に映ったのは、紫の血と肉片で汚れた壁と天井。
フラフラよろめくオークにオーガ、目と耳を押さえて呻くトロール。
そっか、ただ燃えたんじゃない。爆発したんだ。ある種のガスは、空気中に1割ある時が一番爆発しやすいって……

扉付近はオークの死体でいっぱいだったけど、ボリガンは普通に立ってた。全然ダメージなさそう。
その向こう側に、青く光る剣を握ったラファエル。
ライアンが死体の山から出て、ふらりと立ちあがるのが見える。良かった。二人とも無事で。
でも様子が変だ。ラファエル、どうして戦わないの? ボリガンもラファエルも、俺の後ろの何かを見てる。
ライアンもそれに気付いたみたい。嫌な予感。そっと……振り向く。

――――――――誰!!?

棺の蓋が外され、その縁に見知らぬ何かが座ってた。
初めでっかいクマかと思ったけど違う。ぐねぐねした角があるし、黒い羽根も生えてる。右の羽根は無い。
もしかして……魔王? 
いやいや、こんなトコに居るはずない。魔王は絶対に王の間を出ないって長老も言ってたもの。
じゃあ誰? 羽根……角……魔王と同じ堕天使って確か……ベ……ベ……誰だっけ?
そうそう! ボリガンがさっき「ベルゼビュートの落とし種」って女王に向かって言って……え?
って事は女王様はベルゼの子供? だからあいつの横にピッタリくっついてんの? まんま美女と野獣みたい!
そういや父さんは? って良く見ると、ベルゼの膝の上に――

「父さん!」「ヴェル!」
俺が叫んだのと同時にライアンも叫ぶ。
奴の体毛(だか鱗だか)に埋もれて、しかも色も似てて今まで気付かなかったんだ。
首を掴まれてぐったりしてる父さん。ピクリともしないけど――もしかして……死んじゃった!?
棺の鍵を開けたのはたぶん父さん。――そっか!
フタ開けてみてあんなのが入ってたらそりゃびっくりするよね! んでもって腰抜かしたとこをやられちゃったんだ!!

『腰を抜かすは余計だルーク!』

――あ。生きてた。

『奴の狙いは賢者の石だ!』
『賢者の石!?』

またまた出てきたよ賢者の石! もうどんだけ重要アイテムですか!?
どうしよう。父さんを助けたいのは山々だけど、どうすりゃいいの? 確か女王様、魔力無効化の結界張れるよね?

俺がどうすることも出来ずにまごついてると、ベルゼの奴、ボリガンに手と組もうなんて言い出した。
リュシフェール、つまり魔王を一緒に封印しようねとか。で魔王に盾突く理由がどうも、「アシュタロテ」をやられた腹いせみたい。
な~んだ。天使とか魔将って偉そうに言ってても、頭ん中は俺達と変わんないだね。

――で? 肝心のボリガンの答えは? ワクワクして待ってたら、「NO!」だって。
ちょっと意外だった。オークってなんか義理がたいイメージないし、自分さえよけりゃいい生き物なのかな~って思ってたから。
その疑問の答えはすぐに返って来た。魔力の突風がダイレクトに俺にぶつかってきたからだ。

――怒ってる怒ってる! あいつ、ボリガン達によっぽどの事したんだ! あの牙もあいつのせい! そりゃ断るって!

289 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/27(火) 06:41:47.28 ID:jH2mjrls

ボリガンが退いた。
「当てが外れたなぁ。あいつが居りゃあちっとはマシな戦力になったんだが」
ぽりぽりと頭をかくベルゼ。
俺はボリガンが残した言葉の意味を考えていた。
アシュタロテ。彼女を知る奴はほとんどがその虜になったって……どんなヒトだったんだろ。
清楚で笑顔が素敵で家事とか得意で、困った時に助けてくれたり耳かきしてくれる女神系?
綺麗だけど相手の弱点突いてきて、困ったフリして無心したりいざって時は身体使って男を誘惑する悪魔系?

『おそらくは前者だ。水鏡の横で父と話す彼女は、女神そのものにしか見えなかった』
……こんな時にこんな話に乗ってくる父さんって、ホント女好き。首絞められてるくせに、良くそんな余裕あるよね。
『性分だ。仕方ない』
……開き直ったし。でどうすんの? あいつ(ボリガン)、ベルゼは味方にならないって……
『ルーク!!』
いたた……いきなり大声で・
ビクリと身体が硬直した。首の後ろにヒヤリと冷たいものが触ったからだ。鋭く硬い……振り向かなくても解る――剣の先。
「……ライアン…………どうして?」
答える代わりのように、切っ先が強く押しつけられた。ゴクリと喉が鳴る。

「すまねぇなあ。ボリガンの言ったとおり、俺達ぁ『勇者』の味方じゃねぇんだ」
ベルゼビュートがこっちを見てニヤリと笑う。
「そ……それはまあ解るっちゃあ解るけど、なんでライアンまで?」
ライアンがどんな顔してるのか確かめたかったけど、首を動かせない。
「ライアン! 俺のこと何度も助けてくれたのは何だったの!? 戦士になるって言ってくれた時だって――」

「お人好しは転生しても変わんねぇなあ。アウストラ・ヴィレン。いや、今は『ルーク』か」
「――はっ? ――えっ!?」
ラファエルが大股で近づいてきて俺を見た。
「小僧。ルーンとアルカナンはもともと同じ血だ。我等が始祖、ベアル・ゼブル様の血を引く末裔よ」
「――そうなの!?」
「少しは考えろ。魂の操作や交換などと言う技が、魔族以外に使えるかどうかをな」
「そう言われれば、人間にしちゃあ変な力使うなあって……」
力だけじゃない。ライアンの行動はいつだっておかしかった。裏切られたの、何度めだろう。
でも今度こそは信じようって思ったんだ。それなのに……
「ライアン! 何か言ってよ! 魔族だろうが何だろうが関係ない! あんたは俺の選んだ戦士だろ!?」
ライアンは相変わらず黙ったままだ。
「何度聞いても無駄だ」
ラファエルが俺の眉間にピタリと剣先を合わせた。とたんに頭の中がま真っさらになる。
――口が……利けない。魔剣の力? それとも……同じ血をもつ……ラファエル自身の力?
「我等は2,000年も前から我等が君主の為に動いてきたのだ。『賢者の石』を得んが為、エルフの長ミアプラキドスとも結託した」
ミア・ええーー!!?
「嘘だ!! 長老が魔将なんかと手を組むはずない!」

「だから……お人好しだっつってんだよ」
ベルゼが右手で胸元をまさぐっている。ゴワゴワびっしり生えた剛毛の中から取り出したのは、手の平サイズの水晶球。

「奴がくれた情報は……実に役に立ったぜぇ?」

290 シャドウ </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/27(火) 06:42:17.80 ID:jH2mjrls

ベアル・ゼブルが手にした水晶球は、確かに父ミアプラキドスのもの。
そう言えば父は言っていた。要塞を攻撃させたのも、皇子に要塞の情報をリークさせたのも、すべて自分だと。
今も何かを映しているのかと注視するが……球は曇った灰色の空を映すのみ。まさか――父はすでに――
「ほう? 解るかい」
こちらを見下ろし、皮肉な笑みを浮かべる魔将。
「奴の形見にくれてやらぁ。もはや『主を失いし只の鉛玉』だがな」
無造作に放られた球を両手で掴む。酷く冷たい。やはり父は……死んだのか。やはり叔父上が? 封印はどうなった?
「奴の「気」が消えたとたんにこれだ。参ったぜ。情報が入らねぇってのは……不便なもんでなぁ」
「――で、早ぇとこ『勇者を連れて来い』と命じたわけよ。とりあえずこの傷が癒えりゃあ怖いもんは無ぇ」
ポタリと床に落ちる水音。
おそらくは奴の背、リュシフェールにもぎ取られた翼の傷から滴る血液だろう。
「解るよなぁ? 魔王が与えし傷を癒すは勇者の心臓だけだ」
その言葉は命となって部下に届いたようだ。ラファエルが剣を構え直し、切っ先をルークの左胸に向けるのが見える。
『逃げろルーク!』
懸命に思念を送るが、ルークは棒立ちのまま動かない。否、動けないのだ。
後ろのライアンの剣と、アルカナ=ブレードを介したラファエルの力が、彼の身体を縛っているのだろう。
「勇者ルーク! 我が主の完全なる復活の為、その心の臓を貰い受ける!」

――万事休すか!? ――ルーク!!!

魔剣が胸を抉る音はせず。代わりにしたのは微かな芳香。いつの間にか、ルークとラファエルの間に何者かが立っていた。
純白のドレスを纏う――銀髪の女性。ラファエルがぎょっとして後ろに下がる。
「だめよ? 彼の心臓は陛下のものだもの」
鈴の鳴る声。
「エレンディエラか。てめぇも『今頃』だなぁ。そのメダイ、どうやって取り入った?」
特に驚いた様子も無く、悠々と話しかけるベアル・ゼブル。
「……そうねぇ。覇狼のお零れに与ったってとこかしら?」
首に下げた金鎖を指に絡め、九曜のメダイに愛おしげに口づけするエレン。

内心驚く。実は彼女と会ったことがあるのだ。
10年以上も前のこと。ルークに魔法を教えるか否かでマキアーチャと口論になり、勢い要塞を飛びだした。
城下の下町で巡回中の白狼に襲われ、良く良く考えれば魔法は使えず、逃げ回った末に飛び込んだ娼館に彼女は居た。
金貨の持ち合わせが無いところを彼女に呼び止められ、「お代は持つから」と言われ止むを得ず一夜を共にした。
彼女が……魔族? しかも八大魔将だと!?

「考え直さねぇか? リュシフェールに与した所でうま味はねぇぜ?」
「そうねぇ……。貴方もとっても魅力的だけど……」
エレンがルークの首に腕を回し、ラファエルと皇子ライアンを交互に見つめた。躊躇い勝ちに剣を引く二人の男。
――そう。この女の眼に捕えられ、逆らえる男など存在しない。「抱いて」と言われて躊躇なく抱いたはあの眼のせいだ。
決して望んだわけではない! 本当だマキアーチャ! ――うっ! 誓う月が今は見えない!
ふっと笑ってこちらを見たエレン。
「ねぇ。その人も離してあげたら? アルカナンの女王を前にして、一体何が出来ると言うの?」

「ふん。そんなとこがアシュタロテとそっくりだぜ」
「当然よ。私は彼女のすべてを受け継いだ。記憶も――すべて」
しばらく顎髭を撫でながら考え込んでいたベルゼが左手を離した。半ば潰れていた喉が開き、冷えた空気が肺と気管を刺激する。
たまらず出た激しい咳がなかなか止まらない。
「ただの『人形』だったてめぇを動ける魔物にしたのはビショップだ。悔しくねぇのか? ビショップを殺ったのは魔王だろ」
「哀しいわ。とても」
「なら・」

やおらエレンがルークの首に回す手をマントの下に差し入れた。
眼を丸くしたルークが身じろぐが、上手く身体を動かせないでいる。彼は素肌に直接マントを羽織っている。
彼女の手がルークの首や胸元をいやらしく愛撫する様子が見て取れた。その手がさらに下へと下がり……
「ちょっと……エレン! やめ・」
ルークの言葉をエレンの口づけが遮った。ふと「初めてでは?」と思ったが気にしている場合ではない。
しかし――
「……っ!」
声にならぬ声を上げ身を引いたのはエレン。彼女の口から赤い血が滴っている。赤い唇の端がニマリと吊り上がった。

291 ルーク </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/27(火) 06:42:42.47 ID:jH2mjrls

「――ほら、ね?」
エレンが肩をすくめてみせる。
「てめぇの言ってる事もやってる事もさっぱり解んねぇんだが……?」
――同感だよ! ベリル姐さんも「良く解んない」って思った事あったけど、この人は更に倍だよ!? いきなり舌入れる!?
エレンが煙るような青い眼をこっちに向けた。
「この眼。その気になった私の眼から逃れられた者は、魔王と勇者と――賢者だけだった。こう言えば解る?」
――いや余計……不可解です! 「天使系」じゃないのだけは解ったけど!

エレンの眼が青く光った。ガチリと剣の落ちる音。
「すべての男は我が虜にならねばならぬ」
「ふん。百鬼の野郎はあいつの事、『売女』って言ってたぜ」
「……そう。オークは魔族でも人間でもない、亜人とも呼べない……ただのブタ。あのブタが好きなのは雌ブタのみ」
――いやいや、ブタってそりゃそうかもだけど、ものには言い方ってものが……

コツン……とこの世のものとは思えない靴音を立てて、エレンが立ちすくむラファエルに歩み寄った。
「脱げ」
彼女を潤んだ眼で見つめたまま、徐(おもむろ)に鎧の留め金を外し始めるラファエル。
彼女の手が魔剣を拾う。――まさか……!?

止める暇も無かった。くぐもった苦鳴。
エレンが抜いた剣が不気味に唸り、ラファエルの胸から吹き出した血を、吸い上げている。
まだなんだかぼうっとしたまま、ラファエルが床に倒れた。剣の唸りが止む。
「『戦士の石』よ、元が場に戻るが良い」
剣から緑色に光る玉が飛び出す。
――うひゃっ! ヤな音!! 
ビュンビュン飛びまわる光る玉。ベルゼや父さんが石の棺から飛び退くのが見える。
――あれ? いつから居たんだろう。黒いカラスが一羽、ギャアギャア喚いて飛んでいた。
自分から玉にぶつかって……黒い煙を上げながら床に落ちた。なに? 誰か召喚した?

しばらく嬉しそうに(?)跳ねていた緑の玉が鬨(とき)の声を上げたかと思うと、空の棺に勢いよく飛び込んだ。

――――――――イイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!

揺れる地面。ビシリと壁や天井に亀裂が走る。降り注ぐ砂埃。
「逃げろ!」
父さんの声が遠くで聞こえる。エレンが駆け寄り、俺の手をしっかり掴んだ。
「次なる場は――ナバウル王城」
呟くエレンの声がはっきり聞こえた。


後から知った。エルフの神殿でもまったく同じ事が起こっていた事。

292 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/27(火) 06:43:13.13 ID:jH2mjrls

謁見の間に響き渡る魔王の絶叫。
絨毯脇に控えるすべての騎士が、もがき、倒れる。

≪ おのれ……!!!≫

黒く変色した両腕を戦慄かせ、さらに魔王が咆哮する。
脇に控える魔将リヒトが顔を上げる。……と今一人、無影将軍と成り果てたミアプラキドスに感情の色はない。
王座の前に立つ魔王が、やや下方にて傅く魔将に眼を向ける。

「百鬼よ。如何なる事だ? ベアル・ゼブルを見逃し退くが良策と……?」
「オークの行く末などこの先どうとでもなろう。おのが成すべきは彼奴を葬り、石を奪う事であったはず」
魔王の声にいつもの余裕も落ち着きも無い。
「さらなる不可解。奴の動向を探らせしエレンディエラが姿を見せぬ。我が『眼』も――戻らぬ」
苦痛の声を漏らしつつ、王座へと腰かける魔王。


「百鬼将軍ボリガン。無影と共にベスマの地下回廊に向かえ。『賢者』もろとも、ベスマそのものを消し去るのだ」
「リヒト。済まぬが北へ向かってくれぬか? 不穏な『気』がある。ここはエルダーの竜どもに任せて良い」

293 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/27(火) 06:46:12.76 ID:jH2mjrls

>286
【打ち合わせはしたいけどしない。ってのがここの方針です。ネタも出したもん勝ち。こんなんで終われるかな? ちょい不安】

>287
【このタイミングで入るなんて奇特な方ですね! 嬉しい悲鳴!】
【順番は◆khcIo66jeEさんの後でお願いしたい所ですが、どうでしょう?】
【終盤ですし、こればっかりは打ち合わせ必要かと思いますが】

294 百鬼将軍ボリガン </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/27(火) 21:13:15.98 ID:wZSDX2Pw

魔王の両腕が、みるみるうちに黒く変色してゆく。
それを、百鬼将軍ボリガンはただ黙して見つめている。

>オークの行く末などこの先どうとでもなろう。おのが成すべきは彼奴を葬り、石を奪う事であったはず

焦燥と憤怒に満ち満ちた魔王の言葉。
それを聞くと、ボリガンはブフッ、と一度鼻を鳴らした。

「魔王よ、心得違いを起こしてもらっては困る。余の大事はあくまで、我が一族の繁栄」
「いかな手負いとはいえ、そなたに匹敵する力を持つベルゼビュートを仕留めようとすれば、我が方の被害は甚大」
「それは余にとって不利益と思っただけのこと。――それに余がそなたならば、ここはこう申すところぞ」
「『よくぞ彼奴の誘いを跳ね除け、報告に戻ってきてくれた。褒めて遣わす』とな――」

命令無視を悪びれもせず、そんなことを言う。
そこには、魔王軍の尖兵の中でも最大の数を誇る軍団の支配者という絶対の自負がある。
ベルゼビュートの言うとおり、もしもボリガンが寝返っていたならば、それは魔王にとっても脅威であっただろう。
それを知っているがゆえ、こうまで尊大な態度が取れるのだ。

(あたら臣下の命を浪費するわけにはいかん。黙っていればまた生えると、藁のように扱われては堪ったものではないわ)

>百鬼将軍ボリガン。無影と共にベスマの地下回廊に向かえ。『賢者』もろとも、ベスマそのものを消し去るのだ

「ベスマか……。狭苦しい穴倉よりは、要塞の方が拓けていて我が軍も暴れやすい。が――」
「問題は賢者の魔法だ。彼奴は多勢を屠る手段に長けている。こちらの軍勢をゾンビにされてはかなわぬぞ」
「その新たな『無影将軍』――、使えるのであろうな?」

ボリガンは胡乱な眼差しでミアプラキドスを一瞥した。
エルフの長、その力ならば知っている。攻撃手段こそ持ち得ないが、防御においては大陸一だと。
ただ、先日まで敵であった人物である。いかな魔王の支配下にあるとはいえ、手を噛まれはしないものか?
――だが、魔王が連れて行けと言ったのだ。そこには自身の支配力への絶対の自信があるのだろう。
でなければ、石が所定の場所へ納まり、余裕がなくなった今、敢えて無影将軍を伴えとは言うまい。
まして、ベスマ要塞は要衝の地。魔王にとって賢者は何にも勝る撃滅対象であろう。

「フン」

ボリガンは巨体を揺らして立ち上がると、魔王を見た。

「善かろう、ならば無影と共にベスマを攻める。さっそく出立しようぞ」
「案ずるな、造反はせぬ。我らは2000年来の付き合いであろう?ならば、余の性情を知らぬそなたではない筈――」
「闇には、闇の救い主が必要だ。余はそなたがそれであると思う。ゆえに、そなたを裏切ることはない」
「では、な――そなたはベルゼビュートに注意しておれ。彼奴はまこと、喰えぬ奴よ。悪食の余をもってしてもな……」

ズシン、と地響きを立て、巨大な黒光りする棍棒を携え。
無言で佇立する無影将軍ミアプラキドスを伴い、オークの帝王は王城を出た。

295 皇竜将軍リヒト </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/27(火) 21:17:46.04 ID:wZSDX2Pw

この大陸には、いくつかの伝説がある。
赤眼の魔王の伝説。北方に眠る氷の巨人の伝説。どれも恐るべき伝承であり、人々の間で連綿と語り継がれている神話である。
そんな伝説のひとつに『竜戦士の伝説』というものがある。
竜戦士とは、神代の昔にドラゴンの祖、エンシェント・ドラゴンたる黄金竜プロパトールが自らの眷属として生み出した者。
ドラゴンの力と魔力、生命力を有する『人のかたちをしたドラゴン』である。
竜戦士は黄金竜の仔、エルダードラゴンの鱗や牙を用いて作られた武具を携え、万物を破壊する力を有するという。

そんな竜戦士の職能とは『裁定者』。

世界規模の大きな戦いが起こるとき、竜戦士は姿を現す。
そして戦う者たちを見定め、どちらか正しいと思った側にその力を貸す。
2000年前の戦いでは、先代の竜戦士ドレイクは魔王リュシフェールに共鳴し、皇竜将軍として人間やエルフたちを攻撃した。
ドレイクは恐怖で世を統べんとする魔王よりも、人間たちの方を撃滅すべき『悪』と判断したのである。
が、そんなドレイクも先の大戦で勇者たちに敗北し、戦死。
主を欠いた竜帝兵団も、瓦解したかに見えた。

が、今から24年前、魔王復活と魔王軍の再編成に血道をあげる前無影将軍ベテルギウスが、とある実験をした。
それは『竜戦士の複製』。
攫ってきた人間の赤子にドレイクの亡骸から抽出した『竜の因子』を移植し、プロパトールを介さずに竜戦士を生み出すという計画。
さらに、ベテルギウスは赤子に魔王リュシフェールの抜け落ちた羽根を用い、魔王同様の魔気をも宿らせることに成功した。
そうして誕生した、竜戦士と魔王両方の力を持つ新たな手駒。それが現在の皇竜将軍リヒトである。

>リヒト。済まぬが北へ向かってくれぬか? 不穏な『気』がある。ここはエルダーの竜どもに任せて良い

魔王の勅命が下る。リヒトは軽く一礼すると、すぐに踵を返して謁見の間から出た。
リヒトにとって、魔気を授かった魔王は肉親にも等しい存在である。その忠誠心に揺らぎはない。
ただ、同時に裁定者として戦いの趨勢を見届けるという役目もある。

――もしも、人間たちが光を求め、よりよい世界の構築のために尽力するというのなら――

内心で、リヒトはそんなことを考えている。そして実際、人間たちに期待をかける行為をしてもいる。
ミアプラキドスがそうだ。賢人であると評価するがゆえ、敢えて首を刎ねず呪縛を与えた。
この呪縛を乗り越え、魔王のもたらす恐怖の介在しない真の平和へと至る道筋を模索してくれるのなら……と。

ともあれ、今の自分は魔将の一角。魔王の望みを叶えることこそが第一。
リヒトは兜の奥で軽く転移の呪文を唱えると、瞬く間に姿を消した。
供を連れずに単身向かった先は、北方アインランド。
魔王の言う「不穏な気」が竜戦士、裁定者としての自分の眼鏡に適うならよし、適わなければ――




――潰す。

296 黒狼戦姫フェリリル </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/27(火) 21:21:48.49 ID:wZSDX2Pw

「ぅ~……う、……ん」

帷幕の中で身を丸めた白狼に凭れ、毛皮にくるまって眠っていたフェリリルは、小さく呻くとうっすら目を覚ました。
アルカナンからやや離れた森に位置する、魔狼兵団の陣。
そこで百頭ほどの魔狼たちに囲まれ、フェリリルはここしばらくの時間じっと待機していた。
その任務は、勇者の追跡。より具体的に言えば、聖アルカヌス闘技場から逃げ出したホンダの追跡である。
ホンダのにおいは分かっている。現在は、斥候の魔狼がホンダの行く先を確認しているところであろう。
そして、ホンダが他の勇者たちと合流したのを確認してから強襲し、一網打尽とするのがフェリリルの狙いである。
が、そのためにはとにかくホンダという餌に勇者たちが喰いつくのをじっと待たなければならない。
フェリリルは自分自身でも驚嘆するような忍耐力を発揮し、とにかくその機を待った。

人狼のひとりが、状況の定期報告にやってくる。無影将軍の死と代替わりや、ベアル・ゼブルの復活、等々。
――が、フェリリルは寝ぼけ眼をこすると、

「どうでもいい」

と、その報告を跳ね除けた。基本、戦って勝利する以外に興味のない娘である。
寝台代わりに使っていた白狼が大欠伸をすると、フェリリルもつられるように欠伸をした。ついでに伸びもする。
姫さま、と他の人狼が嗜めるような声を出しても、フェリリルは一向に取り合わない。逆に退屈そうに胡坐をかくと、

「そういう報告はおまえたちが把握しておればよい。わたしが知りたいのは、今が戦うべき時なのかどうかだけだ」
「ふん……こんなことなら、陛下の仰られたとおりベスマ要塞に行っていればよかったか……?」
「いや。頭でっかちの賢者など相手にしても面白くない。わたしはあくまで、この爪と牙で戦える相手と戦いたいのだ」

くふっ、と目を細めて笑う。つりがちの大きな瞳が印象的な、幼さの抜けきらない少女の顔が、やけに獰猛に見える。
フェリリルは傍らに置いてある師剣に手を伸ばすと、それを軽く掲げてみせた。

「そう……この、わたしの新しい牙を存分に振るえる相手とな……!」

漲る闘気を隠そうともしないフェリリルの様子に、取り巻きの魔狼たちさえもが慄く。
と、そこで帷幕の中へ新たな魔狼が入ってくる。至急の報告だという。
フェリリルはまた報告か、とうんざりしたような表情を浮かべたが、ホンダがナバウルに向かっていると聞くや否や、

「ナバウルか!東方の王国、そこに勇者も現れるはず……ということでよいな!?」

と、身を乗り出して言った。

「待ちかねたぞ、その報を!みな支度せよ、すぐにナバウルへ向かう!」
「話では、エレンが八大魔将のひとりになったということだったな?丁度いい、寿いでやろう……あれはわたしの友達だ」
「ナバウルで勇者どもを血祭りにあげることでな!アッハハ……アハハハハハハハハッ!!」

一頻り愉しげな哄笑を響かせると、フェリリルは勢いよく立ち上がり、師剣コンクルシオを虚空に突き出した。
身に纏っていた毛皮が、立ち上がった拍子にはらりと足許へ落ちる。

「ゆくぞ!魔王軍第一の武功をあげるのは、この魔狼兵団!覇狼将軍フェリリルよ!!」

が、雄々しく吼えたフェリリルを、取り巻きの人狼が引き止める。

「ひ、姫さま!」

「なんだ!」

「まずはお召し物を……!」

「……んっ?」

覇狼将軍フェリリル。睡眠は裸で取るタイプである。

297 </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/09/27(火) 21:24:08.91 ID:wZSDX2Pw

293

>終盤ですし

まだ中盤くらいかと思っていました……。

298 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/09/28(水) 06:02:26.86 ID:9/1kqxXw

297
中盤!? マジですか!!

ではあの時のプロポーズを受けて下さる、と勝手に解釈致します。行くとこまで行くという事で。

299 創る名無しに見る名無し
2016/09/29(木) 13:07:31.07 ID:pFdR3Fgv

もう終盤ってことでいいんじゃね?
長引いてても観客がついてこんよ

300 創る名無しに見る名無し
2016/09/29(木) 17:01:42.65 ID:wnjpSztC

だな
次スレ立てるのは仕方ないにしてもこれ以上話広げるのは勘弁

301 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/10/04(火) 14:55:25.89 ID:nuANlkWj

>287
もしかして、ですが……新規参入希望でなくNPCキャラの御提供でした?
だとしたら申し訳ない! 勘違いで1週間も放置してしまいました!
レスは明後日にでも。

↓待機中に描いた挿絵です(提示期間は30日)。◆khcIo66jeEさんもリクエスト等あればどうぞ。

http://img3.imepic.jp/image/20161004/532100.jpg?7a101db9a5ca067ae78daf34f9a4eaf5

302 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/10/05(水) 17:27:18.43 ID:QYB3UrYB

大陸の北方に位置するアインランド連合国の、さらなる北。
季節を問わず猛烈な吹雪が見舞うこの地に足を踏み入れる者は滅多にない。
切り立つ岸壁は氷河が覆い、冷たい潮風が流れ出でる大河を瞬く間に凍らせる極寒の地だ。
大河を挟むように聳え立つのは鋭い頂きを備えた二峰の山。この山に名こそ無いが……この峡谷を知らぬ者は居ない。
かつて北の大地を荒らし、蹂躙した氷の巨人が眠る死の峡谷を。


「閣下! 御覚悟は宜しゅう御座いますか!?」

馬から降り、吹き荒れるブリザードに負けじと声を張り上げたのは王の側近――エミル・オグムンドゥル。
如何にも魔導師然とした、黒地に銀刺繍のかっちりとした衣服を着こなした背の高い男だ。
エミルの声に答え、深く頷いたのは、見事な黒鹿毛の馬に跨る堂々とした赤髪の偉丈夫。
鷹の如き鋭い眼に王の風格を備えた男、名をベルク・ビョルゴルフル。
もとルーン帝国領であった北方の大地に秩序なく散在する小国を「力ある国家」として纏めた当の本人だ。
領主達に当然のごとく「北の代表」として選出された彼は、この地におけるあらゆる事案を行使する権限を持っている。
「北方の王」としてアルカナンやナバウル、エルフやドワーフの王達と懇意となり、外交を行ってきた彼である。
魔王の復活。
2,000年来の大事に成すべきは何か。

「賽は投げられた。勇者達の助けとなろう」

対する応(いら)えか、ベルクの馬が高く嘶き、前足にて凍てつく大地をガリリと掻いた。
背に星の十字を背負う騎士達がぐっと手綱を握り締め、峨々と聳え立つ岩山を仰ぎ見る。
未だその輪郭をうっすらと留めるかつての宿敵。透き通る氷の鎧を纏う氷の騎士。彫刻ならばこれほど美しい作品もあるまい。
その大きさも――かの無影の魔将が動かすストーンゴーレムの十数倍はあろう。

騎士達の表情は硬い。実を言えばこの巨人、魔王が腹心――無影将軍が動かす手駒のひとつ。
賢者の手で「主」との繋がりを絶たれ、動かぬ巨像となっては居るが――その脅威は世代を超え語り継がれて来たのだ。
果たしてこの巨人を起こして良いものか? 再びこの地を踏み、荒らすのではないか?
類稀なる召喚術師、エミルを信じぬ訳ではないが、今一つ釈然としないのが実情だ。
――が……魔王目覚めた今、彼等が頼れるものはこの巨人のみ。王の決断に縋るより他は無い。
エミルの両の足がザリっと氷地を踏みしめる。

【――出でよ!!】 

エミルが、交差させた両の拳をゆっくりと広げると、掌に刻まれた十字の印が輝きだした。
それに呼応するかのように、巨人の鎧に描かれたルーン文字や幾何学図形、絵紋様が青白く浮かび上がる。
賢者の魔紋を見知る者が見たならば、絵文様の多くがその特徴を備える事に気付いただろう。

【凍てつく大地が生み出だしし古の精霊よ いま一度その器に聖なる魂を宿せ 誇り高き魔人よ いま一度この地を踏まん】

303 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/10/05(水) 17:35:24.74 ID:QYB3UrYB

ブリザードが唸りを増した。対し、巨人はしばしの沈黙。
ピシリと岩肌に亀裂が走った。轟く轟音。雪と氷が崩れ、巻きあげられ、一帯が雪の煙にて模糊(もこ)となる。
ズシリと響く重い音。何者かが地を揺るがす音。
馬達が銘々に嘶き、上体を逸らした。歯を剥き出し耳を伏せ、まるで幽鬼でも見たように怯えている。回頭する馬も多数。
「どうどう!」
慌てて馬を諌めはじめた騎士達を、突如眩い光が照らした。雲間から差した陽光か――否。彫像自身から発せられる光だ。
「おお……!!」
畏怖の象徴である筈の氷の彫像。その神々しい姿に己が存在すら忘れ放心する騎士達。
彼等を正気に戻したのは魔導師エミルの紡ぐ呪文の詠唱だった。

【凍れる騎士――ブリザード=ナイトに告ぐ 我等と共に魔を滅ぼす矛とならん】

――――巨人が吼えた。
峡谷が振動し、鎧の奥の眼が理知の光を宿す。
ベルクその他の騎士達を順繰りに見渡した騎士ブリザード=ナイトが、手にした巨大な剣を胸前にかざす。

「閣下。この『ナイト』は我が命令より閣下の命を優先し実行致します。何なりとご命令を」
ベルクが見上げるブリザード=ナイトの眼に敵意は無い。

「良くやったエミル。流石は我が参謀よ。其方を推したエルフ評議長に感謝せねばな」
微笑むベルクの顔を眩しげに見上げたエミルの顔が強張った。ベルクが察したように頷く。

「気付いたか。先程から我等を監視する御仁がおられる事を」
王の視線の先を追った騎士達が半ば即座に剣を抜いた。

急峻な岩肌の、ほんの握りこぶし程度の出っ張りに足を乗せ立っていたのは、漆黒の鎧と緋のマントを纏う一人の騎士。
今まで気付かなかったのは、彼がまったく「生命」の気を持たず、岩山に同化していたからだろうか。
敵か否かは問わずとも明白。首元の九曜のメダイが、彼が魔王直属の部下である事を物語っている。
だがベルクはいきなりブリザード=ナイトをけしかけたりはしない。たとえ魔族であろうと、問答無しで闘う相手とは限らない。
彼は右手に握る手綱を引き、馬を回頭した。他の騎士もそれに習う。

「我が名はベルク。北方の王を任されし者。魔王に似た黒き御仁よ。まずは御用向きをお尋ねしよう」

304 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/10/06(木) 13:54:59.19 ID:Vo60VRjW

ベリルを口説くルカイン

http://img3.imepic.jp/image/20161006/498510.jpg?2285f09ee7607acba9c4631346f139da

305 創る名無しに見る名無し
2016/10/07(金) 09:45:58.95 ID:2v9ZGHQT

普通に上手いね

初期にいたイルマとかも描いてほしい

306 皇竜将軍リヒト </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/10/07(金) 21:20:04.34 ID:acCSLJtc

ベルク・ビョルゴルフル率いる一団が封印された氷の巨人を蘇らせるのを、皇竜将軍リヒトは凝然と見下ろしていた。
氷の巨人のことなら、知っている。伝承としても、そして無影将軍の創造した駒としての役目も。
前無影将軍ベテルギウスの手によって生み出された、魔王の兵器。
そういう点では、氷の巨人とリヒトは兄弟と言えるかもしれない。

>【凍れる騎士――ブリザード=ナイトに告ぐ 我等と共に魔を滅ぼす矛とならん】

―――オオオオォォォォォ……ンンンンン……

男の詠唱に応じ、氷の巨人が永きに渡る眠りから目を醒ます。
その咆哮が極北の峡谷に響き渡る。
巨人――ブリザード=ナイトの力は強大無比。勇者側の持ち駒には、これほどの巨躯と膂力を持つ存在はふたつとあるまい。
これが真に勇者側に与すれば、魔王軍にとっては看過できない脅威となるはずだが、リヒトは動かない。
ただじっと、兜の面貌の奥から覗く双眸で一部始終を見届けるのみである。

>「我が名はベルク。北方の王を任されし者。魔王に似た黒き御仁よ。まずは御用向きをお尋ねしよう」

しばらく様子を見ていると、不意に声をかけられた。
リヒトは足場としていた場所からふわりと飛び降りると、全身鎧を身に着けているとは思えない軽やかさで着地する。
血色のマントを翻すと、ちゃり、と胸元のメダイが鎧に触れて澄んだ音を立てる。
視認できるほどに濃い漆黒の魔気を芬々と漂わせ、リヒトはベルクと対峙してなお沈黙していたが、

「――三つ問う」

すい、と流れるような仕草でベルクへと左手を突き出すと、親指と人差し指、中指を立てて告げた。

「ひとつ。なぜ我が王の奉戴を拒む?」
「ふたつ。“それ”は元々我が王の手駒。知った上で御せると思ったか?」
「みっつ。『平和』とは、一体なんだ?」

まるで、神話にある人面の獅子の謎かけのようにも聞こえるそれ。
それをベルクへ向けて言い放つと、リヒトは左手をマントの内側へと降ろした。
むろん、単なる問いかけではない。ベルクがこれから告げるであろう答えによっては、リヒトはこの場の全員を殺す気でいる。
殺戮は速やかに、一方的に、容赦なく遂行されるであろう。

裁定者として、リヒトには戦う両者を見定める必要がある。
どちらの言い分により正当性があるのか。どちらの方が、世界にとって有用な存在であるのか。
消えるべきは魔王か、それとも勇者か――。

307 </b>◆khcIo66jeE <b>
2016/10/07(金) 21:24:12.21 ID:acCSLJtc

301>304
素敵な絵ですね。初期の富士見ドラゴンブックス関連の書籍の挿絵を思い出しました。
ルークくんのそこはかとない頼りなさや、ベリル女史の女傑ぶりが遺憾なく表現されていると思います。
リクエストということでしたら、わたしも305さんに同意です。
彼女の存在あってこその要塞と思いますので……。

308 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/10/08(土) 05:25:40.14 ID:PcnIYFOo

イルマ嬢かあ……
「イルマは賢者とセット」で行きたいと思ってましたが、肝心の賢者のイメージがなかなか湧かなくて困ってました。
頑張って描いてみます。


とりあえず既に手をつけていたラファエルとエスメラインの2ショットをば
http://img3.imepic.jp/image/20161008/189040.jpg?c0f84bf6131b8bf7c405fbb70b6a4138

(ソードワ○ルドとか超懐かしいんですけど!)

309 創る名無しに見る名無し
2016/10/08(土) 11:41:43.24 ID:fhVCjlAB

308
良いね!イルマ&ワイズマン、超~期待してます!

310 </b>◆YXzbg2XOTI <b>
2016/10/08(土) 18:48:54.33 ID:IDn3UwQJ

308

>賢者のイメージがなかなか湧かなくて

わたしにもよくわかってないので無理もありません
イルマさんのピンでよいのでは……

強いて言えば、宝石やら何やらでゴテゴテに飾り立てた魔導師が紙袋かぶって顔をすっぽり隠してるイメージです

311 創る名無しに見る名無し
2016/10/09(日) 01:35:08.71 ID:8CINZfZn

310
イルマのピンでも充分です!
是非是非!

312 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/10/10(月) 07:23:31.86 ID:uh2oHuRJ

フワリと降り立つ漆黒の騎士にたじろぐ騎士達。底の知れぬ魔気を肌に感じ、馬も人も総毛立った。
名乗りを返さず、用向きも伝えぬ沈黙の魔将。その視線を受け、ベルクも負けじと静かなる視線を返す。

魔狼、豚人族等の魔族を目にする事はあったが、このタイプの魔族、それも魔将クラスと見(まみ)えるのは初めてである。
角度によっては深い紫色に光る重鎧。古竜の鱗か。佩く剣も竜を象る重厚なる品。智慧の光を宿す澄んだ瞳。
大陸中何処を探しても、これほどの存在感を持ち合わせるものなど居まい。
ただ一点だけ、何処となく合点が行かぬような……漠とした不安。
蒼い眼が湛える捕え所の無い光。
――以前、これと同じ眼を見たことがある。女だ。抗いがたき光を宿すあの女の眼に同じ。この魔将――いったい?

不気味に沈黙を続ける魔将。こちらから切り出すべきかと思案し始めた矢先、低い、錆を含む声がした。

>――三つ問う

立てられた3本の指。必要最小限の言葉で綴られる三つの『問い』。
交渉などでは無い、一方的な……まるで天上の神が人を推す、そんな問いだ。この魔将、自らを‘神’と?

エミルが唇を噛み、こちらを見上げる。攻撃するか否か指示を仰いでいるのだ。他の騎士達も焦燥なる視線を送ってくる。
魔将の問いに答えるは容易だが、何故そんな問いするのかが解らぬ。答えが気に入れば良し。さもなくば殺すと?
左腕を降ろし、再びじっと沈黙する魔将。どこまでも口数の少ない男だ。取りつく島も無い。
これでは隙を見つける事も出来ぬ。しゃべればしゃべる程にボロを出す……各国の王族達のようには行かぬ……か?

ベルクはしばし思案した。
魔族は人に非ず。魔将ともなれば無論、我々人間が力で敵う相手では無い事は承知。
北の十字を背負う騎士達が命を惜しむとも思えぬが、犬死にはさせられぬ。

揚げた右手を後方へと下げた。退けという合図である。騎士達がどよめき、互いに顔を見合う。
「なりませぬ閣下! 我等はともに闘い、死ぬ誓いを立てた者!」
銘々頷き、剣を掲げる騎士達。
しかし振り向いたベルクの眼に確乎たる意思を見、皆押し黙った。一人、二人と剣を納め、手綱を取りはじめる。
騎士達の後退を確認し、ベルクはヒラリと馬から降りた。面綱を解き、首筋をポンと叩く。
「其方も行くがいい。いつかの日、共に野を駈けようぞ!」
一声嘶き、駈け出す黒鹿毛の馬。

彼等の姿が遥か彼方の平原へと消える頃、ようやくベルクは口を開いた。付き従うは参謀の魔導師エミル、ただ一人。


「お待たせ致した。古の黒き竜を象る御仁よ。早速に我が答えを示そう」

313 </b>◆ELFzN7l8oo <b>
2016/10/10(月) 07:25:51.70 ID:uh2oHuRJ

「ひとつ。何故魔王の奉戴を拒むか」
ぐっと魔将の眼を見据え、バサリとマントを翻す。
「我等は魔族に非ず。故に魔族の王は頂けぬ。他に理由が?」
問いを返すもその答えを期待しては居ない。眼を逸らさずに次を続ける。

「ふたつ。巨人が魔王の駒と知った上で、御せると思うか」
ベルクは眼を硬く閉じ、胸前で腕を組んだ。
「その答えは……彼に任せるとしよう」
ベルクの言う「彼」が自分のことだと気付き、エミルが咎める視線を王に送った。
当の主人は腕を組み、眼も閉じたまま。一度発した言葉を決して覆さぬベルクである。

深くため息をついたエミルは背後に膝をつく巨大な氷の像を仰ぎ見た。

「我が王に代わり、お答え致す。ブリザード=ナイトの纏う鎧に刻まれた魔紋を御存ならば、自ずと答えはあろうかと」

ブリザードの再来を告げる突風が、細かな氷の粒を逆しまに巻きあげた。
陰りはじめた陽光に照らされ、美しいダイヤモンド・ダストの如き景観がブリザード=ナイトを包みこむ。

「あの魔紋は賢者の魔紋。エルフの長と共に、古よりこの大陸の行く末を見守る賢者を知らぬ貴方ではありますまい」
「ただの無機に命を吹き込む技、そして他者がかけた術を封じ、我がものをする技。いずれも賢者に及ぶ者は在らず」

相も変わらず勿体ぶった言い方だとベルクが眉を顰めるが、口は出さず。
研究一辺倒の学者連中にはこういった者が多いのだ。エミルの口上は続く。

「賢者はあの魔紋にて無影の魔将による支配を完全に解かれた」
「さらに魔紋の上下左右に散りばめられしルーン文字。それは賢者自身の手によるもの」
「御せるか否かはすなわち我等次第。我等の意思が賢者の意に適えば良し。さもなくば我等人の棲み処を滅ぼさん――と」

とどのつまり、賢者の眼鏡次第ということかとベルク自身納得する。実を言えば良く知らなかったとは言えない。
エミルが口を閉じるのを見計らい、ベルクが組む腕を解いた。

「最後の問いの答え。『平和』とは何か」

懐に手を差し入れ、剣を取り出す仕草をした王に驚いたエミルがハッとして身構えた。
しかし王が取り出したのは一輪の白い花だった。
「残念ながら、その答えは未だ解らぬ」
「解らぬが……思う世はある」
「この花が剣に勝る世。剣を持たずとも渡れる世。鍛冶達が鍬と鋤の鍛えに励み、子供らが医術や建築に憧れる、そんな世だ」
「我等もいつか剣を捨て、共存の道を歩めれば、そう思う」

舞い散る雪が、結晶が、シャリンと音を立てる。
ベルクが手にした花が硬く凍りつき、凍てつく風がその花弁を吹き散らした。

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【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ3 (313)


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